現代鬼殺隊 弐『はい、これ皆の分の日輪刀、届いたばっかだよ』
この前の会議から二週間程経った今日、隊服と日輪刀が届いた、刀鍛冶の方々が前の刀と出来るだけ同じ物を作ってくれたからか、どこか手に馴染みがある
『わ、前と同じ色になった』
「あら、綺麗な薄浅葱ですね」
薄浅葱とは薄い翡翠色とでも言おうかな、他の皆も前世と同じ色に変わったらしい
「へぇ、隊服も中々良いじゃねぇか」
隊服は黒パーカー、シンプルだけど背には皆違う刺繍がしてある
「俺は音符だな」
「私は蝶々ですね」
『これは雪の結晶かな』
「竜巻かァ?これ」
「太陽ですね!」
「うわ、稲妻だ」
「見てみろ!俺様は猪だぜ!」
「…綺麗な花…」
お互いの区別が付くように縫ってくれたそうだ、にしても上手だな…
『早速今夜から任務があるんだけど、お館様から皆にこれだけは守ってほしいルールを聞いてるの』
「ルール」
ルールをお館様が作った理由、昔と違って鬼殺隊一筋で生きている訳ではなく、教師、生徒としての顔もあるから
壱、登校してから鬼が出始める夕刻まではこまめに仮眠を取る
弐、親類には事情を説明する
参、親類間で問題が生じた場合は任務を休むことが可能
肆、万が一警察等が追ってきた場合は全鬼殺隊士の家は借りの駐屯所となる場合がある
伍、任務で怪我した場合は学校を休むことが可能
陸、隊服に着替える際は五時以降会議室、または会議室奥の書庫を使用する
『という感じ』
「了解」
宇髄さん、私は第一家族と住んでないから話す人がいないので即家が借駐屯所に決定
残りの皆も家族も記憶アリらしいから家族に話すことを戸惑ってはいなかった
『よーし、じゃ、今日は授業をして、または受けて五時にはここに集合ね』
「御意」
先生の顔と鬼殺隊の顔を使い分ける、まだ分からないことは多いけど昔と大差ない筈、変わっていないことは一つ
誰かの未来を命を賭して守ること
キーンコーンカーンコーン
午前最後を告げるチャイムが鳴る、持っていたチョークを置いて生徒達の方を向いた
『はい、じゃあ終わろうか、来週は小テストあるからね』
「きりーつ」
昼食前で無気力な子も多い中少し眠そうな学級委員が号令をかける
「気をつけ、有難うございました」
「「「有難うございました!」」」
教材とノート、PCを持って教室を出る、昼食は早めに食べて仮眠を取りたいから歩調は自然と速くなっていた
『ふぃ…』
「ブホォォッwwwなんだよ今の音」
『気を抜いただけ!いちいち五月蝿いなぁ!』
本当に何で横の席は宇髄先生なんだろう悉くいじってくる
「宇髄ィ、細雪にいちいちちょっかい出すんじゃねェ、うるせェんだよ」
『ありがと、不死川先生』
宇髄さんの後ろ、つまり私の左斜め後ろにいるのが不死川先生
「今日も大変ねぇ細雪先生」
『何とか言ってやってくださいこの派手教師に』
反対の右隣は生物担当の胡蝶カナエ先生、おおらかで優しい美人な先生だからとにかくモテる、てか私も好きだし尊敬してる
『あ、伊黒先生、ちよっと良いですか』
「なんだ」
私の真後ろにいるのが科学担当の伊黒小芭内先生、仲は良い方
『この前のカンニング君の件です』
「ああ、あのゴミクズ野郎か」
科学の小テスト中にカンニングしてた子がいたらしく、どんな極刑に処してやろうかとずっと考えているらしい
『新作のペットボトルロケット作ったんで試しに使って下さい』
「何が新しくなったんだ?」
『秒速3mに改造したのと、物体にぶつかった瞬間蛍光色のペイント弾が破裂しますね』
「成程、痛みを与えた後に恥ずかしめまでさせると、上出来だ使わせてもらおう」
あら、良かったらしい、まあ自信作だからね(?)
「それは流石に酷くないだろうか!」
職員室の端から端まで聞こえるであろう大声で開口一番に反対意見を出したのはカナエ先生の後ろの席にいる歴史担当の煉獄先生
前世炎柱で、私の恋人だった人
「いや酷くなどない、俺ならペイント弾ではなく熱湯にしていただろうな」
『そっちはどうかと思いますよ』
「細雪先生も何を作っているんだ!」
『え〜、大人になったからって子供心を忘れちゃ駄目でしょう?』
我ながら何を言ってるんだろう、でも割とあってそうなこと言ってるよ?楽しんだ方が良いもん
「もう少しまともな方向に頭脳を使ったら良いと思うんだが」
『え?私ってそんな賢くないですよ?ニホンゴムズカシイデスワカラナイ』
「そうか?」
首を傾げて疑問符を浮かべる煉獄先生が可愛い、ほんとに変わってない
「おい煉獄、コイツに騙されんな」
『手重い!どけて下さいって!』
私の頭におもいっきり手を乗せながら煉獄先生に語りだす、どけて?
「お前もさ聞いたことねぇ?
"キメツ中無敗の漆黒の龍"」
「む?聞いたことはあるな」
「コイツ、細雪凜音」
『五月蝿いっっ!』
確かに呼ばれてた…中学校時代に、全科目満点、実技満点、体育祭選抜優勝、バスケの世界大会で優勝とか合ったから、まあ…前世柱だとね?今世ではすげぇ奴扱いされるから
「無敗とは…何の?」
『多分バスケの大会…あと』
「喧嘩だな」
『お黙り?』
「よもや!女番長とやらか!」
『違う違う誤解!完全なる誤解!』
要は私に男子生徒が惚れる↓その男子生徒が好きだった女子生徒悋気↓呼び出しくらう↓不良に頼んで私をボコボコにしたい↓私は強かった↓結果無傷の私がフルボッコされた不良を保健室に運ぶ
『というね?』
「成程!」
『まあ伝説作りまくってたからね』
「ハッハッハッハ!にしても細雪先生らしいな!保健室に運ぶとは!」
『え?そうですか?』
「自分に喧嘩を売ってきた者でも邪険には扱わない、俺は素晴らしいと思うぞ!」
…やっぱり、あの頃の煉獄さんだ、素直に人の良い所を褒める、懐かしくて温かいな
『…有難うございます』
素っ気なくなってごめんなさい、でも嫌だった訳じゃない、寧ろ嬉しかったから
前世とか今世とか関係ないよね
私は"煉獄杏寿郎"が好きなんだ