Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    nemurinekomaru

    @nemurinekomaru

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 11

    nemurinekomaru

    ☆quiet follow

    ロナドラ♀里帰り出産の続きです。
    この章から三人称視点です。
    ギリギリさんとの友情を深めている〇です。

    #ロナドラ
    lonadora
    #女体化
    feminization

     新横浜からドラルクが出て行って、そろそろ1年という時間が経った。朝目が覚めたら棺桶のなかはもぬけの殻となっており、何の書置きもない状態で出て行ってしまったのだと、日に日に草臥れながら語るロナルドに周囲の人間はついに痴話喧嘩のひとつもして出ていかれたのかと囃し立てたが、ロナルドはただ自分が悪いのだと言うばかりであったので、これはもしかしたらとうとうロナルドがドラルクに告白して、びっくりして父親とかのもとに逃げられてしまったのではないか? という憶測がギルドのなかで飛び交っていった。
     他人の恋路なんてものは最高の娯楽であると相場が決まっていると退治人相手に吸血鬼たちは笑う。人間に分かりやすく言い換えるのなら、田舎で退屈している親戚や老人からお見合いや結婚を勧めてきては、孫はまだかとせっつくのと一緒であると、野球拳大好きによって解説された。三男の下半身透明を息子のように育てきり、現在では野球拳という明らかに日本に来てから目覚めたであろう性癖によって頭ポンチになっているのだから、説得力が違う。
     人間社会に帰化したり、そうでなくとも畏怖欲を満たしたいからとみだりに人間社会へ介入せずに隣人としての線引きは守ったり、自身の目の届く範囲であるのなら、吸血行為による殺人は起こらないように目を光らせたり、かつて巷を騒がせた辻斬りのような吸血鬼は基本的に人間たちの法に任せるようにするなど、人間が想像するステレオタイプのドラルクの父であるドラウスのような古き血と呼ばれる吸血鬼たちは人間と敵対するよりも隣人であることを選んでいる。
     吸血鬼は貴族然とした細身の男であるという偏見ともいえるイメージも、あながち間違いではないのだ。人間の血を主食としているからこそ、人間を食い散らかして絶滅させるなんて考えは短絡的で、これから生まれてくる自分たちの血族が飢えてしまわないように人間社会の発展こそが望ましいし、長命種である吸血鬼が享楽を好む者ばかりであるのは、人間が何かを生み出すものがどうしたって好ましいからだ。現代人の血は当然不味いものもあるけれど、医療技術や食料自給率の向上によって健康な血を生み出す。退屈を感じるとすっかり生きる気力が薄れるのも、人間と近付き過ぎたが故なのだから。
     まあ、つまり、吸血鬼に貴族趣味があるのではなく、一族を愛し、領民を管理し一番の娯楽というものを知っている在り方こそが貴族的なのだ。
    「まあ、もしかしたらあの竜のお姫様の初恋に怯えた過保護な親族や父親辺りが、適当な女と結婚したアンタが子供作るまで城から出さねぇつもりなのかもな」
    「お、俺が好きなのはドラ公だし、他の誰かなんて考えらんねぇよ‼もしドラ公が結婚してくれなくてもずっと一緒に暮らしたい。ジョンだって、ドラルクがいなくって夜泣きする日が増えてるし……」
    「え、姫さんの愛を勝ち取ったあの使い魔を?置いていった?マジで?アンタ姫さんの記憶から消される覚悟とけよ?いや、マジな話。催眠耐性高くて死にやすい体質の直系の孫娘に催眠使えるのなんて、真祖か父親かぐらいだからな? 下手に死なせるような真似はしねぇだろうし、時間かけてるんだろうなぁ」
     そうしみじみと語る野球拳大好きにロナルドはマジで泣きたくなった。ドラルクと固い絆で結ばれているジョンがドラルクの傍にいないという事実が少なくともドラルクは帰って来るつもりがあるという心の支えであったからだ。キンデメや死のゲーム辺りもまあ、帰って来るだろう。みたいなスタンスでいてくれたから、なんとか日常をこなせているというのに、そうやって人間には分からない現実を急に突き付けてこないで欲しいと、ロナルドは唇を噛み締めながら思った。
     ドラルクが出て行ったのは明らかに自分が悪いとロナルドは思っている。荷物が事務所に置きっぱなしであることが余計に突発的な行動であったことを裏付けてくるので、多分今頃娘を溺愛するドラウスの栃木の城にでもいるんだろうと、この1年普段からアポなしで勝手に娘に会いに事務所までやって来るドラウスが一度も顔を見せないからこそ、あの死にやすいくせに好奇心の赴くままにふらふらするドラルクの身の安全は保証されているのだと気付けるまで、ギルドの仲間たちに何か知らないかと相談したらシーニャから見るからに血統のいい高等吸血鬼にばかり声をかける外国人がたむろしている噂があるという話を聞いて、吸対どころか神奈川県警を巻き込んだ大捕り物を行ったり、もしやいつかのダチョウのときのように逃げるに逃げられない状態にいるのではないかと、ドラルクの気配を覚えているダンピールの半田に気配を探ってもらいながらマリアがダチョウの巣をいくつか回ってみても仕留めたダチョウの肉がマスター御手製の料理としてギルド内で振舞われるだけで終わったりと、結局どちらも空振りで終わったりと、とにかく色々あった。
