一緒にお風呂に入りたいラギ監シリーズ06「はい、これあげる。」
オレが差し出したのは、一輪の花。
花屋のバイトでラッピングの練習に使ったものだけど…。
見た瞬間、ユウくんの顔が思い浮かんだ。
それに今日は。
「ユウくんの世界には、ホワイトデーってのがあるんでしょ?」
先日のバレンタインデーとやらには、いつものドーナツにチョコがかかっていて。
ユウくんの世界では好きな人にチョコレートを渡して、気持ちを伝える日なのだと教えられた。
さらに今日、ホワイトデーはそのお返しをする日であることも。
「お返し…いいって言ったのに…。」
「いーんスよ。オレが渡したいの。」
だから、ほら。と、ユウくんにもう一度花を差し出す。
買ったわけじゃないし、おまけでもらったようなものだから、遠慮しないでと続ける。
ユウくんは数度まばたきをすると、オレの手ごと花を両手で包み込んで。
「ありがとうございます、ラギー先輩。」
と、嬉しそうに笑って受け取った。
オレの大好きな、ユウくんの笑顔。
あーあ、お返しのつもりで渡したのに…こっちが得しちまった。
「…キレイ。」
ユウくんは受け取った花を少し離して眺めてみたり、光にかざしてみたり。
匂いをかいで、またふわっと笑って。
本当…かわいい。
「たった一輪でこんなに喜ぶなんて…。花束渡したらどーなっちまうんスかねぇ?」
「えっ?なんですか?」
タイミングよく風が吹いたからなのか。
目の前の花に夢中だったからなのか。
ユウくんの耳にはオレの言葉が届かなかったらしい。
「…もーちょっといいものくださいよー!とかないのかなぁ?って言ったんッス。」
「そ、そんなこと言わないです!」
「シシシッ。知ってる。」
からかったオレの言葉に、ユウくんはぷくっと頬をふくらませる。
そんな顔もかわいいんスけど。
…来年はちゃんとしたものを用意しよう、とオレはぼんやり思った。
もしくは毎年一輪ずつ花を渡す…のもありか。
花束は…そのうち、ね。
その時は、とびっきりの笑顔を。オレだけに見せてくれるッスよね。