秘密に気づいて察して暴いてよ「四季ィ…四季…!」
「四季君…四季君!」
「少年……四季…!」
「おい、目覚ませよ!なぁ!」
「四季ィ!!!起きろ!!!」
四季を一際目に掛け可愛がっていた四季の先輩である彼等が、叫ぶ様に紫苑の腕の中で脱力する四季を囲う。桃太郎と鬼の戦争が終結し、戦わなくて良くなる中で立役者の四季が街中を歩いていた時に一人の桃太郎から攻撃された。隠密系の能力であった桃太郎に、腹を刺された時には遅く、偶然四季と買い物に行く約束をしていた彼等の元に待ち合わせに着くと言う所であった為に、気づいた彼等が駆け寄ると倒れる四季を見つめ目を見開き囲ったのだ。
紫苑の服に血が染み込む事など気にせず、馨が必死に患部を圧迫するも止血は追い付かずに血は流れて行く。猫咲が地下施設の花魁坂に連絡を取る中で、四季の顔色は悪くなる一方であり彼等は焦っていた。印南と大我が必死に声を掛けるが、四季は彼等がここまで尽しても自分はもう遅いだろうと悟り、血を吐きながら彼等に伝える。
「みんな…きいて…」
「四季!喋るな、俺の腕で死んだら許さねぇぞ!!」
「四季君…今京夜先輩が来るから待ってて!」
「お前死んだら許さねぇからな!地獄の底まで迎えに行ってやる!」
「少年…!少年…!死ぬな…死んだら私はどうしたら…」
「お前がァ死ぬのは許さねェぞ!!また新作の菓子食ってねぇぞォ!!!」
四季は彼等の必死な姿に笑みを浮かべ手を伸ばす。馨と紫苑がその手を取り彼等と仲良くなり、可愛がって貰った自覚がありそして恋をしていた。四季は口から血を吐き出しながら告げた。
「ありがとう…ごめん…俺…みんなが……」
瞬間四季の身体が事切れ目を瞑る。彼等は叫ぶ様に四季を呼ぶが目を覚まさず、一ノ瀬四季の生涯は生を閉じた。
────はずだった
四季が目を覚ますと畳の上に寝ていた。見慣れた木目の天井が目に入り、此処が自分の住んでいた家である事を知る。体を起こし見回すと、父親が新聞を読んでいる姿が目に入り四季は目を見張った。額に皺があり、着物を着た姿は変わらず此方を見る父親が呆れた様に大声で言ってきた。
「何してんだぁ。明日から夏休みだろォ。楽しみにしてたんじゃねぇのか」
「………夏休み」
「なんだ?忘れたのか…そんな所まで馬鹿になっちまったか」
四季は目の前で生きている父親に涙を潤ませ、生きている父親に歓喜が沸き上がり、グズグズと泣き出した四季に父親が驚き声を掛けるが泣いている四季には届かない。親父が生きている、あの日死なせてしまった父親が目の前で生きて元気そうに話している。四季は決意した。絶対に強くなり父を死なせないと、零れてくる涙を擦り落ち着きを取り戻し、ふと目に入ったカレンダーの日付が気になった。四季が小学校を卒業した日寄りも何年も早く、未だ四季が幼稚園に通う時寄りも早い歳に、ここはパラレルワールドなのだと知る。
四季の産まれた歳が早く、漫画か何かで読んだ転生で逆行なのかと思うと胸の内で叫び声を上げた。だが父親を死なせない様に強くなれる絶好の機会だと思い、戦いの中で合った事も変えられるのではと思った。強くなるには師事した方が良い、目の前には桃太郎として活動していた父親、四季は決意をし叫ぶ様に声を上げた。
「親父!俺を強くなりたい!!」
「強く、組手でもするのかぁ?」
「俺知ってるんだ!桃太郎も鬼も全部」
「はぁ…!?なんで、それを」
