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    soryu2soul

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    soryu2soul

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    流血表現有り。前回描いた乙の拘束絵に投げ銭💴があったことで思いついた闇オクネタ。夏乙です。時系列は乙が2年の時のどこか。夏油は百鬼夜行で負けはしたものの逃げて生存してる設定。なんでも読める方向け。

    特級術師の少年が闇オークションに出品される話月も姿を見せない闇夜。この場所は何十年も前に全住民が移住し人々の記憶から忘れ去られた山奥の小さな町。町の中央にある廃れたビルの地下に一際賑やかな場がある。ここはとあるオークション会場。すり鉢上に並べられた椅子の中央にはステージがあり中規模程度の広さがある。
    オークションに出品されるのは呪術に関係するものがほとんど。主に呪具が多く持ち主のいないものや盗品など、そして稀に術師本人を拉致し本人の意思なく売買の道具とすることもある。彼らを何に使用するのか定かではないがこういうものを好んで集まる客も案外いるようだ。この場所に法などありはしない無法地帯。裏社会そのものだ。そして今宵も不正な売買で儲けたのであろう大金を握りしめ、沢山の観客が一際明るく照らされたステージを見つめ盛り上がっていた。今日の客席は満員御礼。それもそのはず、今日はいつもに増して珍しいものが出品されるらしい。

    今日の目玉は特級術師。日本に存在する呪術師の中でも異彩を放つ強さをもつ術師。中でも呪術界最強の男、五条悟はやはり裏社会でも有名である。今回の商品は特級術師の少年という情報だけが解禁され客席に座る誰もがどのような人物なのかと今か今かとその登場を待ち侘びた。
    そしてオークションは進み最後の出品となった。いよいよ例の特級術師が見られると浮き足出す客席。だがステージ後方から商品を持った従者が現れると客席からは歓声よりもどよめきがおこった。
    従者の肩に担がれた少年はステージ中央の無機質な台座に座らせられる。両手を後ろ手に縛られて足も拘束されている。首から下がるロープは近くのポールに留められ、さながら飼い犬のような姿。だがその上半身にはいくつもの大傷。まだ付けられて新しいその傷のいたるところから出血しているのか着ていた白い服は赤く染まっている。顔にも傷がいくつもあり腫れぼったく見える。口からは多量の吐血の痕がうかがえ、普通の人間なら瀕死と言われてもおかしくない状況だが少年は苦痛に顔を歪めながらも肩で呼吸をし客席を睨みつけている。まだ生きていることに驚きを隠せない客達。そんなことなどお構いなしに進行役が喋りだす。

    「続きましては本日の目玉商品、特級術師乙骨憂太です!!特級術師という今現在日本で3人しかいないとされる術師の中でも頂点に立つうちの1人でございます!現在東京都立呪術高等専門学校在籍の2年生、なんと齢16にして呪術界最強の男、五条悟に才能を買われ呪術高専へ編入、そして皆様の記憶にも新しい昨年12月24日百鬼夜行と呼ばれる呪術界に残る大事件、もう1人の特級術師だった最悪の呪詛師、夏油傑を打ち負かしたという少年でございます!ご存知の通り特級という強力な術師故、我々もとてつもない人力、時間を費やしましたがついに生捕りに成功いたしました!!今は皆様にお見苦しい姿を見せておりますがご安心ください。彼は術師の中でも類稀な反転術式という自己回復能力が備わっております!呪力の封印を解いたあかつきにはこの傷も存在しなかったかのように消え去ることでしょう。そして何より特筆すべきは反転術式を他者に施すことができるのです!それを可能にするのが圧倒的な呪力量!これはあの五条悟をも上回る、五条悟にもなしえない能力でごさいます!!まだ未成年で将来有望、調教次第では従順なボディカードに、戦場では強力な兵器となること間違いなし!呪力を用いた実験体にも!!是非お手元でその実力をご確認くださいませ!!!」

