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    prskyarume

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    prskyarume

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    水族館にデートしに行く二人です。

    楽しい週末どうも、神代類です。今の時間はわかりませんがこちらの時間に合わせてこんばんはと書かせていただきます。
    明日は僕の恋人。司くんと水族館に行きます。特に予定も決めず、ゆったりと、適当に、ライトアップされた魚を見て、何にもならない会話をして、食事をするだけですが、ほんと、馬鹿みたいに楽しみで。
    このあと、やらなきゃいけない作業も放って、雑にガラクタの散らばるソファへ寝転び、目を瞑ります。明日起きるために、遅刻しないために。ではおやすみなさい。
    すみません。ありがとうございました。





    アラームをかけた時間よりも早めに起きてしまい、かといって二度寝ができるほどの睡魔もなくて。大きめの欠伸をこぼした後にくしゃみを二回してからブランケットを後に。
    軽く食事をしてから歯を磨いて、身支度を整えて、靴を履き、爪先を鳴らして戸締りをした。部屋は珍しく整理整頓してあるし、することもないし、というか、何より早く会いたいし。

    「つーかさくん。準備できたかい?」
    「なっ、なぜここに…!?」
    「妹くんが入れてくれてね。準備してるから〜と、」
    「お前が待ち合わせ時間より1時間も早くうちに来るからだろ!!というか準備できてないの知ってるんじゃないか…」
    「あは」

    ひょこり。彼の自室のドアから顔を覗かせ、可愛い顔をしながら鏡に向かって髪をいじる司くんに言葉を発した。
    見られたのが恥ずかしいのかぱっぱっと適当に髪を払い、照れ隠しなのか、紺色のカーディガンの気にもならないしわを伸ばす。
    僕のために可愛くしてくれて嬉しいな。もう行くのか?って控えめに首を傾げてこちらに問うてくる。

    「…いや、まだ。」
    「じゃあなんで来たんだ…?びっくりしただろう」
    「……早く、会いたくて」
    「…。」
    「ね、ちょっとだけ。いい?」

    するり。胸板の前でゆったりと揺れるネックレスを持ち上げちゅ、と唇をつける。
    熱の入り混じった瞳で琥珀色の瞳を見つめて。
    立ったまんまじゃあれだけど、あんまりした事ない気がするから立ったままで。彼の腰に手を添え、頬を撫でた指で顎を少しあげる。
    行き場のない彼の手が僕の服を控えめにぎゅ、と握った。気まずそうに目を逸らす司くんの結んだ唇にゆっくりと唇を近づけて。
    ちゅ。確かな愛と熱を彼に送り、腰を控えめに撫でてはむ、と唇を甘噛みしたり舐めたり。
    口を離して唾液に濡れた唇を親指でなぞり、はあ、と息を落とす。

    「好き」
    「…ほんと、やめろ、はずかしいから離れろ」
    「あゔ」

    ぴったりとくっついていた体を容赦なしに剥がされ、情けない声が溢れる。
    ゆっくりと抜ける司くんの体温と感触に、遠くなった香りと声。それがすごく、馬鹿みたいに名残惜しくて、剥がされてもなお手を伸ばし指を絡めて恋人繋ぎをした。

    「おまえ」
    「今日くらい許してほしいな。…早めに行こうか」
    「…ん」

    このまま司くんの家にいたら、予定が全部パアになってしまう気がした。彼の香りが仄かに漂う部屋は、僕には少しだけ危ないや。いけないと思いながら彼の手を引っ張り玄関から出る前に目蓋へキスをする。
    怒ったような、満更でもないような顔がこちらに向けられて、可愛くて。
    人気のない道や、わざわざ物陰なんかに寄っては髪へ、鼻先へ、首へ、手の甲へと縋るようにキスをした。

    「遠回り!しすぎだ!!」
    「早めにきたから丁度いいくらいだよ多分。それとも嫌だった?」
    「…、…実感、するから、なんか…。」
    「……ごめん。でも僕はしたい」

