フォーユー!「前にアクセサリーが欲しいって言ってただろ。ちょうど君に似合いそうだと思ったのを見かけたから買ってみたんだ。さすがに薬指だと重いだろ。だから人差し指に良さそうなサイズにしたんだが……どうだろう? 合わなければ交換もできると店とは話してるんだが」
「すげー嬉しいっス、けど……高いんじゃ」
「いや、普段使いにできる程度の金額だよ」
仗助の左手を取った恋人は、迷いなく指輪を着けさせてくれる。迂闊なことを言うと傷つけるかもしれない。そう思ってとりあえず笑顔で応対する。人差し指にぴったり収まった指輪はシンプルで、普段使いしやすそうだ。しかし、仗助はその刻印からどこのブランドのものかわかっていた。
「これ、誕生日プレゼントとかそーいうやつっスか……? 今年のは終わったし、来年分のとか」
「恋人にプレゼントするのに何も理由なんて必要ないだろう」
さも当然という風に伝えられ、仗助は言葉に詰まった。その通りなのかもしれないが、ハイブランドの指輪をなんでもない時に贈られると気後れしてしまう。仗助はまだ高校生なのだ。
「んー、でもさ……露伴。例えばうちのお袋とかは俺がブルガリの指輪を着けてたら、それどうしたんだって詰めてくると思うんスよ。嬉しいけど、あんま高いものを頻繁にもらうと困るかも」
「……確かに、それは君の言う通りだな。迂闊だった」
しょんぼりと俯いた露伴に胸が痛くなる。こんな顔をさせたいわけではないのだ。基本的に仗助も嬉しい。はっきりとブランド物は好きだし、露伴はセンスもあり仗助の好みのものを見つけてくれる。だが、このままではプレゼントで部屋が埋まってしまいそうだ。
「ぼく、いつもそうなんだ。こうやって色々と押し付けて重いって振られちまう。この指輪も気をつけたつもりだったのに」
「すげー嬉しいっスよ、ほんと嬉しい。むしろ重いのは大歓迎なんですけど、物よりは気持ちで重いほうが嬉しいつーか」
「気持ちで?」
露伴は好意の伝え方が上手くない。その一端がプレゼントなのだろう。
「そう、毎日電話してくれるとか……あ、これは会った日でもっスね。女の子と話しちゃ駄目とか怒ってくれるとか、デートしてる時とかずっとくっついててくれるとか、好きって1日百回言ってくれるとか、俺はめちゃくちゃ嬉しいっス」
仗助の言葉を聞いて、露伴は目をパチパチ瞬かせている。そしてぽつりと呟いた。
「それは重すぎるだろ」
全部、俺が過去にやったことなんだけどなー。その一言を仗助はどうにか飲み込んだ。