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    @zatta_nimiru

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    楽ヤマのセクピスパロ第一話(続けばいいな)

    オオカミさんと大和さん 狼は元来愛が深い生き物らしい。生涯一匹だけの番を作って、一生をその番と生きていくのだとか。その中でも、ニホンオオカミは絶滅危惧種であり、その存在は非常に貴重とされている。だからこそ、ニホンオオカミの存在は国に守られるべきであるし、純血である者は特にその種を後世に残していかねばならない。
     本来なら少しでも出生率を上げて、確実に次の狼を産むために狼は狼と番うことが一般的であり理想的とされている。しかし、この世界にいる人間の半数以上が猿であり、三割ほどしかいない斑類の中で番となる狼を探すとなると、それは至難の業だろう。幸い、狼はジャッカルや犬などの近縁種と子を成すことができる。斑類の中で、他の種と比べて比較的数が多いとされている犬神人と番うことが、現時代での狼の幸福であり"普通"とされていることなのだ。

     ……それがまぁどうして…

    「狼でも犬神人でもない俺を囲うとか馬鹿なんじゃねえの…」

     八乙女の家のベッドの上。体躯が自分の身長と同じ程はあるだろうか。美しい銀の毛とふさりと立派な尻尾で体を包んでくる"狼"に、ため息を吐きながら言葉を零した。のすりと体躯に見合った大きなマズルを俺の腹の上に乗せ、ぴるぴると耳を震わせながらこちらの言葉を聞く"魂現を晒した八乙女"に、今ここにいないすべての元凶である顔も知らぬ催眠術士を恨んだ。

    「………寮に帰りたい」


     背景親愛なるメンバーへ。
     お兄さん、魂現晒した抱かれたい男No.1の八乙女に囲われています。しばらく帰れそうにありません。早急に俺を迎えに来て下さい。


     この状況から俺を助けてくれ。




    □■□




     事の始まりはお昼頃。今日は新しく始まるドラマの打ち合わせがあり、俺は一人で打ち合わせ場所である局へと足を運んでいた。挨拶周りと台本を受け取り、あらかた撮影の日取りなどの説明を受けて、これから三日は貴重なオフだと意気揚々と帰ろうとしていた時のこと。誰かと会って捕まるのも億劫なので、人通りの無い道を歩いて外へ向かってきたときの事だ。
    「二階堂!」
    「おわっ!? ……は? 八乙女?」
     後ろからダダダダと力強く走る音が聞こえてきて、何事かと後ろを振り返ろうとすれば、聞き覚えのある声と共に背後から体を強く抱き締められた。
    「…なっ!? お、お前さん何してんの!? というか突然何なんだよ!」
    「二階堂、二階堂」
     突然過ぎてわけのわからない八乙女の行動に驚きつつも、離せ!と八乙女の腕の中で暴れまくる。いくら今この場に人がいないといっても、酒の席でも、別に酔っているわけでもないこの場でこんなところを見られたら何を言われて何を思われるか。それ以前に何故突然八乙女は俺に抱きついてきたりしたのか。ついに仕事のしすぎてご乱心でもしたのか。目を白黒とさせながら、とりあえず一旦離せと腹に回る八乙女の腕を掴む。
    「グル…」
    「は、え…なっ」
     手に力を込めた途端に八乙女の腕の力が強まって、さらに強く抱きとめられる。八乙女の喉から獣が唸るような音を聞いた瞬間。同時にぶわりと甘く斑類としての本能を誘い揺さぶるような強いフェロモンを感じて、脳を刺激するフェロモンに混乱しながらも目を見開いた。
    「おま…! っこの………お、ちつけ馬鹿!!」
    「いっ…!」
     こんな誰がいるかもわからないとこで何フェロモン出してんだ!と八乙女の頭をこぶができない程度に叩く。斑類特有のフェロモンは猿人や他の斑類を誘う。重種のフェロモンなどこんな場所で流したら何が起こるか。確認したわけではないが俺も八乙女も多分お互いに重種だから、八乙女のフェロモンに影響されてすぐに発情するようなことはないが…それでも重種の強いセックスアピールに煽られることには限りない。
    「「楽!」」
     とにかく様子のおかしい八乙女をどうにかしなければと考えていれば、八乙女が来た方向から十さんと九条が走ってきた。
    「ちょっとお二人さん!? あんたらのとこのリーダーどうなってんの!?」
    「大和くんストップ!!」
    「そのまま楽を捕まえてて!!」
    「え、あ、はい」
     八乙女からなんとか体を離そうとした瞬間に必死の形相で二人に叫ばれて、思わず敬語になって言われた通りに八乙女の腕をぎゅっと逃がさないように握った。別に二人の鋭い眼孔にビビったからではない。決して。
    「楽、こっちを見て。そう。…君は今から少しだけ眠る。安心して、僕達は君から番を盗ったりしない」
     ゆっくり目を閉じて、…一、二、……三。
     パンッと九条が手を叩く。その瞬間に、八乙女の体から力が抜けたのかぐたりと八乙女の全体重が俺にもたれ掛かってきた。
    「わ…っ」
    「っと、ごめんね大和くん。大丈夫?」
    「え、えぇ…なんとか…?」
     体勢を崩して前に倒れそうになれば、十さんが肩を支えてくれた。俺の首に顔を埋めた八乙女横目に見ると、八乙女は目を閉じてすやすやと眠っている。
    「………は?」
     最初から最後までわけがわからない。どうなってんだと九条と十さんに視線を向ければ、二人は顔を合わせたあと九条が「二階堂大和。君、今から時間はある? 仕事が無ければ少し付き合って」と聞いてきた。……強制かよ。



