薄明、自信、ダブルベッド。 喉が渇く。
運動しすぎて汗をかいたときだとか、地獄の業火のような炎に晒されたときだとか、そんな遠い昔を思い出した。遠いと言っても、まだ五年も経っていない。振り返ればすぐそこにある過去の話だ。十年以上前、実家で直哉のサンドバッグにされていた頃だって喉は渇いていたはずなのに、それよりもたった一瞬の敗北を思い返す。
おかしなものだ。十年以上も足蹴にされていたことは記憶の遥か彼方に飛んでしまったのに、一分にも満たない戦いのことばかりが思い返される。最初は夏油傑、次は漏瑚と名乗る特級呪霊。そのどちらも真希に圧倒的な敗北を刻み付けた。思い返すと悔しくて悔しくて仕方ない。
水でも飲んでこようと思って起き上がろうとしたら、ぐっと手首を掴まれた。
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