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    白流 龍

    @houhoupoteto

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    ヌヴィリオ、タル鍾SS置き場

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    白流 龍

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    ヌヴィリオ/🌧️⛓️
    心の曇りが晴れる時

    ※⛓️の脳内が⛓️🌧️なのでそのような表現あり。

    ##ヌヴィリオ

    「公爵様大変です」
    唐突な大声
    生産エリアの管理について話し合っていたため、その急な訪れに少々驚く
    「なんだ大声で。どうした?」
    「ヌヴィレット様がっいらっしゃってます」
    「はぁ?今日は何も…まさか何かあったのか…にしても他の新入り達と一緒に来たのか…?」
    「それがその…管理エリアの方からで…」
    「はぁ泳いできたってことか」
    「そうみたいで…濡れてましたから…」
    「どこだ」
    「執務室にいらっしゃいます」



    「ヌヴィレットさんどうした」
    勢いよくドアを開け、鉄製の階段を駆け上がるとそこには、
    「あら公爵?急いでどうかしたの?」
    「あぁリオセスリ殿、急いでどうかしたか?」
    ……はぁ?
    「いや、だってあんた…海から来たってよっぽどの事があったのかと…」
    言いながら、こちらが的外れであることがとても良くわかる。
    ソファに座り、看護師長を膝に乗せて悠々とミルクセーキを飲んでいる…
    「君が来ていいと言ったのだろう?」
    …早いよ。
    安堵なのか苛立ちなのかなんなのか良くわからずよろめき机に手をついて頭を抱える
    「…せめて、…せめて海から来るなよ…。他の看守達も驚くだろそりゃ…」
    「そうか」
    「普通はこの深さなら潜水服でなんとか潜れるくらいなんだよ…素潜りで来れるわけねぇの…」
    「…そうか」
    良くわかってない時の『そうか』だなこれは…
    「じゃあ公爵も来たことだしうちは戻るわね」
    「あぁ、元気そうで安心した。また頂こう」
    ふわりと頭に手を置かれ、嬉しそうに笑う
    「うふふっもちろんだわじゃあね公爵」
    まだよく状況を読み込めてない…読み込みたくない俺の横を通るときに小さな声で「良かったわね公爵」なんて言われて喜べるか

    来ていいとは言った。いつでもいいとも言った。2日後に来るとは思わなかった。
    心の準備も何も出来てない。まず仕事以外の話をするって何を話せばいいんだ?自分からふっておいて何だがまだ頭が整理できてない。
    「シグウィンが元気そうで何よりだ。これも君の影響なのだろうな。感謝する。しかし適度に休暇をくれるが君が休まないから休まないとも言っていたぞ?この前の君の発言そのままだな」
    「ん、あぁ…わかったよ気をつける…」
    「…と、このような会話も仕事絡みになるのだろうか?なかなか難しいな」
    顎に手を当てて悩む素振りをするその姿は普段とまるで違って見えて、
    「あんた…そんな喋ったか?」
    「?普段通りだと思うが」
    ソワソワする。慣れない。
    「はぁ…とりあえず後でここの下の入口教えるから次からそっちで来てくれ…普段は施錠してあるんだが昼過ぎには開けておくようにするから…」

    くくっ、と
    普段聞かない声がした。
    ふと顔を上げる。
    「それは私の為か?」
    「改めて言うなよ…」
    やめてくれその顔…そんな顔、知らないんだ。
    「あんた…そんな冗談も言えるんだな」
    「ふむ、冗談ではないだろう?」
    「いや、そうだけどよ…」
    ただひたすらに、楽しそうに感じてるのは俺だけか?
    「手土産に茶葉は持参したのだが…ここは水はあまりないのか?」
    「元々あんたが来る予定はあんまりないからなぁ…置いときたいなら次持って、き…ていいから…」
    『次』。当たり前のように口に出したがどうしようもなく、恥ずかしくなった。
    「ふむ、そうだな…来る度に一本ずつ増やそう。そこの空いている棚に置かせてもらうのはどうだろうか?」
    …俺より先の事いいだしてるなこの人。
    嬉しそう、に見えてるのは俺だけかもしれなくて、口に出せない。
    俺のテリトリー、俺と二人っきりで、仕事抜きで会話してるこの状況を、『嬉しい』と感じているのが俺だけで、勝手に投影しているからそう見えているだけなのだとしたら余りにも滑稽。
    …ちら、と視線をやるが、目のやり場に困る。

