【こたつ】「そろそろこたつを仕舞おうと思う」

いつも突拍子もないことを言い出すコイツは、いつものようになんやかんやで訪問するなりそう言った。

いや、お前、いつの間にやらそれこそ家族のように我が家に馴染んでるけど
ひとんちのこたつについて何言ってんの？？そんな権限あるとでも思ってんのか。絶対に許しませんよ

「お前達はこたつがあると際限なくぐうたらぐうたら…隙あらば横になるわ あわよくばごみ捨ても風呂もサボってそこで寝るわ、いい加減見ていられん。
ああー布団にシミがついてるじゃないか。どうせ洗濯もろくにしておらんのだろう。
もう三月になる、雪が溶けて川になって流れていくぞ。ほれ、もうすぐ春ですよ〜〜」
「やめろおお引っ張るな！いやだあああ出るもんかあああ」

＊

攻防を一旦止めると、隣に入り込んできた。
「結局入るんじゃん」
「お前がここにいるからだろう」

そう言いながら、落ちていた煎餅のかけらをつまみあげる。眉をひそめゴミ箱に腕を伸ばし放ったが、惜しくも外れてこぼれ落ちた。

「まったく自堕落な」
「いや拾えよ そう言うならちゃんと捨てろよ！結局お前もこたつから出られなくなってるじゃねーか」

＊

「俺はこたつが好きなんだよ」

「気持ちはわかる。わかるが夏までこうしてもいられんだろう。
どうせいずれは片付けなくてはならんのだ。急に暑くなるかもしれない、酷使しすぎで壊れてしまうかもしれない。あちらの負担も考えろ。
いつまでも あると思うな こたつとお題、というだろう」
「言わねーよ！お題って何？」

そんなことはわかってる、お説教はたくさんだ。
それでも少しでも長くこうしていたいんだよ。
ソファだとこうはいかない。自然に隣に座ることができる。自然に体を寄せることができる。
ガキどもに見えないところで、こっそり体を触ることもできる。
それで戸惑うコイツを見るのも好きだし、顔が赤いのを指摘されて こたつの熱さのせいにしてる姿もたまらない。
いとをかし。風物詩ってやつだ。
これまでも大変お世話になってきたんだ。まだまだ恩恵をしゃぶりつくすぜ。


「俺はこたつが好きなんだよ…」

だからずっと居てくれよ。いなくなるなんて言わないでくれよ。
布団の洗濯もたまにはする、ちゃんと周りに掃除機もかけるから。新八が。

「気持ちはわかる。俺も同じだよ」
「あ？」

「だがな銀時」

俺より少し細い体が こちらに向き直る。

「こたつが無ければ お前とこうして居られぬわけでもあるまい」

肩に頭を乗せられ、胸に預けられた体重はしっかりと、熱く。



ああ、しょうがない。
わーったよ、一旦仕舞うのもやむなしだ。寒かったらお前から直接暖をとる。
この先暑くなったら暑さのせいにしてなんやかんやする。そしてまた涼しくなって、寒くなって、
またこたつにも会えるだろう。会えなくてもお前はいる。
そうやってまたひとつ ひとつと季節を重ねていこう。

これまでも、これからも。


【こたつ】
2022/01/08