    恥ずかしくてだとか、慣れないだとか、そんなんじゃなくて。わかってる。
    僕と司くんは違う人間で、どこまで行こうと他人で。それはわかってる。ふたりして違う未来を歩む可能性もあるから、だから。

    「類、ついたぞ」
    「え、あ…すまない、考え事をしていて」
    「だろうな。ほらチケット。」
    「あれ、お金…」
    「昼奢ってくれ。」
    「…はーい」

    ずる。繋いでいた指が、絡めていた指が、離れて空中に放り出される。急に寒くなって、冷たくなって、ふる、と指先と頬が震えた。
    やだ、まってくれ。
    暗い室内。控えめな青色に照らされ、白い肌が青く見える。その冷たそうな肌に、長い指先をもう一度掴んだ。
    驚いた顔をして振り向いた司くん。自分でもわかるくらい、眉が八の字になってる僕の顔を覗き込む。
    僕の情けない顔を見て、なんて言ったらいいかわからないような。口を開きかけては閉じて、目玉をきょろきょろと動かす。

    「繋いだ、ままがいいな」
    「…人居るんだが」
    「ダメかい、…?」
    「……どうせならこう、」

    一度握った手を剥がされ、司くんの思うがままに動かされる。…恋人繋ぎだ。
    じわじわと暖かくなって、鼻がツンとする。
    司くんも、僕のこと好きなんだよな。それを自覚すると体が少し暑くなる。
    館内を巡るクーラーの冷風が頬を撫で髪を揺らし、繋いだ指先から熱を奪う。
    それが有り難くもあるけど、存在をかき消されているようで複雑で。
    少しだけ力を入れて握り、顔を見合わせた。

    「綺麗だね」
    「お前のが綺麗だよ」
    「…ふ、フフ。」
    「そう言われたこう返すのがセオリーだろう」
    「そうかもね、……君の瞬く金髪に、青いライトが煤け、照らされ、…即興で考えるものではないね」

    最後まで言い切れよ、って崩れたように笑う彼。格好のつかない僕がそんなに面白いのか、愛しいと感じてくれているのか。
    ああ、好きだ。
    すり。自分の赤くなった頬に繋いだ司くんの手の甲を擦り寄せ、瞳を見つめる。
    目を見るだけで好きだと気持ちが伝わればいいのに。

    「好きだよ。司くんは、なにより綺麗だ。」
    「……小っ恥ずかしいこと言うな」

    きらきら。言葉通り、嬉しそうに微笑んで少し細くなった瞳が瞬く。
    ほんのりと染まる頬が挑発してるみたいに見える。早く触れて、撫でて、って。
    人が疎らに立ち、魚を眺める中。端っことも真ん中とも言えない場所でおでことおでこをくっつけ、彼のおいしそうな唇へ視線を落とす。

    「お腹、空いたな」
    「…近い。なんか食べ行くか?お前あまり集中していないだろう」
    「ん…緊張してるのかもしれないね。ちゅーして」
    「………ん。」

    ふに。頬に柔らかくて温かい感触。鼻を掠めた仄かに甘い香り。
    あまりに素直に話を聞いてくれるから少しびっくりしてしまった。司くんが言ってた実感しちゃう、ってこういうことか。
    ほっぺじゃお腹ふくれないんだけど、まあいっか。
    視線を逸らして少しだけ唇を噛む司くんを、あからさまに満足!なんて顔で眺めた。ら、蹴られかけた。

    「我儘に応えてやったのに」
    「嬉しかったって!もう一回、もう一回!」
    「昼は回らない寿司がいいな」
    「水族館でそれ言う…?って僕の奢りってわかってるよね」