    いつもの上を脱ぎ、ブラウス姿を晒されて、
    威厳を保つためにいかなる時もどんな理由があれ身につけていると言っていたその服装を、威厳を脱ぎ捨ててラフな姿になっているのを、
    平常心で見ていられる気がしない。

    …いや、何回も見てるさ。脱がせてるさ。でもそれは現実にはならない夢物語な訳で。
    どんな表情で、とか
    どんな声で、とか
    そこは自由だろ。
    まさかだろ

    「座らないのか?」
    看護師長が置いていったのか、ラッコのぬいぐるみで手招きされる
    「…いや、ちょっと…立ってたい、気分」
    「…そうか?」
    隣で、体温を感じられる距離にいられるとヤバい
    まさかこんなに意識することになるとは思ってなかった。
    普段二人きりで仕事の話をしてきたからなんてこと無いと思っていた。
    違う。全然違う…

    違う話題にしよう
    「そういやあれから天気はどうなんだ?」
    「…快晴だが」
    …そうだった。ダメだった。
    「うん…良かった。」

    「…改めて、」
    「…?」
    「私は意外にも雑念を持っていたのだと思い知らされたよ」
    「…何の話だ?」
    「君の話だ。リオセスリ殿」
    ドクン、と
    心臓が跳ねた
    「今…君は、私をここに呼んだことを後悔しているのではないだろうか…」
    口元は微笑んでいるが、その瞳は伏せられている。
    「ちがっ…そうじゃない。そうじゃ、ねぇよ…」
    後悔、では無いが、後悔させてしまうことになりそうで。それが怖い。
    「極力、私的な関係を避けてきた私が、君からの誘いを二つ返事で承諾した。それは事実だ。」
    無表情、ではない。
    「君が、水の下の人間であるから。公平さが揺らぐことはないのだから。…これらは言い訳なのだろうか?」
    「それは…言い訳って…あんたもそんな考え方するのか?」
    こちらを見て、微笑む姿が悲痛で、今すぐにでも抱きしめたい。
    「ふふ…良くわからない。ただ、正直に言わせてもらえば、私は君に会う口実が欲しいのだと思う。」
    …ダメだ。違う。勘違いするなよ俺。そういうことじゃない。そんなわけがない。
    …でも、だとしたら。
    「リオセスリ殿…私は、君に会いに来ても良いのだろうか…迷惑ならば正直に言って貰って構わない。早い方がいい。この前のは、言葉の綾だったと、そう言ってくれればいい。」
    ずっと、密かに想っていた人が、自分のことでこんなにも悲しい表情をしているのを、
    どう説明すればいいのだろう。

