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    こみや

    @komiya538

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    こみや

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    スタゼノワンドロワンライ「花束」「甘い」のバレンタイン用だったけど詰まった供養。

    #スタゼノ
    stazeno

     ゼノはこの部屋を包む気体に意識が溶けてしまいそうだと思った。濃厚な薔薇の香りとチョコレートの匂いが混ざって、つけすぎた香水のように甘ったるく脳血管の端までその香りにひたされているような気分になる。
     大人の男二人で座ると窮屈なソファに、さらに窮屈なことにみっしりと横たわっている。ゼノは後ろからスタンリーにしっかりと抱きしめられていて身動きが取れずにいた。

     二月十四日バレンタインデー。二人でバラを買ってきて、二人でチョコと料理を作り楽しく食事をとって、デザートにそのチョコを食べながら映画を観て、夜はベッドで一緒に、という過ごし方がいつの間にか毎年恒例になっていた。
     今年も途中までは例年通りだったのだが、チョコに入れようとしていたブランデーを飲みたいとスタンリーが言い出した。ちょうどチョコレートの湯煎をしていたところだったので、ゼノは温めてスタンリーに差し出した。そうしたら思いの外酔いがまわったようで、スタンリーはゼノを引っ掴んでソファになだれ込んでしまったのだった。

    「スタン……そろそろ離せないかい」
     ブランデーをあげるだけのつもりだったゼノは、湯煎にかけっぱなしにしてしまったチョコはもうダメだな、と少し表情を曇らせた。
    「……寝てるのかい?」
     ゼノは抜け出そうにもスタンリーの手と足が強く巻き付いていて、全く動かせない。耳の後ろやうなじに彼の吐息が規則的にかかり、腰にはゆるく存在感を示す彼のものが触れていて気になって仕方がなかった。
    「……寝てねえよ」
     少し遅れてスタンリーの声が響き、耳元で囁かれたゼノが身じろいだ。
    「ん……なら、離してくれないかな……チョコを作り直さなけれ、」
     最後の一言をゼノは言わせてもらえなかった。頭の下から回されていた手に顎をとられ、斜め上をぐっと向かされて後ろからキスをされる。
    「ふ……っ……」
     熱い吐息と唇。濃いアルコールの香りにゼノも酔いそうだと思った。どうしたと言うのだろう。いつもはゼノが困ることをしないスタンリーが今日はもう二回もゼノを困らせている。
    「ゼノ、俺のこと好き?」
    「え……」
    「聞かせて」
     ぎゅう、と抱きしめられる腕に力がこもる。後ろから抱きしめられているため顔が見えない。
    「らしくないね、スタン」
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    こみや

    MOURNING1/26 スタゼノワンドロ書き直すので供養。導入長過ぎてプラトニックさえもいかない(笑)
    1/23ワンドロ「プラトニック」「肉体関係」「構わないよ」 僕は正直言って男女のあれこれには嫌悪感がある。両親が「男女のことや性的なことは低俗なもので、優秀なあなたはそんなものに関わってはならない」と狂った優しさで僕の目や耳を塞いだからだ。
     五歳頃までは両親をただ信じていたが、十になる頃には子どもがどうやって生まれてくるのかくらい知るようになる。僕が生まれたことがイコール低俗なことなのだと教えられたように感じて、両親に不信感と嫌悪感を覚えたのは当然のことだった。そして三つ子の魂云々ではないが、男女関係や性的なものへの嫌悪感が残ったまま十二歳、思春期の現在に至ってしまっていた。
     
    「ゼノ、帰ろーぜ!!」
     廊下には下校のチャイムが鳴り響いていた。他者へ冷たい態度を取る上に科学にばかり時間を使うため、僕にはほぼ友達がいない。唯一友達と言えるのは今声をかけてくれた彼、スタンリー・スナイダーだけだ。二年前に引っ越してきた時、学期末テストを全て満点でクリアした。先生が大層に褒めてくれて他の生徒が(何だあいつ)という目を向ける中で「あんたすげえ頭いーのな」と笑いながら声をかけてくれたのが最初の出会いだった。
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