    結局お昼は水族館備え付けのフードコートで。僕はまぐろラーメンネギ抜き、司くんは帆立カレー。野菜も食え、とか。一口頂戴だとか。ありきたりな会話のキャッチボールをして食べ終える。後から司くんがお洒落なレストランのが良かったか?って何かを考えたように言うから美味しかったから構わないよ。と付いてきた使い捨てのお絞りでお互い手を拭いてから、また繋ぎ直した。
    水族館を出る前にホタテとまぐろの生きている写真を撮って、青くライトアップされた司くんの後ろ姿も、横顔も撮って、撮られてることに気づいた司くんとツーショットを撮って。一気に思い出が何枚も増えた。

    「楽しかった、クラゲとか綺麗だったねえ!」
    「お前俺しか見てなかったくせによく言えたな」
    「ふふ、そんなことないよ。ね、また、…ぁ」
    「…行こうか。」

    繋いだ手をゆっくり引っ張られ、司くんの後ろをついていく。
    僕より少し低い背。僕と何もかもが違う髪型。最近切ったという髪は襟足が短く、うなじがチラチラとカーディガンから覗く。さらさらな髪。艶やかな髪。

    「類、コーヒー飲みたい」
    「どこか寄る?カフェとか、」
    「自販機で構わん。どこかに…」

    司くんも、もしかしたら抵抗あるのかな。…も、ってなんだ?そんな、僕も抵抗あるみたいな言い方。言い出しっぺは僕なんだから、そんなことあるわけ。
    嫌に眩しい、日が強い午後3時過ぎ。自分の伸びた前髪が視界に入ってきてなんだか暑苦しい。
    司くん、ブラックで飲めるんだよな。僕も飲めるけど2人とも大抵お茶とジュースばかりだからそんなに飲んでるとこ見たことないなあ。

    「自販機探すの大変だな。まあいいか」
    「…ほんとにいいのかい?」
    「死ぬほど飲みたいわけじゃないからな。早く行こう、じゃないと夕焼けに間に合わない。」
    「そう…だね。」





    ひゅう、と冷たい風が黄昏時の空に乗って髪を乱す。水族館からどれだけ歩いたのか。
    彼より体力のある僕でも多少へとへとになりながらも着いた崖。
    目の前には広がる海を、落ちかけた太陽が赤く染め上げ、ゆらゆらと赤い波が蠢く。
    少し時間がかかりすぎたのか、真っ赤というよりは赤紫っぽい。司くんも、僕も、居なくなる太陽に照らされてほっぺも服も髪も赤く上塗りされて。
    ざーん、って少し遠い波の音が耳に心地よい。

    「…綺麗だな」
    「ほんと、…司くんも。」
    「知ってる。」
    「ハハ。ちょっと座ろうか。」

    地味なブルーシートも可愛らしいレジャーシートもないから2人して直接地面に腰を下ろした。僕は小石がお尻に刺さっちゃって肩が飛び跳ねて、それをみた司くんに小さく笑われた。妹くんだったら慌てて何かないかと問いただすくせに。
    ふたりでなんとなく隣に座っていたら、とん、と彼の頭が僕の肩に預けられたから控えめに頭を司くんへと傾けて。
    世界にふたりきりみたいだ。
    特に話すわけでもなくて、ぼんやりと沈むお日様を見ていた。だんだんと星が見つけやすくなって、チラチラと瞬き始める。
    司くんの髪が、僕のような髪色になった、それが頃合い。

    「冷えるな」
    「…ね。帰る?」
    「まさか。類、もう少しこっち寄れ。」
    「これ以上…ああ、抱きしめてほしいのかい?」
    「馬鹿言え。足だ。」

    いつのまにか軽くなっていた肩。悪ふざけで司くんへとぎゅうぎゅう体重を少しかけてから、言われた通りに右足を彼へと寄せた。

    「…え」
    「お前、途中でやっぱりヤダ!とか言いそうだったから。」
    「いや、い、や…」
    「逃げられないための足枷?…重り?」

    司くんの手が僕の足首から離れ、そこに残されたのはなんとも肌触りの悪い縄。ザラザラで、ガサガサな。
    そして縄の先には司くんの細くて白い足首。二人三脚のような。

