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    ふつきのとー

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    ふつきのとー

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    🔧🆕(にょ)

    姉と妹のある日の会話。
    電話で「おまえ」と言われた後、よこかわに行く前の話。
    シリーズ化しちゃいました。
    私だけが滅茶苦茶楽しいやつです。
    めっちゃ楽しいです。

    ドラマは参考程度に 最近妹の様子がおかしい。
     先日、いつものルーティンである彼氏君との電話の後からだ。
     なんで言い切れるかというと、電話終了後に部屋から出て来た我が妹は、明らかに挙動不審だったから。
     スマットを手に持ったまま、意味もなく台所を右往左往して。それまであまり飲んでいない牛乳をコップ一杯飲んでみたり、お風呂の後も自然乾燥が多かったのにドライヤーを使い出してみたり、興味がないと観ることの無かった恋愛ドラマを一緒に視聴したり、私をじっと睨みつけているから何事かと思えば、その後自分の身体を見下ろして肩を落としてたり。
     これは何か言われたな。
     ちなみに正式に彼を「恋人」と紹介されてはいない。まだまだお子様な二人は仲の良い友達の延長線のような付き合いなのだろう。やれやれ、と微笑ましく思っていたら

    「あゆ姉…男子ってさ、やっぱり大きい方がいいのかな…」

     夕飯後、お母さんが洗い物をしていてる間に姉妹でソファーに並んで座り、何となくテレビをザッピングしてた折に、クッションを胸に抱えたシン君にそう上目遣いで訊かれた。
     ちょっと待って。
     まだ男の子のような恰好を好んで着ている、スカート率が月に数回程度の女子力しか持たない彼女からの、いろいろと飛び越えた質問。私は口に運んでいたポテトチップスを落としてしまった。

    「シン君?なんて?」
    「…本能的にそういう方が好まれやすいって、読んだ」

     何があったの。何を言われたの。というか、この子は今、何を調べてるの。
     気になったことはとことん調べる性質であることは昔から解っている。事実を確かめるためなら、どんな遠方だろうと宇宙だろうと飛んでいく行動力も嫌というほど知っている。でも『世界の謎』一筋な思考回路からどう跳んだら『男子に好まれる女子の傾向』の調査になるのか。
     理由など一つしか思いつかない。
     ちょっと待って、そこまで進んでるの? 進もうとしてるの? これは姉として注意するべき? それとも応援するべき? いやいやいや、待って。早とちりはダメよ。大きい方がいいのかなと聞かれただけだから。もしかしたら今後のことを色々やっと考えるようになれたのかもしれない。もう中学生になるのだし、オカルト一筋ではさすがにまずいと気を使い出したとか。それはとても良い傾向だ。だったら、

    「そ、そうね…」
     
     姉としてびしっと女子力を示そうとしたけども…ダメだ!私の方もそう言った情報を持ち合わせていなかった!産まれてから一時もボーイフレンドなんてできたことないし!
     ちらりと隣を見れば、お父さんによく似た蒼い瞳に期待を込めて私の次の返答を待っている。変なプレッシャーを掛けられて脳が焦り出す。待って待って。ええと、最近観たドラマだとええと…

    「そ、その人が好きなら、別に大きさなんて関係ないんじゃないかな…ははは…」
    「この前のドラマだと、お前が欲しいって言って来た男がおっぱい大きな女に翻弄されてたよね」
    「あれはそういう役なの!」
    「ドラマの内容じゃなくて、男の人は魅力的なスタイルの女の人に靡きやすいって共通認識があるから、あのネタが入れ込まれたんだって思って」
    「何でそんな冷静な視点で恋愛ドラマを見てるのよ…」
     
     私は膝の上に落としたポテトチップスを拾って今度こそ口に入れる。軽い歯ごたえの後に感じる塩味を舌の上で転がしながら、

    「どうなのかな…。でも小さいほうが好きって人もいるらしいし。やっぱり人によるんじゃないの?」

     無難で申し訳ないが、そうとしか答えらない。確かに世間が思う魅力的なスタイル、コンビニの雑誌コーナーでよく並んでいるのをそうだとするならば、の方がモテる傾向があるのは確かだと思う。でも、この子は不特定多数に好かれたいのではなく、特定の相手にだけ気に入られたいとしているのならば

    「聞いてみるしかないんじゃない?」

     誰に、とは言わなかったけども、妹も特に何も言い返してこなかった。今、頭の中で私の答えと自分の考えを纏めているところなのだろう。じっとテレビではない方向を見つめている。その噤んだ唇が、なんとなく可愛いなぁと思ってしまった。こんな一生懸命に悩める相手がいることに憧れる。

    「…大きい方がいいって言われたらどうしよう」
    「待っててって言うしかないじゃないの。ていうか、そんなこと本当に言う男は断ち切りなさい!」
    「アブトはそんなんじゃない!」
    「だったらいいでしょ。ほらこの話おしまい!私これから見たいドラマがあるから」

     やっぱり彼のことか、と思いつつ、だんだん面倒くさくなってきた私は思い切り興味ない振りをしてパタパタと手を振ってやった。
     また一緒にドラマを観るかもと思ったが、彼女はそのまま相棒のスマットと一緒に自室へ引き下がっていく。
     その後姿をなんとなく見送ってから、リモコンでチャンネルを変えた。
     …その後見たドラマの内容は、何故だか登場する俳優すべてがうさん臭く見えてしまい、あんまり頭に入ってこなかった。
     次回クールでは推理ドラマを観ることにしよう。
     脚色された恋愛なんて参考になるはずもない。
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