     それからあれよあれよと事が進み、気づけば俺は八乙女の家に連れて来られた。




    「……で、俺をここまで連れてきていったいなんなわけ?」
     九条に少し付き合ってと言われ、ぽろっとこれから三日間はオフだとこぼしてしまったあとは、何これ拉致?と思うくらいの速さでTRIGGER宅の車に詰め込まれた。さすがTRIGGER(?)と言わんばかりの早業に車の中で呆然としてしまった。そして八乙女の家の中に、寝てるくせになぜか背後にくっついて離れない八乙女ごと連れ込まれ、二人がほっと息をついたのを見てようやく我に返った。
    「説明もせずにごめんね、実は色々あって…何から話したらいいかな」
    「僕が話すよ。龍は楽が家から出ないか見てて、二階堂大和がここにいるから大丈夫だとは思うけど…一応念の為」
     また自分の名前が出たことになんなんだと頭にはてなを浮かべつつ、九条の話を黙って聞いた。

     九条から聞いた話は、簡単にまとめるとこうだ。
     まずなぜこうなるに至ったのか。今日は生放送の撮影があって、そこで催眠術を受ける機会があったんだそうだ。催眠術を受けるのは出演者の中からくじ引きで選ばれて、TRIGGERは事前にくじの候補から外されるように打ち合わせがされていたらしいが、スタッフの手違いにより八乙女の分のくじが用意されていたらしい。ここまででは特談気にする事はないだろうと思うが、話を聞き進めると、どうやら今回呼ばれていた催眠術士は猿人であるが、人間の本能を揺さぶって対象者の奥底にある欲を引き出す…という催眠術を使う者だったらしい。いや胡散臭いな。
    「で、撮影の進行を止めるわけにもいかず八乙女が催眠術を受けることになった…と」
    「そう」
    「本能…っていうのでピンとくるのは斑類としての本能だけど、猿人が斑類に催眠術をかけるなんてできるわけ? しかも重種の八乙女に」
     訝しげに事情を話す九条を見れば、九条は「できてるから今困ってる」と話を続けた。
    「その催眠術士の家は元々斑類がいた家系だったみたいで、斑類にも効果がある"おまじない"を祖母から聞いていたみたいなんだ」
    「それだけで…?」
    「僕もそれだけでかかりはしないだろうって思ったよ。……ただ、最近楽はドラマの撮影が重なってハードスケジュールで…今日の撮影を終えれば明日から数日オフの予定だったんだ」
     …つまり。催眠術士は斑類にも効果のあるおまじないとやらを使っていて、本来であればかからないだろうおまじないは、疲労が蓄積されていた八乙女には効果てきめんでバッチリかかってしまいました…と。
    「最悪のタイミングじゃん」
    「そう。カメラがまわっているときは大丈夫だったんだけど…撮影が終わった途端楽がフェロモンを抑えられなくなって楽屋で姉鷺さんが迎えにくるのを待ってたんだ」
    「あぁ…だから外に車が待機してたわけね…」
    「なんとか龍と二人で抑え込んでいたら突然楽が楽屋から飛び出して行って…追いかけたら君がいたってわけ」
     二度目の最悪のタイミングじゃんという言葉を言いそうになるのを堪えつつ、あのまま外に出していたらどうなっていたんだと背筋が震えた。その俺の様子を見ながら、九条はなおも話を続けた。

