恋愛成就の雄っぱい神の悩み 七海は悩んでいた。
「昔からいい雄っぱいだったな」
自分の意思で恋人を膝に乗せてイチャイチャするつもりが、目の前の恋人は七海の雄っぱいを堪能していた。横向き座りがお気に入りの硝子は指で柔く揉んで満足そうにしている。決してベッドへのお誘い……という訳でもなく。長年の片想いを乗り越えて手に入れた恋人は七海の雄っぱいが好きだった。恋愛成就の雄っぱい神と呪術界に降臨したと言われるまで噂されるくらいに七海の雄っぱいは鍛えられているし、恋人は雄っぱいが好きだった。
七海と付き合う前までは、異性からの好意を遮断していた硝子。まさか雄っぱいが好きだなんて知らなかったのだ。若干ストーカーわんこ化としていた七海を持ってしても知らなかった。硝子と無駄に仲良しで無駄に距離が近い先輩達はうっすら気が付いていたのかいないのかは知らない。負けた気がするので知らないでほしい。そう思いつつ、すっと腕の中にいる硝子に目をやれば、
「ハリがすごい」
「いつまで触っているおつもりですか」
「邪魔するなよ、建人」
「私の胸ですが」
やっぱり雄っぱいを楽しんでいた。七海にとって雄っぱいは娯楽品でもない。間違っても嗜好品でもないし、芸術品でもない。こんなに喜ばれるいわれは無いはずだった。男の胸、ましてや自分の胸よりも硝子の形の良い胸の方が断然いい。その思考がバレたのか、硝子が七海へ視線を上げた。
「どこを見ている」
「アナタを」
「誤魔化すのが下手か、私の胸には触るなよ」
「………………触りませんよ」
「その間はなんだ」
「今は触りません」
七海だって男の子である。そりゃあ好きな女の身体に興味が無い訳じゃない。無い方が逆に不健全だと心の内で吐き捨てた。視線も反らしてしまったが、別に悪いことじゃないはずだ。
「えっち」
硝子がようやく雄っぱいから手を離して、自分自身の胸を両腕で隠した。ふっと赤く彩られた唇がやけに色っぽい。完全にからかわれていた。
「あまり調子にのらないでください。襲いますよ」
肩を抱いて寄せた硝子へかぷりと唇を柔く噛みついた。それに合わせてむちぃと硝子に雄っぱいを掌で揉みこまれた。ぐっと動きが止まった。
「まだ雄っぱいに触り足りない」
そろりと舌で下唇を撫でられ、これで誘っている訳じゃないのだからもはや頭痛が痛い。そこまでして雄っぱいが好きなのか。雄っぱいに触りたいのか。それに性的な意味が含まれていないのはあんまりじゃないか。
「後で好きなだけ触っていいですから」
「それを後でにしろ。年上を労れ」
「一つしか変わらないでしょう」
あー言えばこう言う。慣れっこで返しが、少しだけムッとしそうになる。
硝子は少しだけ考える仕草して、
「……性欲なんて無さそうな男に見えたが、建人は元気過ぎるんだよ」
「焦らすのが得意とは知っていましたが、付き合ってなお焦らされるのが得意ですね」
「焦らしてなんてないさ、これはただの雄っぱいタイムだ」
「聞いたことありませんよ」
「高専で習わなかったか?必修科目だぞ」
「そんなもの習うわけないでしょう」
「任務で公欠だったんだな」
「習いませんよ、習いたくもない」
「そうか?私のことが知れたかも知れないぞ」
「灰原にノートをとってもらえば良かったです」
「冗談だ」
「惜しいことをしましたね」
「冗談だよ」
この間もむにむにと硝子は雄っぱいを揉んでたいた。その雄っぱいにかける情熱をもう少し七海へ向けてほしいと思いつつ七海はこの後1時間雄っぱいを揉まれた。
*****
「やっぱり僕も雄っぱい鍛えた方がいいかな」
「…………灰原、私の胸を見ないでください」
「せめてもう少し……こう、むっちりしたら……」
「やめなさい」
「僕にも彼女が出来ると思うんだ」
雄っぱいによる被害が七海の中で増えていた。相変わらず一定数が七海の雄っぱいを拝みにくるし、任務終わりに灰原と集合して集まる約束をしようにも補助監督から雄っぱいを拝まれる姿をみられてしまった。それを見た灰原ははわわ……と表情をしつつも、自分の雄っぱいと見比べてらしくもなく落ち込んでいた。
「だって最近の七海の雄っぱい!すっごいんだよ!?前にもまして存在感がアップしてる!!」
それはきっと恋人のせい。やたら揉まれるようになったからだ。
「家入さんともラブラブなの知ってるよ!!ラブラブの秘訣がその雄っぱいなんでしょ!?五条さんが言ってた!」
「何言ってるんだあの人は」
雄っぱいとラブラブなのは比例しないはずだ。余計なことを言ったのは恋人の厄介な友人①。おそらく以前七海をネタに絡もうとして貧乳呼ばわりされたことを根に持っている。
「夏油さんに最近よそよそしいのは夏油さんの雄っぱいがライバルだって聞いたよ!?雄っぱいのライバルだってことでしょ!?」
「違います」
「えっ、そうなの?この前家入さんが夏油さんの雄っぱい叩いていたけど違うの?」
「は?」
「え?」
それ知らない。ライバル雄っぱいなんて存在。