四季の決意を固めた様な、幾多もの死線を潜り抜けた雰囲気に息子の何かが変わり本気の決意が伝わった剛志は、湧き上がる戦場に居る様な雰囲気に当てられ笑みを深める。
「俺の稽古は厳しいぞ?」
「どんな稽古でも俺は耐えられるぞ!」
「ならお前を鍛えてやる」
それから四季の強くなる為の旅路が始まった。
高校生になった四季は血蝕解放での銃の扱いも慣れ、血を形成する速度も瞬間的に出来る他に体捌きも身に付けたが、羅刹学園から声が掛かり通う事を決めた事に父親は十分じゃないかと言うが、四季は仲間の強さを知っている為に通う事を決めた。
フェリーに乗り込み父親に手を振ると感慨深いものがあり、フェリーには見知らぬ者ばかりで羅刹学園に付き渡された制服に着替え教室に入ると驚く事に見知った五人の顔が見えた。
彼等を見ていたが気付かれぬ内に視線を外し、空いてる席に座る。成るべく彼等と合わぬ席に座る中で観察するが軈て教師が入って来た所でレクレーションになり四季の意識は逸れた。
そんな四季の様子を彼等が観察する様に見ていた事を、四季は知らない。
学園に入り三ヶ月が経ち四季は紫苑に馨の猫咲に印南に大我と仲良くなった四季は、毎日彼等に囲まれ過ごしていた。血の能力も入学から上位の彼等に周りのクラスメイトは、大我と印南以外は絶対に内に入らせない気難しい彼等が、四季の前では幸せそうな柔らかい表情を浮かべる事に全てを悟り、このクラスでは彼等に恋をする者等出ない程に分かりやすい態度に四季だけが気づいて居なかった。
四季の同室は偶然にも紫苑になり、女の部屋に入り浸るだろうと一人部屋を満喫しようと思い、同時に寂しさが湧き上がっていた四季だが意外にも紫苑は女の部屋に泊まること無く過ごしていた。馨を筆頭に猫咲や印南に大我も部屋に入り浸り、四季は恋をしていた彼等と楽しく過ごしながら、あくまでも前の彼等では無いために割り切っていたが、然し彼等と過ごし絆され湧き上がる感情に蓋をしたのだ。
校舎裏の人が来ない陽当たりの良いスポットを見つけた四季に誘われ、彼等の溜まり場になったその場は秘密基地の様な扱いになっていた。
その日も馨と紫苑に挟まれ、馨の肩に頭を乗せ眠る四季を前から印南と猫咲が見ながら、大我が紫苑の横に座る。円で囲う様に座る彼等に安心する様に寝息をたて眠る四季に紫苑が笑みを浮かべた儘呟いた。
「本当にいつ気づくのかねぇ」
その紫苑の言葉に馨が楽しげに笑みを浮かべ呟く。
「だけどまだこの状況楽しみたいだろう」
猫咲が後ろ手に背を背後に傾かせ、足を伸ばしながら呟いた。
「えー俺は早く気づいて欲しいけどなぁ」
印南が血を吐きだし何時もの表情で話す。
「私も少年には気づいて欲しいが、少年のペースと言うものも大切にしたい…ゲホッ」
大我が四季を起こさぬ範囲で語彙を荒く語った。
「四季のペースは大切にするべきだァ。四季が起きた時の為のハーブティー準備しねぇとな!」
「煩ぇ四季が起きんだろ。もう少しボリューム下げろ」
「大我さぁ。四季くん起きるから喋らないでくれないかなぁ」
大我は彼等の何時もの文句を無視し、四季が起きた時の為に準備を始める。そう彼等は"記憶があった"のだ。前の世界の自身達が生まれてから四季と出会い、幸せな時を過ごし、四季が死に灰色になった人生を生きた記憶が頭に存在していた。
「思い出した時には驚いたけど、同時に何処か存在していた胸の虚空も消えたよね」
「四季に会う為に俺は生まれ直したんだと思うと、今世は女の子も大切だけど四季の事が一番だから女の子は優先は出来ないよね」
