Bon appétit 宿儺様の舌は肥えている。
巌のように大きな体格に相応な、という意味じゃなく
「不味い」
食に並々ならぬこだわりがあって、良し悪し好き嫌いがハッキリしてるってこと。
本日宿儺様に召し上がって頂いたお夜食は、五香粉が香るダージーパイ。しっかりと下味をつけたムネ肉に衣をつけ香ばしくカリッと揚げたものだ。それと、スネ肉のソルロンタン。肉と骨を煮込んで作るシンプルなスープ料理。太い脛を骨ごとぶつ切りにし、二時間ほど煮詰めたから骨髄まで煮出され、スープはとろりと白濁している。筋肉のなかでも特に発達していて脂肪が殆どなく引き締まっている赤身はじっくり煮込むことでホロホロにした。けれど──
「好みじゃない味だった? それとも火入れが失敗してる…?」
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