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    こみや

    @komiya538

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    1/26 スタゼノワンドロ書き直すので供養。導入長過ぎてプラトニックさえもいかない(笑)

    1/23ワンドロ「プラトニック」「肉体関係」「構わないよ」 僕は正直言って男女のあれこれには嫌悪感がある。両親が「男女のことや性的なことは低俗なもので、優秀なあなたはそんなものに関わってはならない」と狂った優しさで僕の目や耳を塞いだからだ。
     五歳頃までは両親をただ信じていたが、十になる頃には子どもがどうやって生まれてくるのかくらい知るようになる。僕が生まれたことがイコール低俗なことなのだと教えられたように感じて、両親に不信感と嫌悪感を覚えたのは当然のことだった。そして三つ子の魂云々ではないが、男女関係や性的なものへの嫌悪感が残ったまま十二歳、思春期の現在に至ってしまっていた。
     
    「ゼノ、帰ろーぜ!!」
     廊下には下校のチャイムが鳴り響いていた。他者へ冷たい態度を取る上に科学にばかり時間を使うため、僕にはほぼ友達がいない。唯一友達と言えるのは今声をかけてくれた彼、スタンリー・スナイダーだけだ。二年前に引っ越してきた時、学期末テストを全て満点でクリアした。先生が大層に褒めてくれて他の生徒が(何だあいつ)という目を向ける中で「あんたすげえ頭いーのな」と笑いながら声をかけてくれたのが最初の出会いだった。
     彼はとても親しくしてくれるのだが、僕と違ってスポーツマンで社交的なので、僕なんか構っていて楽しいのだろうか、とよく思ってしまう。タイプの違う人間が物珍しいのだろうか、それとも僕の作業が面白いのだろうか。一緒に帰宅してくれる時は僕の自宅に寄って、実験デスクの上をじっと見つめてはそこに居てくれる。それともいつまでも彼以外に親しい友人が増えない一人ぼっちの僕に気を遣ってくれているのだろうか。どちらにせよ彼はとても優しくて賢くて誰もが憧れるようなできた人物だ。
     また、彼は性格だけでなく容姿も整っていて、ニカッと笑いかけてくれる時やスポーツをしている時など、女子じゃなくても惚れそうなくらいハンサムでかっこいい。今ではもう慣れたが、実験の際、その長い睫毛に縁取られた視線を注がれた手元が緊張で震えそうになっていたことを思いだす。
     
     帰路を歩きながらスタンリーは素手の両手をゴシゴシと擦り合わせている。手袋を忘れたと笑っていた。
    「ゼノさ、手ぇ繋いでもい? 寒くってさ」
    「えっ」
     無意識に軽く叫んだ。季節はまだ冬の只中で、吐いた息が凍りそうなほど外は寒い。
    「……じゃあ、手袋を貸してあげるよ」
     手袋を片方外して、もう一つを外そうとした時。
    「ゼノん手がいい」
     外した方の素手を、ぐいっとスタンリーに掴まれる。
    「ひえっ」
     触れられた肌の感触に驚いて咄嗟に振り払ってしまった。嫌悪感というよりどちらかと言うと恐怖感の方が強かった。振り払われたまま固まっている彼の手が寂しげに宙に浮いている。
    「ご、ごめん、スタンリー……僕……ごめんなさい……!!」
     僕は彼の顔を見ることができず、駆けて逃げ出していた。差し出そうとしていた手袋を落としたことにも気づかず、家まで一気に走った。冷たい空気を慣れない早さで肺に入れたせいで胸がきゅうと痛い。ドアを勢いよく開けて玄関に飛び込んで、息を荒げてはゲホゲホとむせる。
    「おかえり、ゼノどうしたの?」
     取り乱して帰宅した僕に気づいた母親が驚いて出迎える。
    ――僕をこんなにしたのは誰だ。唯一の友達に指一本触れることさえできない、こんな。
     母親を睨みつけ、なんでもないよ、と吐き捨てて乱暴に階段を登り僕は自室へと篭った。鞄を床に投げ、自身をベッドに放り投げて体を丸くして縮める。
     「手ぇ繋いでいい?」「ゼノん手がいい」太陽のようなその手を差し出して明るく誘ってくれる彼の声。走ったのもあってか、ドッドッと心臓が大きな音を立てている。
     彼と僕は男女ではないし性的な触れ合いをしたわけでもない。しかし僕の中で幼い頃から植え付けられた思想がエスカレートしていて、人に触れること自体がいつの間にかタブー化していたようだ。深呼吸をしてもなかなか心臓は静まらない。「寒くってさ」と言う割には自分よりも暖かかった彼の手。親以外の、人のぬくもり。柔らかい、血の通った人の手が、肌が、なぜか怖く感じていた。

