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    センリ°F

    メディア欄整理のためのプラス用格納庫。ぷらいべったー以外のサブのシリーズものを置いています。

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    センリ°F

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    現パロ🃏💋🐯宅の居候猫こと🌸
    *💋🐯はお休み、🐊お誕生日回

    -🃏相手プラスだけど逆ハー気味
    -🐯は🃏💋宅の同居人
    -🃏がある日🌸を拾ってきた
    -恋人というよりもほぼペット扱い
    -ゆるいシリーズ

    ##同居人シリーズ

    アップルパイの話ダズ・ボーネスは善人ではないが、目の前の胸糞悪さを見過ごせるほど気が長くもなかった。
    「──ちィと行儀が悪ィんじゃねェのか?」
    上司気に入りのアップルパイの店は、人気店なだけあっていつも大行列だ。何がおもしろいのか、上司はこの行列にダズを並ばせたがる。この人が口利きすればすぐに手に入るのにと思っているが、口にしたことはない。ボスがやれと言ったことを遂行することのほか、自分の人生には不要だと思っているからだ。
    クロコダイルは今日も葉巻を燻らせながら、車の中からダズをニヤニヤと眺めている。お使いの内容はアップルパイがふたつと、レモンパイがふたつ。
    しかし、香ばしい匂いの漂う店先で、目の前に並んでいた少女の前へ、不躾な男が割り込んで並ぶのを見たのでは、せっかくのパイが不味くなる。
    ダズは男の首根っこを掴むと、殺し屋のような目で言った。
    「自分より弱そうな奴を選んでる時点で、お前の器は知れてる。とっとと失せろ」
    少女はダズの半分ほどの体躯しかない。割り込まれた瞬間、う、と顔を曇らせたものの、凄むダズには怯まない。腹の据わったガキだ。
    殺し屋の剣幕に、男は尻尾を巻いて逃げ出した。目の前の少女は、ダズを見上げると「ありがとう」と言った。やはり、怯んでいない。
    「…ん、おまえ」
    成る程と、忠臣は声を飲み込んだ。この顔には見覚えがあるし、それならば妙に腹が据わっているのにも頷ける。
    「ドンキホーテのところのガキか」
    ワンピースの裾が残暑の風に揺れている。ハーフアップにした髪からは丸い耳が覗いていた。おそらく少女という年齢ではないのだが、あの得体の知れない男に世話を焼かれているサマは、愛人というよりも愛娘に近い。
    「?ドフィさんのお友達?」
    「…どっちかと言えばその真逆なんだが、あの鳥男と腐れ縁なのは俺のボスだ」
    「ボス?」
    こんがりと焼けるアップルパイの匂いがしている。店のドアまでもう少しだ。
    首を傾げる女に、上司の名前を伝えてやる。ついでに顔を横切るように指を動かした。顔に傷のある、あの人だと。
    「ワニの人」
    「…その人だが、本人の前で言うなよ」
    「あのひと、ちょっとこわい」
    ちょっとで済むならおめでたい頭だ、とダズは内心溜め息を吐いた。む、と眉を寄せる幼い顔立ちと、凶悪な上司の顔は対照的すぎる。
    店のドアまであと1歩というところで、ポケットの中のスマホが震えた。着信相手の名前を見て、ダズは今度は隠さずに溜め息を吐いた。
    「…追加ですか」
    『クハハ…まァそれに近ェな』
    路駐中の高級車から高見の見物をしているであろう我が上司は、電話口でも葉巻を咥えている。至極愉快そうな声色だった。
    『お嬢ちゃんに馳走してやれ。あと、追加注文だ。持ち帰りでな』
    車まで連れて来い、と言って切れる電話。随分と物騒なテイクアウトだとダズは思ったが、口にしたことはない。ボスがやれと言ったことを遂行することのほか、自分の人生には不要だと思っているからだ。
    いつの間にか女は店内にいて、香ばしい匂いを嗅ぎながらうっとりとショーケースを見つめている。殺し屋はその背中へ声をかけた。

