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    ナンナル

    @nannru122

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    ナンナル

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    チョコの小話後日談。
    メイテイ2に加筆したお話のその後の小話です。
    ※メイテイ2の加筆を読んでから、お読み頂くのをオススメします。
    ふわーっと読み流してください。

    メイテイ2 無配 ※メイテイ2 に加筆したバレンタインのお話の翌日の話です。
    そちらを読んでからお進み頂くのをおすすめします。
    当日無配としてお配りしたものです。

    上記をご確認の上、お進み下さい。

     *

    「司くんも随分と大胆になったねぇ」
    「うっ…、その、お酒入りだなんて知らなくて…」
     にこにこと上機嫌な神代さんに、もごもごと口ごもってしまう。お酒の名前に詳しくなくて、説明書きを見てもよく分からなかったんだ。まさかお酒入りのチョコレートだったなんて思わず神代さんに渡してしまって、思いもよらないバレンタインになってしまった。
     ぼふっ、と枕に顔を埋めて、熱い顔を隠す。オレを抱き締めたまま離さない神代さんは、オレの髪に顔を埋めて楽しそうに くふくふと笑っている。オレからのチョコをここまで
    喜んでくれているのは嬉しいのだが、なんだか思っていたのと違う気がする。
     する、と腰に触れる手が脇腹を撫でて下へ降りていくのに気付き、慌てて神代さんの腕を掴んだ。「神代さんっ…! 」と少し大きめの声で名前を呼べば、残念そうに眉を下げられた。
    「もう少しだけ、駄目かい?」
    「っ…お仕事の時間ですよね⁈ そろそろ寧々さんから電話が…」
     そう言いかけた所で、タイミングよく神代さんのスマホが鳴りだした。この聞き慣れた
    着信音は寧々さんのものだ。不服そうに顔を顰める神代さんの肩を手で押して、体を少し
    離す。「鳴っていますよ」と一言伝えれば、神代さんが渋々スマホへ手を伸ばし、通話ボタンを押す。
    「もしもし、寧々かい?」
    『……昨晩は大変お楽しみだったようで』
    「おや、よくわかったね?」
     微かに聞こえてくる通話先の寧々さんの声に、思わず息を飲む。へらりと笑う神代さんは
    全く気にしていない様で、オレを ちら、と見るとそのまま返事を返していた。だが、オレは声には出さないものの、内心で酷く動揺してしまった。
     寧々さんは今、『お楽しみだった』と言わなかっただろうか? それも、『昨晩は』とご丁寧に付け足して。言い方からして神代さんに言っているのだろう。そして、その神代さんは
    昨晩はオレとずっと一緒だったのだ。バレンタインデーでチョコを渡して、そのまま神代さんと沢山そういうことをして…。
    それが寧々さんにバレてしまっている。その事実にぶわりと顔が熱くなった。
    『…どうせまだ司と一緒なんでしょ』
    「そうだね。寧々に僕らの愛が筒抜けだと知って、真っ赤な顔で固まってしまっているよ」
    『当たり前でしょ。SNSであれだけ騒がれてたら…』
    「SNS…?」
     呆れたような声音の寧々さんに、頭が上がらない。恥ずかしさにもぞもぞと布団の中に
    もぐっていけばそれに気付いた神代さんに掴まって引き戻されてしまった。逃げられない様しっかりと抱き締められてしまって、両手で顔を覆う。
     一体どこで知られてしまったのだろうか。神代さんの声が少し掠れているからか? それとも、バレンタインデーの次の日だからだろうか? それなら、まだ誤魔化せるのではないだろうか? …いや、神代さんが肯定してしまったのに、今更誤魔化せるはずもない。
     ぎゅ、と腹に回された神代さんの腕から抜け出そうと身じろぐも、全く離してもらえん。そればかりか、スマホの通話がスピーカーに切り換えられてしまい、ちょっとした声すら寧々さんに聞かれてしまう状態になってしまった。これ以上恥を晒すまいと両手で口を覆うオレの隣で、スマホの画面を見る神代さんが「あぁ、」と呟いた。
    「本当だ。ちょっとした騒ぎになっているね」
    『類が引退宣言の時にあんなこと言うから、二人ともかなり注目されちゃってるんだけど』
    「ふふ、これでは、気軽にデートもできないねぇ」
     くすくすと笑う神代さんに、寧々さんが通話先で溜息を吐くのが聞こえた。顔を上げれば、オレの目の前に神代さんのスマホが向けられる。SNSの画面の様だが、そこに見覚えの
    あるチョコレートが映っていた。投稿された画像に、沢山の反応がきている。
    【類さんの恋人が贈り物用のチョコを買ってた!】
    【お酒入りの大人向けチョコレート! 恋人くん大丈夫!?】
    【神代くん、溺愛してる恋人からチョコ貰えてよかったねぇ♡】
    【恋人くん逃げて~! そんな可愛い事したら、俳優神代類が狼に変身しちゃうよ~!】
     どれもこれも昨夜の日付だ。画面に映っている呟きを数秒見つめ、顔を上げた。苦笑する神代さんと目が合って、もう一度スマホの画面に目を向ける。
     画像に映っているのは、確かに昨夜オレが買ったチョコレートだ。その投稿に、『神代類』と
    神代さんの名前も入っている。何故だ?
     訳が分からずもう一度神代さんを見れば、眉尻を下げて困ったような顔をされてしまった。
    「どうやら、司くんが僕の恋人だと有名になってしまったみたいでね」
    「………はい…?」
    「昨日僕の為にチョコを買ってくれた君を、ファンの子が見ていてその事を投稿して、それが
    ちょっとした騒ぎになってしまっているようだね」
    「…なっ…‥‥⁈」
     どこか照れたように説明してくれた神代さんの言葉に、ぶわわっと顔が一気に熱くなる。
    つまり、オレが神代さんにチョコを渡したことが知られてしまったという事か⁈ それだけでなく、そのチョコが【大人向けのチョコレート】だったから、神代さんと昨夜したことも筒抜けという事か!? なぜそうなった!? 何故そうだと分かったんだ!?
     困惑するオレの脳裏に、ふとチョコを買った時の店員の『頑張ってください』という一言が過った。
    (もしや、あの時の言葉がそれなのか…⁈)
     変だとは思ったんだ。いくらバレンタインデーだからといって、常連でもない初めての客に『頑張ってください』なんて言うのか、と。あれは、オレが神代さんにチョコを渡すと知っていたからか?! それも、“大人向け”と御丁寧書かれていたから、そういう意味で捉えられたのか?! あの時点で既に、そういう風に見られていたのか?! 間違ってはいないがっ…、間違いではないが、とても恥ずかしいな。
    ぅぐぅ…、と小さく呻いたオレを更に抱き寄せた神代さんが、スマホを枕元に放る。寧々さんの声が聞こえるスマホに向かって少し大きめの声で、「時間までには出るよ」とそう言った。