    「ほら、立て!」
    「ぇあ…っと」

    先に立ち上がった司くんが僕の両手を握ってぐいーん、と持ち上げる。
    あれ、なんか。
    立ち上がった僕のお尻を叩いて、砂埃が軽く宙に舞う。お礼を言うのも忘れて笑いかけてくれた司くんの顔をただ眺めるしかできなくて。
    ああ、こういうことなんだ。

    もう少し前な、って司くんがゆっくり歩き出す。彼の足に縄の痛々しい擦り切れ跡が残っては困るので反抗せず、じゃりじゃりと地面を鳴らしながらゆっくり、ゆっくりと崖の先へと近づく。
    崖の先に近づくたび、早く落ちろ、落ちろ、と急かされているみたい。
    目の前がぐわぐわとして肌寒いはずなのに変な汗が背中を伝う。視界が、いつもより多い瞬きによって何度も短くシャットアウトする。
    縛られた足首の縄がザラザラとしていて、少し痛い。これで最後。これが。
    もう2度と。

    「っ、…まって、僕」
    「死にたくない?」
    「…ごめん、でも、だって。」

    少なくとも今の僕は、今の君と生きたいから。
    もっと、楽しい日をたくさん過ごさないかい?僕と、司くん。えむくんや、寧々とも。
    最初から死ぬ覚悟も勇気も僕にはなかったんだ。
    今、なにもなかったように2人で家に帰るだけで週末になるんだよ。ただの、楽しかった週末に。自室に置いてきた遺書は帰ったら破ればいい、ほら、まだ間に合う。ねえ、司くん。

    「だめだ。ほら、死ぬぞ」
    「ま、てつか…」
    「オレ、泳ぎはあまり得意ではないんだ。」
    「はなし、きいて」

    ぎゅ。両手とも指を絡め恋人繋ぎをして。くい、と顎を上げた司くんが僕の唇を奪う。ちゅ、ちゅ、って震える唇を静止する様に唾液を交わせ体温を与えられる。
    ほだそうとしてる。きみは生きたくないの?
    ざり、整備のされていない地面。土と砂利が靴底に擦れる。あと、何センチだ?絡めていた手に力が加わり、強く、強く握る。

    「…好きだ」

    離された口から発せられた言葉。見開いた目の先には目に幕を張り、頬を緩ませた司くん。

    「だから頼む。」

    体が傾いて、髪と服がぶわっと強い風のせいで激しく揺れる。どこか満足した様な、幸せとでもいいたそうに頬を赤く染めた司くんと、

    「オレと一緒に、」

    指を絡めたまま、崖から波打つ海へと体を投げた。
    体が叩きつけられるよりも前、司くんが口をひらく。…ちがう、僕は、君と一緒に、生き

    バシャン。





    遺書など初めて書くから、書き始めとかよくわからないのだが。どうも、天馬司です。そうだな、まずは勝手に神代類の命を奪ってしまってすみません。でも、オレの大事な人で、誰にもあげたくなかったんです。ただの醜い嫉妬、独占欲でこのような形をとってしまったことを深くお詫び申し上げます。
    オレは幸せでした。きっと、最後に映ったのも、キスしたのも、触れたのも、ご飯を食べたのもデートしたのも言葉を交わしたのも全部オレで。これ以上先、類にオレ以外との未来がつくられないという安心感と優越感で満たされていると思います。
    自分勝手なことをしましたが、後悔はしていません。心中という形になりましたが、本当に幸せでした。
    オレ達のショーを見てくれた大勢の人、手を貸してくれた仲間、オレの類を愛してくれた人、支えてくれた人、応援してくれた人、ありがとうございました。
    オレは類と2人で幸せになりました。
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