     好きな子に自分を忘れないで欲しいと、刻み付けたいと、その一心での行動ではあった。しかし告白すらしないでの行為とはどう考えても不誠実極まりなく、最中の反応から楽しんではいただろうと推測は出来るが、ふと童貞を拗らせたロナルドの貞操についてドラルクが思い詰めてしまった可能性だってロナルドは考えたのだ。だってあの身内や自身の庇護下に置いた相手への対応が殊更甘い吸血鬼にそうやって迫ることだって考えていたのだから、根が陽キャで誰とでも仲良くなれるから分かりづらいが、箱入りの引きこもりで、すぐに死ぬから痛い目に遭ったことのないドラルクは妙にズレている部分がある。
     野球拳大好きはあのドラウスが溺愛している愛娘の友人兼同居人としてなら許せても、初恋相手となると常日頃からドラルクを殺しているロナルドを認めないのではないかと考えているが、ロナルドはドラルクに惚れられているなんて勘違いは一切していない。そうじゃなきゃ自分の人生賭けて恋を伝えるのではなく、吸血鬼に対する正攻法のアプローチを人間、吸血鬼問わず聞きまくって告白するという段階ぐらい踏んだ。
     けれど正攻法でいったとして、もし振られなかったという奇跡が起こっても、ペットに求愛された程度の認識だろうと容易に想像出来てしまったので、最中に一度も殺さないという5歳児扱いから先に進むためのステップを踏むことを選んだのだが、その結果がこの有り様なのだと、ロナルドは自嘲した。
     ドラルクが出て行った理由が自分にあることをロナルドは決してジョンには言えなかった。ジョンがドラルクの騎士であるからというよりも、ドラルクが恋しいあまりにドラルクが置いていったネグリジェに包まりながらロナルドと一緒にソファーベッドで寝てくれているという事実が心に来ているのだ。生後半年でドラルクと再会するためだけに南米からルーマニアまで単身海を越え、山を越えと旅をしていた男気溢れるマジロのジョンが夜中に天井を見て怯えて泣いているなどの赤ちゃん返りを起こしているのだから、どれだけ自分が負担をかけているのかなんてロナルドが一番よく分かっているのだ。
     未だにアルマジロ語を完全に理解し切れていないロナルドに、ジョンも最初は何度も何度も何かを訴えかけてきてくれていたが、最近ではそれもない。ソファーベッドではなくドラルクの棺桶のなかで寝たらどうかという提案を断るのはどうしてなのかすら、ロナルドには分からない。
     退治の依頼のときには、不在のドラルクの代わりにロナルドの肩に乗ってついて来てくれていることも多くなったが、事情を知らない相手にロナルドのペットかと声をかけられる度に傷付いてしまっているのに、どうして一緒にいてくれるのかとロナルドは何度も問いかけようとしたが、結局何も言えずに夕飯を豪華にしようと提案することしか出来なかったのだ。
     しかし、ドラルクに隠れて食べるくらいコンビニのお菓子やジャンクフードを好んでいたジョンも最近はめっきりと食べる量が減り、ダイエットが少し成功してしまった。
     ほぼ毎日のように床下から現れてはドラルクにクッキーを中心としたおやつを普段からせびっていたヒナイチも、どれほどの有名店のクッキーであってもドラルクのクッキーが食べたくなるだけだと言っていた。監視対象のドラルクは不在であったが、ドラルクの愛する使い魔ジョンや、棺桶や大切にしていたゲームなどが置いてあるままである上に、かつてドラルクが母親であるミラに連れ去られた前例もあるからと、頻度は減っても監視の任務はまだまだ続きそうだと寂しさのなかに少しばかりの嬉しさを混ぜた声で報告してきたことが、ドラルクが来てからの生活の全てがなくなったわけじゃないのだとロナルドは安心していた。
     けれど、やはり違うのだ。VRCで受けた健康診断で体重が短期間で減りすぎだと、食事を改善しろとロナルドは指導を受けた。今更料理なんて出来るわけもなく、ヴァミマの弁当だけでなく、外食だって増えてしまった。たった一枚の紙に書かれた数字であっても、今の今まで目を逸らし続けて来たことを現実として突き付けてくるには充分であったのだ。やっぱり食事って大切なんだなと、同じように健康診断を受けていた退治人仲間に話したとき、自分がどんな顔をして笑っていたのかロナルドには分からなかった。
     久しぶりに出したクリーニングから帰ってきた退治人の衣装だってそうだ。まず、匂いが違う。ドラルクが好んで買っていたから、詰め替え用を買ってこいと言われたら流石にもう間違えない自信のある匂いとは全然違って、着慣れたはずの赤い衣装が全くの見知らぬ存在に見えてしまい、クローゼットのなかには入れられなかった。