     催眠術士に催眠を解いてもらえないか連絡を取ったが、解き方としては三日経てば戻る。深く催眠術にかかった人は初めてな為、三日以上かかる事も考えられるが時間経過を待つしかない。ただ自分の思いや行動に素直になるだけだから大丈夫だろうとの返答が返ってきたそうだ。無責任だなおい。
     猿人からすれば"素直になるだけ"という認識で留められるが、斑類としては本能を制御できずにフェロモンを出してしまうというのは致命的だ。フェロモンを出したまま外になんて出てみろ、瞬時に人が集まるだろうし襲ってくる斑類も出てくるかもしれない。そうなればスキャンダルどころの騒ぎじゃなくなる。簡潔に言うと地獄の完成だ。
    「で、本題はここからなんだけど」
     光景を想像してしまって顔が引き攣る俺に対し、九条はまっすぐにこちらを見ながら言葉を続ける。九条が話した本題は、理性を失っている八乙女は俺を探して外に出てしまう事が考えられるため、できれば俺にこのまま八乙女の家で過ごして八乙女の催眠の効果が切れるまでそばにいてほしい…という内容だった。
     今までの話はまぁ色々催眠術士に思う所はあるが経緯の理解はできた。けど最後が理解できない。いや、なんで俺?
    「TRIGGERの八乙女楽がフェロモン垂れ流して街を歩いてるなんて有名人の散歩程度の騒ぎじゃすまないでしょ。それに、楽は斑類としてもその種は希少だ。あってほしくはないけど、他の斑類の人に襲われることだって十分に有り得る」
    「いや、まぁ…それは理解できるけどさ…だからってなんで俺…?」
    「天の言うとおりなんだ、ごめんね。楽も大和くんの側が一番落ち着けるみたいだから、楽が本能を制御できるようになるまででいいから楽の側にいてあげてくれないかな…?」
    「えぇ…」
    「今度好きなお酒沢山奢るよ」
    「やります」
    「ありがとう!」
    「あっ」
     十さんのほんわかした雰囲気と酒に、つい流されて返事を返してしまった。やっちまったと頭を抱えて下を向けば、自分の腹にまわるふさりとした尻尾を見てビクッと体が跳ねそうになった。そういえば、いつのまにか背後の重みが消えている。
    「ワゥ」
    「おッ…!?!???」
     恐る恐る後ろを振り返れば、体のでかい白銀の狼が体を横たえながら俺の顔を見上げていた。口から飛び出そうになった心臓をなんとか飲み込んで、狼から距離を取ろうとすれば狼に尻尾で動きを遮られた。
    「つっつつっつっ!」
    「わ〜、楽の魂現って凄くかっこいいね!」
     十さんに救助を求めて視線をやれば、十さんから暢気な声が聞こえてきた。目がキラキラしててはしゃぎ方が子供みた……いやそうじゃなくて!
    「八乙女!?」
    「ワゥッ」
     この狼が!? と言わんばかりに八乙女の名前を呼ぶと、返事をするように狼が鳴いた。種類まではわからないが、日本において狼は絶滅危惧種とも言われるほどに希少だ。それも毛並みはまじりっけのない綺麗な純白。
    「楽。君、今人としての理性はあるの?」
     九条が八乙女をじっと見ながらそう問えば、八乙女(狼)はこくりと頷きを返した。続けて投げかけた「人に戻れないか」という問いには困ったように唸って首を横に振る。
    「…というわけで、楽をこの状態のまま放ってはおけないから大和くんには楽のそばにいてあげてほしいんだ」
