春、霞あける頃春は曙、とは誰が謳ったものだっただろうか。
温かくなり始めた時節、用事があって故郷の地を踏んだ折に妹分が可愛い耳をピコンと振って小金通りで見つけた菓子。
餡を桃色に染めた生地で包み、それを塩漬けした桜の葉で化粧されたこの時期だけの其れ、桜餅をみて、八重歯ののぞく可愛い唇がこういった。
「お花見しよう!?」
ギムリトより帰還してこっち、皆で何かするこ機会も増えた我が家の面々。
花見は大人数でやったほうが楽しいだろうということで声を掛ければ意外とすんなり全員集まることに成功したわけで。
「お弁当はモモさんと僕で作りました。楽しみにしててくださいね!」
「モモ、おめぇ何作ったんだ?」
「和食よ。貴方の苦手なね?」
「……味遠いんだよなァ」
「素材を生かした味なのよ。文句言わずに食べなさいな」
「おねーちゃんあれは?!桜は?」
「もちろんあるわよ。」
「桜ってなぁにももちゃん」
「あまくっておいしいものよ。楽しみにしててねナギ」
食べ物の話題に目をキラキラ輝かせる面々に呆れつつも、花より団子なのはいつものことで。
元々ここだと決めていた場所に飛んでシートを広げ、桜の花に包まれながらお弁当をつつく。
花見酒を所望する年長者に酒を渡すその妻の様な我がFCのお母さん。
甘いものにばかり手を伸ばそうとする手に、食事もとれ、とサンドイッチを頬張りながら注意するその恋人。
美味しいですね!そうね。なんて見つめ合って甘酸っぱい空気を醸し出している非カップルの癖に青春している歳の差の二人。
黙々と食事をとりながら上を向いたままの静かな二人。
そして、
「ん~~~!どっちもおいひい!!!おねーちゃ、これおいひい!」
「…もう、口許にお弁当ついてるわよ」
「んぅ?どこ???」
夏には七色に染まってきらきらと輝いた可愛い妹の瞳が、ちらちらと降る桜色に染まっている。
次は紅葉狩りかしら、なんて気の早いことを考えながら、またこうしてみんなで楽しみたいな、と願って。
ふわふわの頬についたお弁当を拭いながらくすくすと笑うのだった。
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