がらん、と大きな音を立てて大剣が地面に落ちた。柄を握る主の両手から力が失われたのだ。
焔の鎧も余韻なく剥がれ落ちた。
「兄さん!」
大きな一撃を食らって、最愛の兄が崩れ落ちるーー前に、受け止めねば、とジョシュアは手を伸ばし、駆け出した。
だが、手も足も届かなかった。
届く前に、斬撃の音を聞いた。
「ーー」
ぞわり、と瞬時に全身が粟立った。眼前に迫っていたのは赫。考える前に足が止まった。頭を左に傾けた。
赫い斬撃が身体の横を通り過ぎた。右肩を掠める。熱い痛み。左手で押さえる。じわり。血。
兄ーークライヴは地面に落ちなかった。
ジョシュアのものではない、違う人間の腕が筋肉質の身体を受け止めていた。
「……っ、バルナバス」
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