     僕も彼みたいな人間になれたら良かった。でも僕は僕でしかない。限りあるリソースを人との交流に割くよりも科学に向けたのは僕自身の意志だ。一人も友人がいないのは寂しいことかも知れないけれど、それも僕の選んだことだ。
     たった二年という短い時間だったけれど、スタンリーと過ごせた時間は楽しかった。それだけでいい。明日からはまた一人ぼっちだろうけれど、彼と出会う前に戻ったと思えばいい。それだけのことだ。

     次の日、僕が落とした手袋をすいと差し出しながら彼が話しかけてきた。
    「おはよ、ゼノ。昨日はごめん」
    「おはよう……なぜ君が謝る……?」
    「軽いノリで手え繋ぐなんて言っちまって、びっくりさせたよな」
     コミュニケーションの方法の違いだと彼は解釈したらしい。明らかに僕は他者とスキンシップをするキャラではないから。
    「もうそういうこと言わねえから。また一緒に居てい?」
     僕は目を丸くして彼を見つめた。
    ――僕こそまだ君と一緒に居ていいのかい……?
     そう思いこそすれ、甘えた言葉をうまく口にできない。
    「……君は僕と居て面白いかい?」
    「面白えよ。だからいつも一緒にいんじゃん」
     素直な彼が眩しい。やはりキラキラと輝く太陽のようだ。
    「分かった、ありがとう……」
     それ以上今は言葉にできなかった。帰るまでに頭の中をまとめよう、失うと思っていた友人を失わなくて済んだこと、彼に話さなくてはならないこと。

    ーーーーー

    「ねえスタンリー、君は僕に触れたい?」
    「え、改めてそう言われっと……」
    「ごめん、変なこと聞いて。言い方が悪かった」
    「……俺、ゼノのこと好きなんよ」
    「……すき、とは」
    「だから……キスとかしてえ好きってこと」
    「キス」
    「あああああ聞かなかったことにしてゼノ」
    「いやそれは無理だろう」
    「だよなぁ」

    ーーーーー

    「君となら……構わないよ」
     
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    こみや

    MOURNING1/26 スタゼノワンドロ書き直すので供養。導入長過ぎてプラトニックさえもいかない(笑)
    1/23ワンドロ「プラトニック」「肉体関係」「構わないよ」 僕は正直言って男女のあれこれには嫌悪感がある。両親が「男女のことや性的なことは低俗なもので、優秀なあなたはそんなものに関わってはならない」と狂った優しさで僕の目や耳を塞いだからだ。
     五歳頃までは両親をただ信じていたが、十になる頃には子どもがどうやって生まれてくるのかくらい知るようになる。僕が生まれたことがイコール低俗なことなのだと教えられたように感じて、両親に不信感と嫌悪感を覚えたのは当然のことだった。そして三つ子の魂云々ではないが、男女関係や性的なものへの嫌悪感が残ったまま十二歳、思春期の現在に至ってしまっていた。
     
    「ゼノ、帰ろーぜ!!」
     廊下には下校のチャイムが鳴り響いていた。他者へ冷たい態度を取る上に科学にばかり時間を使うため、僕にはほぼ友達がいない。唯一友達と言えるのは今声をかけてくれた彼、スタンリー・スナイダーだけだ。二年前に引っ越してきた時、学期末テストを全て満点でクリアした。先生が大層に褒めてくれて他の生徒が(何だあいつ)という目を向ける中で「あんたすげえ頭いーのな」と笑いながら声をかけてくれたのが最初の出会いだった。
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