     唸る八乙女の姿を見つつ、十さんから言葉を投げかけられる。…いや、まぁ事情は把握したけど。
    「俺より十さんとか九条がいた方がいいんじゃないですか? 俺がいた方が八乙女の気が休まらないでしょ」
    「ウゥッ」
    「うゎっ……ちょ、おまえさんが八乙女ってことはわかったけど牙見せられると流石にびっくりする」
     突然牙を見せて唸った八乙女にビビ…いや、怖……いや、びっくりしつつ話せば、八乙女は床に伏せてふてくされた。……なんか、叱られた犬っぽい。まぁ狼は犬神人だからあってるんだけど。
    「うーん…楽はどうしても大和くんと離れたくないみたいなんだよね。俺が大和くんに触ろうとするだけで威嚇されちゃうかも。今は特に本能の抑制が緩んでる状態みたいだから…」
    「そんなことはないと思いますけど…」
     なんとなくぽんぽんと毛並みの良い八乙女の頭を撫でて言えば、八乙女は気持ちよさそうに目を細めた。
    「まぁ、こればっかりは見たほうが早いと思うから…」
     困ったようにそう言いながら、十さんはゆっくりと手を俺へと近付ける。
    「ウゥ……」
     十さんが俺に手を伸ばせば、噛み付いてきそうなほど……とまではいかないが、魂現を晒した八乙女が不満気な顔をして唸った。ふさふさの尻尾を振り、十さんの手の行く手を阻むように俺と十さんの間を何度も尻尾が上下する。
    「ね?」
    「おい八乙女…」
     十さんの言っている通りだと言わんばかりに尻尾を振られ、退けさせようと尻尾に手を伸ばせばふさりと尻尾は手のひらに乗ってきた。……いや、どういう意思表示なんだよ。
     置かれるがままに八乙女の尻尾をわしゃわしゃと撫でれば、くふりと八乙女が満足気に鼻を鳴らした。
    「じゃあ、楽の催眠の効果が切れるまでそばにいてあげて」
    「……んん…まぁ、わかりましたけど…」
    「それにきみ、楽の番なんでしょ? 魂現を見たことがないのは意外だったけど……楽も番の側が一番安心できるだろうし療養に専念できると思うから」
    「は?」
     九条から初耳すぎる言葉を聞いて言葉を失う。言葉の意味を理解しようとぽかんと呆けていれば、九条と十さんは「これから仕事があるから」と言って早々に部屋から出て行ってしまった。
    「…………………は??」
     前提として言っておくが、俺と八乙女は別に付き合っていない。恋人でもなければ、斑類特有の"番"という関係でもない。九条が言った"番"という言葉を脳内で検索して、やはり一つしか思い浮かばない意味を考えて呆然としながら声を漏らした。
     一瞬夢かと思ったが、八乙女の尻尾を握る手に力が入ってしまい少しだけ痛かったようで、八乙女にかぷりと腕を甘噛みされた。肌に当たる牙の感覚がやけにリアルだったから、多分これ夢じゃない。
    「…勘弁してくれ……」
     二人(一人と一匹?)で残された八乙女の部屋に、ぽつりと零した独り言と八乙女のワフッという鳴き声だけが虚しく響く。携帯を取り出してミツ達に連絡しようとすれば、八乙女の尻尾で携帯を弾かれて部屋の隅っこに飛んでった。


     …九条に八乙女の意識を落とした方法詳しく聞いとけばよかったな。今更ながら請け負った事をほんのちょっとだけ後悔した。
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