想いが再び重なる日を「旅行?」
「ああ。靴を買いに行った時にやってた抽選会で当たった」
ベッドの上、後ろから私を緩く抱き締めるように腕を回した男が、やや拙い、眠気を感じさせる声で呟く。
以前も、今世ではない昔にも、同じ寝床に就く際はこんな風によく彼の腕に包み込まれていた。
私と違って彼、同居人であるアルベールに『前』の記憶はない。
「ペア券なんだ。だからユリウス」
「誰か誘いたい人は居ないのかい?」
アルベールが言い切る前に言葉を重ねると、背中越しに彼が不機嫌になったのが伝わってくる。当たり前と言えば当たり前。何せ私と彼は同居人というだけでなく恋人でもあるのだから。
ただ、私は彼との関係をこのまま続けて良いか悩んでいる。アルベールが前の、前世の記憶を取り戻す様子がないから。
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