    カツリ、と
    気付けば無意識に歩を勧めていて、しょぼくれてしまっているこの人の足元にしゃがみ込む
    「俺は、あんたにそんな顔をしてほしくない。悪かった。俺も、ヌヴィレットさんに会えるのが毎回楽しみでさ。まさかこうやって来てくれるようになるとも思って無くて。…その、ただ…」
    見上げた表情は、やっぱりキレイで、でもだからこそ自分の欲望が漏れてしまうのが怖くてうつむいた。
    「…迷惑ではないだろうか」
    「んーん、それはねぇよ。あんたがそんなふうに思ってくれてるだけで俺は嬉しいんだ…っ」
    床を見つめてそう言い放った直後、頭に受けた衝撃に固まる
    優しく、ふわふわと、頭を撫でられている。
    「…ぬ、ヌヴィレットさん…?」
    そろりと、顔を上げる
    「ん、ふふ…いやすまない。まるで尻尾の垂れた犬のようになってしまったなと思ってな。失礼。つい手が出てしまった」
    呆気にとられていると、頬に手を当てられる。手袋を脱いだその手は、冷たかった。
    「何故だろうか。君に触れたいと感じている。触れても良いものなのだろうか?」
    心臓、煩い。ゴクリと、まるで待てを喰らっている犬のように、唾を飲み込む。
    「別に…構わな、い…っ」
    形を確かめるように、頬、顎、そして唇を、なぞられる
    触れられる部分が痺れて感覚がなくなったように
    荒くなった呼吸を整えるのに必死で、
    でもその見つめられる吸い込まれそうな瞳からはそらせなくて。
    また、喉を揺らすことしかできなくて。
    「リオセスリ殿は、この感情を何と言うか知っているのだろうか」
    もう数センチ、届いてしまう。
    「…知って、る」
    「なんだろうか?」
    言えない。言えない。言ってはいけない。
    我慢できない呼吸がはっはっと口から漏れる。その息すら顔にかかってしまいそうな距離で。

    いつの間にか、しゃがんでいたはずの姿勢から、床にへたり込むように座り込み。覆われるように、顔を両手で触れられて。さらりとした銀色の透き通る髪が、俺の視界に入り込んでいる。

    「すき、だ…」
    「そうか…」

    床に力なく垂れた手を、ピクリとしか動かせずに、その行為を受け入れるしかなかった。
    ほんの数秒が、永遠のように感じる。触れるだけのそれは、思っていたよりも冷たくて。喉の奥が熱くて、ぎゅぅと目を閉じるしか無かった。
    ゾクゾクと、今まで感じたことのない感覚に陥る。
    頬に当てられた手のひらは、いつしか首にするりとうつっていて、ぴくりと反応してしまう。
    「…脈が速いな。」
    「あ、…んたの、せい…だろ…」
    荒い呼吸から、なんとか吐き出した台詞は、とてもみっともなくて、
    「私もだろうか」
    力なく、促されるままに触れたそれは布1枚越しの胸。
    手まで心臓になったかのようで、相手の心拍なんてわかりゃしない。
    「熱いな。大丈夫だろうか?」
    「だい、じょうぶじゃ、ない」
    「そうか、シグウィンに診てもらうとしよう。待っているといい」
    「ま…っ待てっ…」
    腰が抜けて立てないうちに、するりと上着を着て、
    「私が君を好き、か。ふふ…そうか。これがそうか。礼を言う。」
    そう言い残して出ていってしまった。

    情けない。どうしようもない。墓場まで持っていくつもりだったこの感情を、相手に勘違いさせてしまったまま、己の欲望だけ満たしてしまった。
    それに、頭の中ではいつもリードしていたのに、全くそんなのは無理で。想像よりも冷たくて、想像よりも情熱的で、更に危険な沼にハマってしまった。
    「公爵ー?大丈夫なの?…どうしたの立てる?」
    「いや、悪ぃ…無理だわ…はは…」
    「ヌヴィレット様も帰っちゃったし、詳しく聞かないと処方も診断もできないのよ?お話できそう?」
    「ちょっとそれも、無理だな…」
    「もう、それだと仕事にならないのよ?火照ってるみたいだけど…熱はないのね。」
    「やめて…看護師長…追い込まないでくれ…」
    「あっもしかしてやだわごめんなさい」
    「謝らないでくれ…頼むから…」

    今度、いや、近いうちにちゃんと説明しよう。
    あんたのそれは勘違い。
    ここまで来たらもう引き返せない。
    俺の本心も、言わないと。

    だから、もう少し、この余韻に浸らせてくれ…あんたが好きだという、この余韻に。
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