率直に言えば、そのとき剣城の頭の中にあったのは、一体何が正解なんだという緊張だった。
「なあ剣城、わかった? ここの解き方」
「……さっきの例題と基本は同じだ。まず角度を書き出して」
シャーペンの先で図形を指し示す。えーと、と目を凝らす天馬を見ながら、そのペースに合わせて説明を重ねていく。
この解法ならわかる。その前に聞かれた問題もわかった。おそらく今やっている範囲の問題なら、剣城は大体難なく解くことができるだろう。
わからないのはただ、隣にいるこの男が──恋人、という間柄になった彼が、今何を考えているかである。
剣城が天馬と付き合うことになったのは、およそ二週間前のことだった。
元々ひそかに想いを抱いてはいたが、これまで築き上げてきた関係を壊したくなくて何も言えなかった。まさかその本人に告白されるなど剣城は思ってもいなかったし、簡単にとはいかなかったが、紆余曲折の末ちゃんと互いの気持ちを伝え合うことができたのだ。
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