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    Futaba053Kara

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    Futaba053Kara

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    5/30無配
    ノーマルカラ一
    雨の中🏩に行ったからいちの話です

    どろんこしんでれら

    「あーさいあく、きもちわるいんだけど」
    一歩ごとにぐちゅぐちゅと嫌な音を立てるサンダルを脱ぎ捨てて、目の前にあるベッドにどさりと腰掛けた。あとから入ってきたカラ松は肩が少し濡れた程度でそこまで被害は無いみたいだ。びしょびしょに濡れた一本のビニール傘を簡単に止めてドアの前に置く仕草をなんとなくぼーっと見つめる。
    「雨なのにサンダルで出てきたらそりゃそうなるだろ」
    「だって、スニーカーよりましでしょ、濡れたら乾かないじゃん」
    「まぁ、それはそうだけど…」
    水溜りを何度か踏んだおれの足は随分泥だらけで、そりゃあもう酷いありさまだった。うわきったねぇ、って思いながらぶらぶらさせていると、おれの足に目線を向けたカラ松がうわぁ…とドン引きしたような声を上げる。
    「…いいねその顔、ちょっと興奮する」
    「えぇ…」
    「嗅ぐ?」
    「嗅ぐわけない…」
    おれの足を見るなり風呂場の方へ消えていったカラ松にタオルでも取ってきてくれんのかなと思って待っていたら、戻ってきた片手にあったのはまさかの、
    「…トイレットペーパーはひどくない?」
    「だってタオル使ったら洗濯する人に申し訳ないだろ」
    「これからシーツ、もっとやばいもんで散々汚すのに?」
    「……それはそれ、これはこれだろ」
    「おれの足を汚物扱いですか、そっちだって足くさいくせに」
    「オレはいつもちゃんと洗ってるもん…」
    「おれだって洗ってるわ」
    かたくてかさかさした紙で、おれの足が少々乱暴に拭われていく。ベッドの傍に跪くようにして、ちょっと嫌そうな顔で爪の奥まで入り込んだ泥を取ろうとしているのがなんか面白くて、ついでにくすぐったくてふひ、と笑いがこぼれた。どうせこの後風呂入るんだし、そんな嫌ならほっとけばいいのに。なんだかんだ世話焼きなところがある優しい兄は、おれみたいなだめなやつを放っておけないのだ。
    トイレットペーパーを持った両手で右足をきゅっと包み込まれる。なんだか妙に恭しいそのポーズに、いつか見たおとぎ話のワンシーンがふと思い浮かんだ。
    「なんか、王子様みたいだね、お前」
    「えっ?顔がか?」
    「姿勢の話ね。まぁ、持ってんのはおれのきったねぇ足だけど」
    「んん?…あ、あー、なるほどそういう…」
    一瞬合点がいったように頷いたカラ松だったけど、そのあとまたおれの足へ視線を戻して露骨に眉をひそめていた。失礼しちゃうね。
    「ひひ、キスしねぇのかよ、おーじさま」
    「……もうやめてって泣かれるくらいしてやるさ、プリンセス。風呂上がってからならな」
    「そんな顰めっ面で言われても」
    「なんなら一緒に入るか?」
    「それはイヤ。せまい」
    拭き取られて多少綺麗になったつま先で軽くカラ松の横腹あたりをつついて遊んでいると、随分足癖の悪いプリンセスだ、なんてかっこつけた顔で笑われる。汚れたトイレットペーパーを手近なゴミ箱に放り込んで、どちらからともなくごそごそと濡れた服を脱がせあった。
    「なぁ、そういえばさ、シンデレラがガラスの靴を落とすのって、わざとやったんじゃないかって言われてるの知ってる?」
    「…いや、知らん」
    「魔法で作られた自分にしか合わない靴だから、置いて帰ったら王子様に見つけて貰えるんじゃないかって」
    「…へぇ、それはそれでロマンチックじゃないか。てかいちまつ、なんでそんな事知ってるんだ」
    「前なんかのテレビで見た」
    ふーん、なんてさほど興味もなさそうなカラ松はもうだいぶ頭がソッチの方向に引っ張られているらしい。風呂に入る前に一回戦入っちゃいそうだな、家で準備しといてよかった、なんて頭の端で考えながら、口からはさっきの雑談の続きがこぼれ落ちる。
    「…もし、シンデレラと全く同じ足の形の人がいてさ、それが自分よりもっと可愛い女の子だったらどうしようとか、思ったりしなかったのかな」
    「さぁ…」
    さっきまでと明らかに違う触れ方で肌をするすると撫で回される。そういう、まるで女の子相手にするみたいな仕草はいつまで経っても慣れなくて、さっき自分から言ったくせに姫みたいな扱いをされるのがちょっと恥ずかしくなった。
    つま先でつう、とカラ松の太ももを軽く引っ掻く。ぴくりと肩を跳ねさせるカラ松を両腕で引き寄せて、挑発するように首筋をべろりと舐め上げた。
    「…おれのは魔法で出来たガラスの靴なんかじゃなくて、どこにでもある汚ねぇ便所サンダルだからさ、お前はおれのこっちの方を、ちゃんと覚えといてね」
    ぐり、と汚れたままの足で太腿の間を刺激してやると、ちょっと悔しげに笑いかけられる。そのまま二人でベッドに倒れ込んで、溺れるようなキスをした。
    「…足だけじゃない、身体中ぜんぶ覚えてるんだ。どこに隠れていたって絶対探し出してやるさ」









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    Futaba053Kara

    DOODLE7/24からいっちの無配です
    理想の暮らし理想の暮らし

    汗を流して働くというのは、素晴らしい事だ。
    朝日と共に目を覚まし、身支度を整えて各々仕事を始める。食料の殆どを自給自足しているこの村では、その日食べるものを自分達で用意するだけでも大変だ。
    まずは牛を放牧場へ連れ出して、牛小屋の掃除。のんびり草を食んでいる姿を眺めながら欠伸をこぼしていると、村の子供達がすれ違いざまに挨拶してくれる。きゃいきゃいと話しながら農具を持って走っていく姿に、子供なのに偉いよなぁ、なんてぼんやり思った。自分達が小学生の頃なんてちょっとお使い頼まれただけで押し付け合いの大騒ぎだったのに。いや小学生どころかつい最近まで似たような状態だったんだけど。
    一通り牛の世話を終える頃には日も高くなってきて、天気が良いので釣りへ向かう。途中木陰でおそ松兄さんが昼寝していたのをカラ松が狩りへ引きずって行ったのを見かけた。ここ最近魚ばかり食べているからそろそろ鳥でも捕まえてきて欲しいな、なんて思いながら釣り糸を垂らす。ここらの海は波も穏やかで大きな魚があまり居ないせいか、殆ど入れ食い状態で魚が釣れるのだ。まさか暇つぶしのために通っていた釣り堀での経験がこんなところで役に立つとは、人生ってほんとなにが起こるか分からないよね。
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