愛と呼ばせてくれ「ミヤジ」
「いっ!?」
名前を呼ばれると同時に額を弾かれて、ミヤジは痛みに呻いた。腕の中の愛しいひとに向けて、批難混じりに「痛いよ」と訴える。彼女は苦笑して、ほっそりとした指先で労るようにミヤジの額を撫でてくれた。
「だって、ミヤジが一人で悩んでいても仕方のないことをぐるぐる考えていそうな顔をしていたから」
「そ、そうか……」
それは一体どんな顔なのだろうと考えてみるが、ミヤジには想像もつかない。そもそも、ミヤジは自分のことを表情の乏しい男だと思っていた。僅かな表情の変化から、細かな心情を察することのできる、彼女の洞察力がすごいのだ。
「それで?」
「うん?」
「なにを考えていたのか、教えてはくれないの?」
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