パンプキンの魔法「おねぇーちゃぁぁぁん!」
家の中に響き渡る賑やかな声。
一階のステンドグラスを磨いていた手を止めたモモが、エプロンで手を拭いながらなぁに?と階段から顔を覗かせる。
「カボチャにしよ!」
夏も過ぎ去り、庭の緑が黄色や橙に染まり始めた頃、暫く寂しげにしていたケイが伏せていた耳をピコーン!と立てて、良いこと思いついたっと立ち上がったのは依頼もない日の朝食後。
掃除をしていたモモを遠慮のない声で呼びつけて得意げに頬を染めてみせた。
「南瓜?」
「そう!お家の中!」
「ああ、飾り付けのことね?」
むふん!と鼻を鳴らす妹分を穏やかに見つめ返しながら、そういえばそろそろそんな時期か、と次節に思いを馳せる。
昨年はバタバタと忙しなかった色々が重なり、エオルゼアもフリーカンパニーの面々もそれどころではなかったのだ。窓でケイが飾った風鈴がちりん、と秋の風に揺れるのを見やって、モモはそうね、と頷いてみせる。
「フリオ達にも手伝ってもらいましょうか」
「じゃあおかーさん達呼んでくる!」
言うが早いかパタパタと階段を駆け上がるケイ。
モモは出しっぱなしのバケツと布巾を回収するべく後に続いて床を鳴らした。
男手が増えると賑やかになるもので。
ケイの細かい指示で大きなパンプキンタワー等を飾りつけた面々は今は休憩と称して部屋に引っ込んでいる。
高いところの作業を手伝うと居残りを申し出たヤシマに大丈夫と答えたのはケイで、オーナメントを手に頬を染めている様子から楽しみにしていることを察したのだろう、何かあったら呼べよ、と笑ってすんなり引き下がったのだ。
「おねーちゃん、これ、位置どーお?」
「…ん? ッ!やだケイ、危ないから梯子の上で振り返らないで!」
「大丈夫だよ〜っ ね、位置これでいい?」
「まってまって、今見るからじっとして!」
梯子の上で背伸びしながら呼ぶケイに仰天しながら慌てて駆け寄ったモモは、梯子を押さえつつ上を見上げる。
右が下がっている、行き過ぎた、と賑やかにしながらも綺麗に飾りつけたケイは、よし!と梯子から器用に飛び降りてモモに並んで上を見上げた。
「どうですか、先生?」
「うむ、上出来じゃ…。 っかんせーい!!!!」
両手をあげて、ワーイ!と喜んだケイの頭を撫でながらモモはふふ、と楽しそうに笑う。
夏が終わってからこっち、寂しそうにしていた妹分の明るい顔を見たのは久しぶりだった。
「楽しかった?」
「うん、お腹へった!」
答えになってない答えにもう一つ笑いながら、おやつにしましょうか、とモモは返す。
「ジャーキー!?」
「クッキーよ」
「ジャーキーは!?」
「はいはい、ジャーキーも準備してあげるから。ケイはみんなを呼んできて?」
わかったー!と元気よく階段を上がるケイを見送りながら、ぐるり、とあたりを見回してみる。
どんな時もこの家が明るく彩られるのは、ケイのおかげだな、と頷いて、モモはケイの好物をこっそり多めに準備したのだった。