「少年に会う迄幸せで、だが何処か存在した虚しい気持ちに彼と会った途端に埋まる胸に悦びを感じたのも当然だ」
「此奴を別に認める訳じゃねぇが、会いたかったのは事実だし思い出した事は悪くねぇ」
「そんな事言いながら猫は嬉しい癖に」
「………うっせぇ!」
彼等が戯れる様子に四季に、ブランケットを掛けた大我が満足げに頷くと呟いた。
「此奴に会えたのは奇跡みたいなもんだからなァ。この時間を二度と潰したくねぇ」
大我の言葉に、四人の表情が引き締まり空気が張り詰めまるで戦場に居る様なその空気は、彼等が四季を失う事を二度としたくない証であった。
「もう二度とあんな思いはごめんだ」
「生きてるのに生きてない思いなんて二度としたくないよ」
「少年を失うのは死と同義だ」
「あんな思い…したくねぇ」
彼等の悲痛な思いは四季が死んでから退屈な日々を過ごし、大切な者を失いながらも生きる事を強いられた拷問の様な日々を思い出し場が静まる。暫く無言が続き誰も言葉を発する事がない重苦しい空気が続きながら、もぞもぞと肩が動き目を覚ました四季が辺りを見渡し妙な空気に、呆然としながら呟く。
「どったのこの空気」
四季の言葉に彼等の空気は一気に散布し、穏やかな空気が戻って来た。
「なんでもねぇよ」
「おはよう四季君なんか飲む?」
「紅茶にレモネードに緑茶もあるぞ!!」
四季は大我手製のレモネードを貰い一気に飲んでいく様子に、この日常を二度と失いたくないと彼らは決心する。飲み終わり二杯目を貰う四季が呟く様に言った。
「皆にも飲ませたかったな……」
四季は時折過去の自分達に思いを馳せる。それはこの時空には存在しない、前世の彼等を思い寂しそうに呟くのだ。自分達は此処にいるのに、過去の自分を思う四季に嫉妬に焦がれる程の想いを抱きながら、彼等は四季へ早く気づいてくれないかと想いを抱く。
彼等が話すのにはまだ早いのだ。四季と教室で目が合った瞬間、全てを思い出した自分達は欠けたピースが漸くはまった様な感覚を抱き四季が生きている事に歓喜した。それから自身達の能力と今の自分達の能力の乖離に悩まされ、必死に能力を伸ばし漸く四季を守る程には能力が戻ったのだ。
だから早く気づいてくれないかと願う。四季と共に暮らす世界を得るために。
「四季ィ俺にもちょーだい」
「え!これは俺のだからやらねぇよ!」
「えーけちー」
「四季君僕も欲しいな」
「じゃあ俺もぉ」
「ゲホッ…私も欲しいな…」
「お前らァ!!コップ回すから受け取れぇ!!」
四季を揶揄う彼等を大我が収束すると言う何時もの光景に、彼等と過ごす時間が大切でもう無くしたくないなと四季は思うのだ。二度目だとしても彼等の架け替えの無い時間は奪われたくない。例えそれが死だろうと四季は今度こそ長生きすると決めたのだ。その為に鬼神の力を使わず強くなる様に訓練もする程に、最初は父親を守るだけのそれが、大切な物が増え全てを守りたくなった。だからこそ決意する。全てを守ってやると胸に刻む。
この幸せな光景を無くさない為に。
四季は羅刹学園からの実習で来た地区で大規模な桃の襲撃があり第一線で駆り出されていた。然し数が多く体に多くの傷が出来て、あちらこちらから血を流しながらやっとの思いで立っていた。桃の攻撃を避けだが足を滑らせた事で攻撃が目の前に迫る。死ぬなと頭に走馬灯が過ぎる中、彼等とまた生きられない事を後悔し目を瞑る。瞬間誰かの背中に庇われるのが目に見えた。