    五条悟にも成し得ない能力。それだけで観客達は湧き上がる。その情報だけでも目の前の商品である少年の価値が理解されたようだ。会場内のボルテージも上がっていく。オークション開始の鐘が鳴ると観客達は一斉に買いたい金額を叫び出す。

    「100万!」「200万!」「500!」「1000!」「1億!」「10億!!」

    どんどん跳ね上がっていく自分の価値に吐き気がする乙骨。だが朦朧とする意識がそれを許さない。反転術式を使えないほどに消耗した体。その上に四肢を拘束され首には逃げられないようにロープが巻き付き絞めあげられて苦しい。敵との戦いで受けた傷がズキズキと痛む。意識を保つだけで精一杯だ。客席は薄暗く自分のいるステージだけにスポットライトが当てられ、眩しすぎるくらい明るい。それだけでも眩暈がしそうなのにただただ自分がいくらで落札されるのか見守るしかなかった。落札金額が50億を超え競り合う声がだんたんと少なくなり、そろそろ締められるかと思われたその時。

    「100億」

    低く落ち着いたトーンの声が会場に響き渡る。大幅に吊り上がった金額にざわつく会場。誰もがその声の主を探して振り向いた瞬間。
    突然会場内に大量の呪霊が現れる。その姿を見た者達が慌てふためき外へ逃げようと出口へ向かうがその扉を塞ぐように呪霊が現れ、逃げる人々を襲い始めた。
    助けなきゃ!無意識に立ちあがろうとするも手も足も拘束された体では身動きが取れずむしろ傷口が酷く痛み乙骨は悶える。痛みで霞む視界を断ち切るように目を凝らし客席を見るとあちこちで起こる人の悲鳴と逃げ惑う足音、そして人を捕らえ切り刻み、食い潰す呪霊達の気持ち悪い笑い声。どうしようもできず呆然と見つめる乙骨の眼前に1匹の呪霊が現れる。

    まずい、やられる!!

    ギュッと目を閉じる乙骨。しかし、しばらく暗闇の中にいても襲ってくる様子はなく何の音沙汰もない。恐る恐る目を開くと多量の眼を持って大口を開けている呪霊はその眼を見開き、驚いた表情をしながら客席の方へ後退していく。いや、吸い込まれているようだった。吸い込まれる呪霊に見入っているとある人物の手に吸い込まれていくのが見えた。渦を巻くように黒い球体へと変わり果てた呪霊をポカンと見つめているとその人物から声をかけられる。

    「久しぶりだね、乙骨くん」

    客席は暗さからあまり良く見えないがなんとなく聞き覚えのある声。声の低さから男だとはわかるが、誰だ?そう思った瞬間視界が遮られる。いや、目の前に誰か立っている。視界に入る情報からわかるのは黒の和服に袈裟姿の男。

    「嗚呼、こんなに真っ赤に染まって…君には勿体無いくらい似合っているよ」

    重たい頭をあげ、立ち塞がる声の主と目が合うと驚きの表情に変わる乙骨。

    「夏、油……」

    去年の暮れ、己の存在をかけて戦った相手。お互い最後の切り札を使い壮絶な戦いの結果、勝敗は乙骨に分配が上がった。その衝撃で乙骨は気を失っていて夏油の行方はわからずじまい。それ以来行方不明ということになっていた。あの時と何も変わらないその男が今、目の前に立っている。

