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    白流 龍

    @houhoupoteto

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    ヌヴィリオ、タル鍾SS置き場

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    白流 龍

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    ヌヴィリオ/🌧️⛓️
    ある日の天気

    前半:リオセスリ
    後半:ヌヴィレット

    ##ヌヴィリオ

    「あっリオセスリ様いらっしゃいませ」
    元気な声で、まだ距離があるというのにぴょこぴょこと手を振ってくれる受付のセドナちゃん
    「よ。お疲れさん。今ヌヴィレットさんいるか?一応アポは取ってあるんだが…」
    「大丈夫ですよ今はお一人、執務室で書類整理を行なってらっしゃいます」
    「そうか、ありがとよ…あぁそれと、」
    そう言って数歩歩き出してから振り向く
    「…ヌヴィレット様の前に通すなら形式上でも名前と職業、具体的な内容は確認したほうが安全のためだと思うがな、セドナちゃん?」
    そう言ってはっとした表情を確認して振り返る
    「すみません気をつけます」
    「俺だから油断したんだろ?まぁ一生懸命なのは伝わってるから気にするな」
    そう言って手をひらひらとさせて返事する。
    少し抜けている所はあるが多忙な最高審判官のスケジュール管理を任せられる有能なメリュジーヌだ。



    コンコン、と乾いた木の音
    ギィ、と重いドアを開ける音
    「ヌヴィレットさん、生産ラインの今月の予算なんだ、が…」
    書類から視線を上げて、進めようとした足が止まる。

    コチコチ、時計の音
    コツコツ、音を抑えた靴の音
    そして、
    「…この人、寝るのか…」
    すぅすぅ、寝息

    眼前にいるその人は、机に方頬を付ける形で伏せっている。
    長い睫毛に髪が流れるようにかかっている

    無意識に、息を呑んでいる自分に気付き首を振る。
    少し、一歩、前に出て
    覆いかぶさるように腰を屈める。
    職業柄、狸寝入りは見透かせる。
    …ぐっすりと眠っているようだ

    柄にもなく心拍が上がっていることはおクビにも出さず、
    頬にかかるその美しい髪を、頬に触れないように慎重に除ける
    …このまま、キスをしたい。
    己の欲望は正直だ。

    少し、ほんの少し、距離を狭める

    クシャ、と机についていた手を握ると下にしていた書類に皺がついた。
    姿勢を正しため息をつく
    そしてもうついてしまったどうしょうもない紙の皺を伸ばそうとする

    「…持ってくればよかったな」
    せめてこの姿を1枚に。

    首筋をポリポリと掻き、キョロキョロと見回す。
    起きるまで、待つことにしよう。
    だって会う約束はしていたのだから。
    ソファに座り、ヌヴィレットの為にメリュジーヌ達が用意している水入れをカップに注ぐ。
    ちら、と視線をやるが身動ぎもしていない。
    …いまさらしておけばと後悔しても遅い。
    足を組み、一口。

    「…わかんねぇなぁ」
    水の味の違いなんてわからないこの舌が、好きな味だと言っている。

    …ふと空を見ると、晴天だった。
    ===
    本日は曇天。
    私の心を表してしまう天候は、自らの心を知るのに丁度よい。
    此処の連続した審判で疲弊しているのは知っている。しかし辞めるわけにもいかない。
    民は小雨が続くこの数日をどう感じているのだろうか。
    久々の休日、溜まっている書類が積んである執務室が目に浮かび今に至る。

    …リオセスリ殿との面会もある。

    この者との面会、もとい会話は心地が良い。書面上での会話もそうだが、流れるように進む内容はとても、楽だ。
    …表情も豊かで、見ていて飽きない。各産地の水の特徴について話した時の表情は忘れられない。
    メロピデからの書類に、本人は預かり知らぬであろうステッカーが貼られているのにも、彼のメリュジーヌへの普段の対応が見て取れるようで面白い。

    ふと、自分の口角が上がっていることに気付く。
    …きっと、楽しみにしている。というのはこのようなことなのだろうか。

    『あっリオセスリ様いらっしゃいませ』
    ドアの向こう、元気な声が響いた。
    予定の時刻。向こうが提示してきた時刻は、概ねこちらの業務が落ち着いた頃であり、気を遣わせてしまっていることがわかる。
    それだけ気の遣える男なのだ。

    『硬すぎるのよね、そういう所は。もっと気楽にしてもいいのにと思うのよ?だってヌヴィレットさんもそう思ってるでしょ?』
    …本人の居ぬ間にした会話だ。
    少し、気を抜かせるようなことをしてみてもいいのかもしれない。

    机に方頬を付け、目を閉じる。冷たくて心地よい。
    狸寝入りと言うものを初めてしてみる。
    呼吸を抑制すれば問題なく騙されるだろう。
    …この男はどのような反応をするのだろうか。

    乾いた音と、軋む音。
    「ヌヴィレットさん、生産ラインの今月の予算なんだ、が…」
    ピタリと止まる呼吸の音。

    ふと、瞼の裏が暗くなる。
    「…この人、寝るのか…」
    好ましい、清潔な匂いがする。
    髪を避けた指先は、私に触れぬ様との心遣いが伝わってくる。

    …あぁ、この男は素晴らしい。
    このまま横になっていては帰ってしまうのだろうか。
    それは、なんだか…『淋しい』というものだろうか。

    コポコポと、注がれる音がする。
    『サプライズにいかがかしら?飲んだ時の彼の感想を聞かせてね?』と、彼のメリュジーヌに渡された珍しい茶葉。注げば透明になるという紅茶の葉。

    「…わかんねぇなぁ」
    心地の良い彼の声が耳に入る。
    そうだ、どのような表情なのかを見なければならない。

    「…っゴホゴホ」

    外を見上げていた彼が顔を上げたこちらに気付いたところで咽せてしまったようだ

    「大丈夫だろうか?」
    「いや、…大丈夫だっ」
    顔を伏せて手で隠しながらそう答える。
    ふむ、表情が見えない。

    立ち上がるときしりと椅子が鳴る。
    まだ咽せている彼の側により、隣に座る。
    「っは?何っ…」
    徐ろに腕を掴み表情を見ると、頬が赤かった。
    「何故?」
    「それはこっちの台詞だ…ヌヴィレットさん」
    咳は落ち着いたようだがまだ赤い。
    …心がソワソワとしているようだ。見ていたい。
    「頬が染まるということは、気分が高揚しているか、感冒症状によるものが考えられるが…どちらだろうか」
    「………拷問、じゃないよな?」
    「違うが…」
    するとため息をつかれ、未だ握っていた腕から私の手を離す。
    その手に少し、力がこもるのが伝わった。
    「今日は、帰る…書類は、そこに置いておくから目を通してくれ…また連絡する…」
    …あぁ、『淋しい』。
    「あと…アンタを困らせるのは承知で言わせてもらうが、」
    こちらを見るその瞳は、殺意とはまた違う、しかし熱の籠もっているような、燃えるような瞳。

    「悪いが前者だ」

    彼がいなくなった部屋に独り。

    「ふむ、…シグウィン殿に聞いてみようか」
    天気が快晴になっているのが答えなのだろうが、
    私はまだ、この応えの意味がわからない。
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