届きたい「月光(つき)さんには、手の届かへんところなんてなん無いんとちゃいます?」
ツリーの天辺に台も使わず星の飾りを付ける人が視界に入って、ついアホなことを零してしもた。
そりゃ俺もこの上背になってからは、高いとこの電球なんか取り替えんの頼まれる側の人間や。今だって、月光さんが飾ってるツリーの傍の窓の上辺に、台も無しでモールの飾りを付けてるところやし。
せやけどここへ来て、月光さんの隣におるのが日常になって、いざとなったら自分より高いとこを誰かに任せられる安心感を久しぶりに味わわせてもろてる。
月光さんは仕事の手を止めて、俺のほうへ顔を向ける。あないに素っ頓狂な問いにもちゃんと答えてくれる、優しい人。
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