    「久々の再会だってのにあまり嬉しそうではないね。まあそんな余裕はないか」

    苦笑いする夏油は屈んで乙骨の足を縛るロープを外す。

    「なんで、何故お前がここに?何故僕を助ける?」

    状況が理解できない乙骨。

    「そりゃあ、君を連れていくために決まってるじゃないか」

    足の拘束だけを解き立ち上がると手を着物の袖口に入れニコリと笑う夏油。

    「連れていく…?どこに?あの呪霊達はお前のなのか?ここにいた人達を殺したのはお前なのか?」

    「相変わらず質問が多いねえ。ここにいた人間共は君のような有能な術師を金で買おうとする愚か者達だ。猿も同然。そんな無能はこれから先の世界にはいらないからね」

    「…だったらお前だってその猿と同じだろ」

    お前だって僕を金で買おうとしてたじゃないか。

    「痛いとこつくね。だが私は君を金では買わないよ。君は金には換えられないくらい優良な才能を持っているからね。君の力があれば世界を変えることもできるんだよ!」

    いつの間にか逃げ惑う人々の悲鳴や人々を襲う呪霊がいなくなって静まり返った会場に夏油の声が響く。人を殺しておいてまるで正当な行為とでも言わんばかりに大袈裟に身振り手振り話す夏油に全く共感できない乙骨はだんだんと苛つく。

    「お前はっ!!僕ひとりのために何故いつも他の人を犠牲にするんだ…!」

    今すぐでもぶん殴りたい気持ちだったが手の拘束は解かれていない。叫んだことで体の至る所が激しく痛み首に巻かれたロープが喉に食い込こんで苦しくて息があがる。

    「革命には痛みも必要なんだよ。君にはそれも知ってもらわないとね」

    夏油は乙骨には気にも止めず乙骨の首とポールを繋いでいたロープをポール側だけ解く。

    「僕はっ…お前のものじゃない」

    苦し紛れに話す乙骨を見下ろしたまま首に巻かれたロープを強く引っ張りあげ立つように促し、無理矢理首を引かれ痛みに顔を歪めながら立ち上がりよろけた乙骨を抱き止めた。

    「まだわからないのかい?君の体の自由は今私が握っている。そんなボロボロの体で何ができるんだい?」

    苦痛に顔を歪める乙骨はもはや言い返す余裕はない。ゼエゼエと息を吐きながら拘束と痛みで動かない体を夏油に預けるしかない状況に悔し涙を浮かべる。

    「大丈夫。傷は私の家族が癒してくれるよ。もう少し我慢できるかい?」

    乙骨を落ち着かせるため今まで以上に優しい声で話す。優しく抱きしめて安心させようとする。

    「はなせ…」

    声にならないような弱々しい声でそれでも抵抗しようとする姿勢に夏油はそれでこそ乙骨だとクスッと笑う。
    その時。ステージから上方、客席の後ろにある扉がバンと大きな音を立てて壊される。そこにいたのは呪術高専の制服を着た少年少女と二足歩行のパンダが1匹。乙骨の同級生だ。そして、少し遅れるように入ってきた長身白髪の男。転がる死骸の多さに驚く少年らと違って落ち着いた様子の男は周りに目を配らせることもなく真っ直ぐステージにいる我々を見つめている。
    やっぱり来たか、高専の連中が。そして五条悟。私の旧友だった呪術界最強の男。その目は黒のアイマスクに隠されて見えないがわかる。その奥にある瞳がこちらを睨みつけて離さない。思っていたより早かったな。だが私のやる事は変わらない。夏油はニッコリと微笑み遅れてきた観客へ話しかける。

