日常卯の刻
いつも通りの刻限に起きた藍忘機は自分の上に寝ている魏無羨を見つめ恭しく額に口付けしそっと自分の上から彼を寝台に移動し身支度を済ませた。
次は愛しい道侶の身支度を整えるため、門弟が運んでくれた沐浴の湯を桶に移し替え彼を湯船に浸からせる。
まだ起きる刻限ではないので良い子だから寝せてくれと彼は藍忘機の頭を撫で回しつつ口付けを何回も落としてくる。
朝餉を用意して戻り、まだ桶の中で夢の世界の住人となっている魏無羨を抱き上げ彼の身支度を整えた。毎日良くここまで寝れるものだと少々感心しながらもまだ魏無羨は起きる気配がないため手持ち無沙汰になり傍らで書物を読む。
やっと巳の刻終わり頃に起き出した魏無羨は毎日の日課になっている藍忘機の頭を揉みくちゃにしながら抱き締め太ももをつねってから顔を洗って覚醒した。
ようやく本日きちんと覚醒した彼の瞳が自分を映してくれたことに喜びを感じ彼の唇に軽く口付けする。
「ん、藍湛朝から口付けなんて積極的だな! 」
寝ぼけて自分から本日既に60回以上も口付けしてきたのを理解してない彼が笑いながら声をかけてくる。
ふっと微かに唇の端を上げ
「食うに語らず」
と言うと彼は頬を膨らませつつ朝餉を食べる事に集中した。
日中、藍忘機は子弟に勉強を教え、魏無羨は先日監督した夜狩の記録の添削。
二人にしておくと仕事が進まない、可愛い甥が少しでも家訓を守るようにと藍啓仁が二人に別々の用を言い渡していたのだ。
仕事が終わるまで全く会えないわけではなく、昼餉の刻はもちろん運が良ければ仕事部屋の移動する時などや休憩時間などほんの僅かではあるがまさに束の間の逢瀬を楽しめる。
既に道侶なので隠れる必要は無いと思っているのだが藍啓仁に見つかると防魏嬰が発動し逢瀬の機会が減ってしまう。その為こちらも隠れる事により機会を減らされないように先手を打っているのだ。
先手ついでに日の高いうちから隠れて逢引することで若干の背徳感も味わえるので一石二鳥なのである。
そんな束の間の逢瀬は軽く抱擁と啄むような口付けのみ。その可愛らしい行為は主に魏無羨からであり藍忘機は彼が悪戯心を出さないよう窘める。彼が挑発してくると自身の抑えが効かなくなってしまうので自制するのに精一杯なのだ。
だからといって藍忘機が彼を否定している訳など全くなく、魏無羨もそれを分かっているから若干拗ねた表情は見せるものの仕事がある時は大人しく僅かで満足する。そんな魏無羨を見て藍忘機も胸の内に暖かいものが溢れる。
名残惜しいが仕事の続きがあるので次の逢瀬の機会を楽しみにしつつ仕事に戻る。