痛みが何時までも来ない事に目を開くと、三人の背中が見え安心し目を見開く。彼等の紫苑に印南に猫先の背中が何故か大人の彼等に重なって見えた。
「四季大丈夫か〜」
「これだからお守りは嫌なんだ」
「少年…無事なら安心した。後は任せておけ」
目の前に立つ彼等の技は今の彼等が使う物寄り更に未来の彼等の完成させられた技であり、目の前に立つ彼等の姿が完全に昔の彼等と重なる。
思い出していたのかと漠然と考えが浮かんだ四季は、彼等が使う武器で敵を蹴散らして行く様子を呆然と眺めていた。大我のバリアに守られ、その前に印南の襖が構え紫苑が赤い馬を出している様子が見える。猫咲が変化し敵を翻弄し、無線には馨の桃太郎が迫る人数の声が聞こえて来た。彼等は全てを知り、四季に歩調を合わせゆっくりと時間を進めていたのだ。
何時の間にか周りの桃太郎の倒れ付す光景が広がり、紫苑が手を叩きながら嫌々げに呟いた。
「四季に手を出すなんざ、殺される覚悟をしてから来い」
「此奴が負ける事はねぇけどな、死にそうになるまで追い詰めるのは別だ。そんな奴らは全て殺す」
「少年が戦うのは構わない。此処は戦場だ。然し死にそうになる程に追い詰めるなら別だ。死を持って地獄に落とそう」
彼等の言葉に馨と大我が駆け寄り、四季の肩に手を載せる。四季の片腕ずつに馨と大我が腕を回し、一斉に四季に歩調を合わせ、前を行く紫苑と印南と猫咲に、共に歩く馨と大我に四季は唖然とした泣き出しそうな顔で呟いた。
「なんで…思い出してたの…」
四季の言葉に振り向いた彼等が意地悪げな揶揄う様な笑みを浮かべ呟いた。
「今更気づいたの〜?遅いよぉ」
「お前頭迄トロイのかよ。遅せぇよ」
「少年やっと気づいたのか…気づいた事にGoodを贈ろう…ゲホッ」
「四季くん遅いよ。けどやっと気づいた事嬉しいな」
「お前遅ぇぞぉ!!待ちくたびれたぜ!!」
馨が優しい笑みを浮かべ、大我が厳しい表情だが優しい雰囲気に、彼等の柔らかい笑みを浮かべる様子に四季は歓喜と安堵に複雑な感情が混じり合い叫んだ。
「バカバカバカ!!バーカ!!なんで言わなかったんだよ!!」
「えー言わない方が良いし…気づいて欲しかったんだよ」
「馬鹿馬鹿煩ぇよ…………気づいて欲しかったんだよ……言わせんな」
「少年その理由を聞くのは野暮ってものだ。唯一つ言うなら……意地だな…」
「その方がおもし……まあ意地だよ」
「俺らから言うのはなんか違ぇからなァ!」
四季は彼等の言葉に溢れる思いで前世の彼等も今世の彼等にも恋をし、好きになった思いが溢れ出しそうになった事に気づいた彼等が、決心した様に笑いながら一斉に声が重なり告げた。
「「「「「四季好きだ」」」」」
彼等の言葉に等々涙が決壊した四季は、目から零れる大粒の涙を流しながら大きな声で返す。
「おれも…ずき…!!」
彼等は四季を囲みぐしゃぐしゃと頭を撫で背を叩いたりとそれぞれに構い出す。四季は反抗しながらも幸せなこの状況に浸りながら、生まれて来た事が報われた様な思いを抱き、彼等と共の時間を生きようと決意するのだ。
四季を愛し彼の全てが欲しい、食べてしまいたい程に愛する彼等は四季の笑顔を見て目を細め鋭く光る視線を四季に向けた。彼を幸せにし誰にも渡さぬ様に自分達で囲う程に愛する彼等は、漸く手に入れた四季をこの手に抱きしめ隠すのだ。狂おしい程に愛おしいこの子供に愛を注いで。
この日四季は彼等と恋人になり、共に生涯を過ごし幸せな日々への一歩を踏み出したのだ。