バニーガールVS逆バニーの遊了 真っ白な部屋について、遊作が抱く感情は恐怖だ。置かれたVRゴーグル。強制的に行われるデュエルの成績で変わる食事。敗北に付随する容赦のない電撃。狭い部屋には自分の他に数字しかなく、寂しいという感情さえいつしか失ってしまった。
今だって、似たような部屋は怖い。
もう十年以上前のことだと言うのに忘れられない。半年間で遊作の身体に与えられた恐怖は、恐らく一生消えやしないだろう。例外なのはスペクターくらいで、恐らく尊や美優だって真っ白な部屋に入れられれば何らかの発作を起こすはずだ。
それでも今、遊作が正気を保っていられるのは――ひとえに、目の前にある安っぽい電光掲示板のおかげだった。古いラーメン屋の看板などで「激安! ラーメン! 大盛り!」と書かれているような旧式の電光掲示板は、チカチカと眩しい光を放っている。そこに記載された文字列は十六進数でもイグニス・アルゴリズムでもない、至って普通の日本語だ。
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