     煙草だってそうだ。今までロナ戦の執筆中にのみ増えていたから、ドラルクが度々換気してくれていたおかげで、灰皿いっぱいになるまで吸った煙草の山がこんなにも匂うのだとロナルドはすっかり忘れていたのだ。ネタに困ったときにロナルドの醜態を面白おかしく撮影していたドラルクが揶揄いながら見せてくる動画だってなくって、喉が渇いても自分で淹れなきゃコーヒーは出てこず、お湯を沸かす気力もなかったロナルドは台所に向かって水を飲もうとしたら、ドラルクの匂いが煙草に上書きされているような感覚に陥ってからは、それ以来なるべく外で吸うようにしている。
     大量発生した吸血アブラムシの捕獲のように、相手が凶悪な力を持った吸血鬼というわけでもなく、ただただ体力と気力を消耗する依頼が続いた月には、たとえ若くて体力のあるロナルドであっても、掃除をするのすら億劫であった。今までなんとかゴミ出しなどの衛生面に関係することだけはなんとかやっていたけれど、ロナ戦執筆のための資料が机に出しっぱなしで、服だって洗濯機から出して乾かしてもアイロンをかける余裕はなく、何かに使うだろうと一ヶ所にまとめられたビニール袋はドラルクが縫ってくれたアルマジロ柄のエコバックの持ち手が千切れかけてから貯まり続けているこの現状をどうにか生活スペースだけで留めなくてはと、ロナルドは流石に家事代行サービスでも頼まなくてはと考えたことが一度だけあったけれど、見も知らぬ他人がドラルクの私物を見て触ってしまう可能性に思い当たってしまい、結局頼むことはなかった。
     ドラルクがいた痕跡をこれ以上失いたくなかった。自分が死のうが覚えていて欲しいと欲をかいたせいで、目の前から消えてしまった、あの愛しい吸血鬼をロナルドは諦めきれない。きっと帰って来ると何度も何度も自分に言い聞かせては、ロナルドの生来の自己肯定感の低さが顔を出す。
    『ドラルクの飯が食いたい』
     そう、何度ロナルドはぼやいた事だろうか。
     それはロナルドと同じ気持ちであるジョンには何度も零した本音であった。だからギルドの仲間たちや友人である半田たちにも、ふと洩らしてしまうのだ。その度にロナルドは実家に帰った嫁を迎えに行けない旦那のようだと揶揄ってくれているのが有り難かった。有り難いのに、告白すら出来ない臆病者である自分にはドラルクを迎えに行くなんて出来やしないのだとロナルドは心の中で返していた。
     もしも、この不在が実は200年も生きた吸血鬼の時間感覚では二泊三日の旅行にでも出ているようなもので、仕事から帰ったらドラルクがまるで初めて事務所に押しかけて来たあの日のようにおかえりと、なんでもない事のように出迎えてくれて、ロナルドが帰って来る前に焼いていたクッキーを差し出しながらこの1年間の旅行の思い出話を、可愛い自分には手に入らないものなんてないと本気で信じている馬鹿みたいに高い自己肯定というフィルターを通して語ってくれるという夢を何度も見るのだとロナルドが言ったら、きっと仕事を休めとか、さっさとパスポートを申請してルーマニアに飛べと薦めてくるだろう事ぐらい、ロナルドには分かっているのだ。
     自分が臆病者だから、夢の中ですら迎えに行けずにドラルクが帰って来るだけで全てが解決すると思い込んでいるのだとロナルドは言ってしまいたかった。言えなかった。夢の中のドラルクが語る旅先の話はどれもこれも上手く記憶に残らない。話す事が好きなドラルクはまるで自分もその旅に同行していたかのようにその情景をはっきりと想像出来るほどの話術で語ってくれているというのに、目が覚めたら全てがどこか遠くの出来事のように色褪せてしまうのだ。
     それを家賃8000円の曰く付き物件のせいにでも出来れば良かったのに、吸血鬼化したらしいビルが散歩する程度の理由でしかなく、ロナルドが事務所に入って来てからは事務所が動いている事よりも実家を飛び出してきたという負い目や妹への仕送りで少し余裕がなかっただけで、幽霊というものは出た事がないというのがロナルドの認識である。
     ジョンの夜泣きをドラルクという防波堤がいない所為で使い魔であるジョンがロナルドの生命力になるべく干渉させないようにしていたが、精神面はジョンの主人であるドラルクに惚れているロナルドの心は元から弱っているので、そういうのが寄って来やすい。だから愛する主人ドラルクから子守を頼まれたのだが、当のロナルドが鈍すぎて分かっていないのだが、ジョンの路地裏で出来たお友達はジョンが急に痩せた事を酷く心配してくれたので『ヌアまあヌヌヌヌヌンヌヌヌロナルド君よりはヌシヌヌマシだよ!』と友情を育んでロナルドのお兄ちゃんを頼まれてしまった時よりは若干余裕があったのだ。
     けれど、ジョンもドラルクが恋しいのは事実で、ヌー語が出来ないロナルドのせいでこれから父親になる覚悟も何もない状態がそれなりに腹立たしいのだ。ドラルクと離れて暮らさなくてはいけない原因でもあるからなので、ロナルドがいざドラルクが抱いている赤ん坊を見て感情がグチャグチャになってドラルクを殺したらジョンが父親になると決めていた。というか、ドラルクが帰って来るまで、ノースディンが必然的にドラルクの子供の父親代わりをしているというだけでジョンにとってはストレスだった。やっぱりタイムスリップしてドラルクの師匠せんせいになりたいとジョンは考えていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    nemurinekomaru