    「やあ、悟。遅かったじゃないか。乙骨のオークションはもう終わってしまったよ」

    乙骨を抱きしめたまま手をヒラヒラとかつての友に振る夏油。

    「それで?お前が買ったのか?悪いが憂太は金に換えられるような人間じゃない。返してもらおうか」

    感情の読めない声で返ってくる言葉。だがその見えない部分でふつふつと怒りが込められていることに気づく。相変わらずキレやすいやつだなと変に感心する。

    「まさか!私だって乙骨が金で買えるような人間じゃないことはわかっている。結局誰にも買われることはなかった。だから私が貰い受けるのさ」

    皆に見せびらかすように乙骨の体を客席正面に向かせる。傷だらけで今にも倒れそうな乙骨を見て驚く一同。

    「憂太!!?なんで傷だらけなんだ?!」

    「反転術式使えたはずだろ?なんで…」

    「憂太…」

    体のあちこちから大量に出血して白の制服を真っ赤に染めた乙骨を見て動揺を隠せない同級生達。

    「反転も使えないくらい体力を消耗してるね。通りで憂太の呪力をほとんど感じられなかったわけか…」

    五条悟は冷静に分析しているようだ。流石は教師。あの時とは違うね。

    「一刻を争うようだ。傑、憂太を返してもらう」

    「落ち着けよ、ちゃんと見ろ」

    臨戦体勢に入ろうとする五条を止める夏油。手に巻きつけたロープ見せ、乙骨の首と繋がっていることをアピールする。

    「乙骨の命は今、私が握っているんだよ。例え君が一瞬でこちらまで来れたとして私の手から救い出せるのかい?」

    「できるさ、僕を誰だと思ってる」

    いまだ見えないはずのその瞳、六眼にロックオンされ続けて冷や汗がでそうになる。だが臨戦体勢を緩めない五条に追い討ちをかける。

    「そうだな。君なら可能だろう。でも後ろの生徒は無事じゃないだろうね」

    その言葉と同時にどこからともなく大量の呪霊達が五条達を取り囲む。

    「この施設はすでに私が掌握してある。ステージ以外にもウヨウヨと呪霊はいるよ。果たしてこの数の呪霊から可愛い教え子を守りながら乙骨を取り戻せるかな?」

    夏油が指をパチンと鳴らすと呪霊達は一気に五条達を襲う。チッと舌打ちし戦う悟が見えてほくそ笑む夏油。焦ったように仲間の元へ行こうとする乙骨の首のロープを引っ張り引き寄せるともう抵抗する体力もないくせに睨み返してくるその姿が面白くてクツクツと笑う。

    「さて、私達はおいとまさせてもらおうか。少し辛い体勢にするけど我慢してくれ」

    そういう夏油は乙骨の腹を肩に乗せるように抱き上げると乙骨からは呻き声があがったが今は気にする余裕はない。相手は五条悟だ、油断は禁物。ワラワラと群がる呪霊達を掻き分けながら会場を後にした。



    しばらく乙骨を肩に抱えたまま走り続けてオークション会場から程遠い森の中にたどり着いた夏油は乙骨の様子を確認するために下ろす。意外にも抵抗することなく大人しくしていた乙骨は無言のまま反応はない。かなりの重傷だったからもしかして死んでしまったかと思い仰向けに寝かせてから首元の脈を確認するとまだトクトクと脈打っているのが確認できた。どうやら体力の限界がきて気絶しているようだった。

    「流石は特級術師と言ったところか、そう簡単には死なないね」

    普通の人間ならとっくに死んでいてもおかしくないくらいの大怪我に多量の出血。だが乙骨はわずかに残った呪力を生命維持に回しているのかなんとか生きながらえているようだった。感心したところでようやく手の拘束と首のロープを外し解放する。必死に抵抗し外そうとしたのだろう、手首にはロープの痕がくっきりと残り真っ赤な痣になっている。喉の辺りには刃物で斬りつけられたらしい長めの切り傷。戦闘時につけられたものだろうか、たいした治療もしないままロープで首を絞められて傷が抉れてしまっている。見ただけでも痛々しいその傷からは出血も多かったのかロープや制服の襟元にも血液が滲んでいた。苦しげながらも規則正しい寝息で眠る乙骨の頬を撫でる夏油。
    ようやく、ようやく手に入れた。乙骨憂太。最初は乙骨に憑く特級禍呪怨霊、祈本里香が目的だった。だが以前の戦いの後あれがどうなったのかはわからない。今はもうどうでもよくなった。乙骨さえ私の側にいてくれれば少なくとも私の願望にはまたひとつ近づく。手懐けるにはかなり時間がかかるだろう。だが。
    今度は大事そうに横抱きすると優しく頬擦りをする。

    「もう離さない。悟の元には返さないよ。これからは私と共に生きよう、乙骨」

    いまだ目を覚まさない乙骨を大事に大事に抱えた夏油は再び歩き出し闇夜に融けて消えてしまった。
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