    よく間違えられるのだが、ダズの本業は運転手である。怖い顔と佇まいのせいで、用心棒やSPや殺し屋と見間違えられるが、普段は高級車のステアリングを握っている。とはいえ、サー・クロコダイルの腹心であることに変わりはないが。
    アクセルを踏むとファントムは音もなく走り出した。巨体に似合わぬ速さと静けさはボスのお気に入りだ。乗員がひとり増えても何も変わらない。
    クロコダイルは思わぬ拾い物にご機嫌であった。退屈な午後、気紛れなティータイムで暇を潰そうと思っていたが、しばらくはドライブで時間を稼げそうだからだ。
    「災難だったなァ、お嬢ちゃん。それは俺からの見舞いだと思ってくれよ」
    ついでに家まで送ろう、と紳士の顔を見せてやると、女はにっこり頷いた。 箱の中にはアップルパイがたんまり。あの家に住む人間の倍の数はある。
    ノースリーブから覗く肩がまるい。日焼けを知らぬしろさが眩しい。夏の瑞々しさを閉じ込めたようないきものは、なんともあの子憎たらしい鳥野郎には似つかわしくない。
    「ワニさん、顔は怖いけどやさしい」
    無論、ダズに「言うな」と言われたことはすっかり忘れている。しかしクロコダイルは嬉しそうに喉を鳴らすと、指輪を嵌めた手で小さな頭をグシャリと撫でた。
    「クハハ…よく言われるぜ」
    嘘つけ、と運転手は内心で毒付く。車は赤信号でゆっくりと停止した。
    「喉は渇いてねェか?柘榴のジュースがあるぞ」
    車内の冷蔵庫から缶を取り出すと、茶色の瞳が輝いた。プルタブを開け、ストローを刺して手渡してやると、両手で受け取って「ありがとう」と言う。
    おめでたい頭だ。危機感のカケラもねェ。あのフラミンゴ野郎が過保護になるわけだぜ。
    クロコダイルは葉巻の煙をゆっくり吐き出しながら、頬杖をついた。ちゅう、とジュースを飲んでいた女の瞳が、しだいにトロンと蕩けていく。
    信号が青になった。
    「…アンタ、嫌いな奴に間接的にちょっかいかけるの、やめたほうがいいですよ。面倒事しか起きねェんで」
    アクセルゆっくりと踏みながら、ダズは呆れ声で言っても、クロコダイルは愉しそうに笑うばかり。
    すうすうと寝息を立て始めた女の膝から、パイの入った箱を取り上げて座席へ置くと、クロコダイルは柔らかな身体を膝の上へ抱き上げた。首元に当たる寝息がこそばゆい。細い指をそっと持ち上げると、無意識なのか、きゅ、と握り込まれる。
    「…ただの乳臭ェガキじゃねェか」
    子供のようにじんわり高い体温が、エアコンで冷えた身体にぬくい。アップルパイを食べる夢でも見ているのか、口元が緩んでいる。心ひとつで塞いでしまえる唇を見下ろして、クロコダイルはニヤリと笑った。
    食っちまおうか、ココで。
    紳士の仮面を被るのは得意だが、目敏いドフラミンゴは何が起きたかを見破るだろう。手塩にかけているペットをいいようにされて、あの男の歪んだ笑みが一瞬消えるのなら、胸がすく思いだ。
    クロコダイルは気紛れな悪心のまま、小さな顎を持ち上げた。運転手はバックミラーから目を背けている。
    甘いリップの香りはリンゴのそれ。潤む唇まであと少しというところで、腕の中のいきものが嬉しそうに口をモゴモゴさせた。
    「──どふぃさん、」
    その声色には聞き覚えがあった。びしょ濡れの身体を震わせながら、あの男の元へ戻ったときのものだ。暗いコンクリートに囲まれた駐車場で、そっと息づく花のようなそれは、奇しくもクロコダイルの悪心をすっかり吹き消したのだ。
    「…クハ、案外つけ入る隙がねェのはコッチのほうかもな」
    上司の独り言に、運転手は聞こえなかったフリをする。悪人面のままで、紳士はりんご色の頬にそっと唇を落とし、ぐっすり眠る呼吸を楽しみながら、葉巻を咥え直した。
    車内にはすっかり、バターとリンゴの香りが満ちていた。

    閑静な高級住宅街の一角に、ロールスロイスが停まることは珍しくない。しかしそのボンネットがシルバーに塗り分けられているのを見て、家の主は額に青筋を浮かべながら外へ出た。せっかくのオフを台無しにしやがって、あの鰐野郎。
    ドフラミンゴの予感を悪い方で上回り、ファントムから降りてきた男の腕には、ぐっすり眠りこけている愛猫の姿があった。額からぶちりと何かが切れる音がする。
    「クハハハ…!そう怖い顔をするなよ、ドフラミンゴ君」
    「フフフフッ!生まれつきでな。クソ野郎を前にするとこうなる」
    クロコダイルの腕の中でスヤスヤと寝息を立てている猫は、人気店の箱を大事そうに抱えていた。
    「ぐっすりだぜ。可哀想だから起こしてやるなよ」
    「アァ、ウチのが世話かけたな」
    やわい身体を挟んでいては思いきり殴ることも蹴ることもできず、ドフラミンゴは歯軋りした。奪うように猫の身体を受け取ったが、柔らかな髪にはすっかり葉巻の匂いがついている。
    「俺ァ今日誕生日でな。いいプレゼントを貰ったよ、ドフラミンゴ君」
    「ほぉ?それはそれは。礼には及ばねェよ鰐野郎」
    サングラスごしに睨み付けてくる男へ、口の端を釣り上げてやったクロコダイルは、慇懃無礼な態度でゆっくりと車へ戻った。勝利の女神がギラリと輝く。
    出せ、と命じられて、ダズはアクセルをゆっくり踏み込んだ。まるで子供の喧嘩だなと思ったが、口にはしない。誕生日だったのか、と頭を切り替えて、会社に戻ったら特別な茶葉でホットティーを淹れようと、運転手は忠臣の顔でバックミラーを覗くのだった。
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