    PROGRESSロナドラ♀里帰り出産の続きです。
    この章から三人称視点です。
    ギリギリさんとの友情を深めている〇です。
     新横浜からドラルクが出て行って、そろそろ1年という時間が経った。朝目が覚めたら棺桶のなかはもぬけの殻となっており、何の書置きもない状態で出て行ってしまったのだと、日に日に草臥れながら語るロナルドに周囲の人間はついに痴話喧嘩のひとつもして出ていかれたのかと囃し立てたが、ロナルドはただ自分が悪いのだと言うばかりであったので、これはもしかしたらとうとうロナルドがドラルクに告白して、びっくりして父親とかのもとに逃げられてしまったのではないか? という憶測がギルドのなかで飛び交っていった。
     他人の恋路なんてものは最高の娯楽であると相場が決まっていると退治人相手に吸血鬼たちは笑う。人間に分かりやすく言い換えるのなら、田舎で退屈している親戚や老人からお見合いや結婚を勧めてきては、孫はまだかとせっつくのと一緒であると、野球拳大好きによって解説された。三男の下半身透明を息子のように育てきり、現在では野球拳という明らかに日本に来てから目覚めたであろう性癖によって頭ポンチになっているのだから、説得力が違う。
    6222

    nemurinekomaru

    PROGRESSロナドラ♀里帰り出産の続きのノス視点です。
    ノスはドラちゃんを娘みたいに思っているので、元から眼中になかったロナ君を許せないしちょっと嫉妬している。
     慣れぬベッドの上でくうくうと寝息を立てながら浮かべる寝顔はいくつになっても幼いままだった。200歳を超えてもこの子は何も変わらない幼さを持ち続けていることに何度安堵しただろう。
     ドラルクからの呼び名がノースディンおじさまから師匠せんせいへと変わり、生意気な口を叩けるようになったのは反骨神を育てることに成功したというのに、昔買い与えた真っ白なテディベアを抱いて眠るいつまでも小さく手のかかる弟子が、たかだか二十年と少ししか生きていない人間の若造の子を孕んでいるという事実が何より耐えがたかった。
     人間なんてあと五十年もすれば老いてしまうのだから、その頃には幼いあの子は飽きてしまうだろうからと、共に暮らすことを許した結果がこれだった。ダンピールのような交じりものを産む気なのかと問い詰めたくなってしまったのは、この子の言う通りロートルと呼ばれるべき古い考えに固執している証拠ではあるのだが、二世紀は前のあの子に吸血鬼としての生きる術を教えていた時期を考えると仕方がないものでありながらも、ドラルクのためにあるこの部屋以外の城の惨状が自分の感情を抑えきれていない事実をハッキリと告げてくる。
    6551

    related works

    recommended works