    『あまり司を困らせないでよ』
    「勿論」
    『……はぁ、とりあえず、今から向かうから準備しておいて』

    ぷつん、と通話が切られ、神代さんがスマホの画面を消す。そのままぎゅぅ、とオレを抱きしめる神代さんが、オレの髪に口付けてくる。お腹に回される神代さんの手が布越しにオレのお腹を撫でてきて、びくっ、と肩が跳ねた。オレの足に、神代さんの足が擦り寄せられ、そっと絡められる。徐々にくっつく部分が増える事に、ぶわりと顔が熱くなって、慌てて神代さんの手を掴んだ。

    「ぁ、あのっ…もう起きないと……」
    「もう少しだけ。身体は辛くないかい?」
    「……平気です…、……その、…気持ち良かった、ので…」
    「……………司くん、僕を仕事に行かせるつもりないでしょ?」
    「ひぁ…?!」

    かぷ、と項を優しく食まれ、悲鳴に似た声が口をつく。歯で優しく噛まれ、じん、と甘い痺れが背を走り抜けていく。「神代さんっ!」と大きな声で呼べば、舌で項を軽く舐めた神代さんが漸くオレを離してくれた。唾液で濡れた項を手で押さえると、のそのそと神代さんが起き上がるのが気配でわかった。
    大きな手がオレの頭をそっと撫で、ゆっくりと離れていく。オレも慌てて起き上がれば、神代さんに「もう少し寝ていていいよ」と優しく笑ってそう言われてしまった。
    クローゼットからシャツを取りだした神代さんが、袖に腕を通す。引っ掻いたような傷の付いた背中がシャツの下に隠れたのを、申し訳ない気持ちで見つめて、ベッドをおりた。腰は痛いが、歩けないほどでも無い。

    「お弁当、簡単なもので良ければ作りますよ」
    「嬉しいけど、無理はしてほしくないな」
    「朝ごはんと一緒に作るので、少し待っていて下さい」
    「ぁ、司くん」

    くるりと背を向けてキッチンへ行こうとしたオレの体が、神代さんに抱きとめられる。目を瞬けば、脇から胸元に回された片腕でしっかり体を固定され、反対の手がスウェットの裾にかけられる。ぶかぶかのスウェットは太腿をすんなりと隠してしまう程大きくて、明らかにオレのでは無いと今更気付いた。
    ぺろん、と裾が捲られ、脚の間に空気が触れる。何も纏っていない自分の下半身に、かぁああっ、と一気に熱が集まった。

    「せめて下は履いてほしいな」
    「っ………」
    「この格好で歩き回られては、それこそ仕事に行けなくなってしまうよ」

    ね? と耳元で囁くようにそう言った神代さんが、脚の間に神代さんの脚を差し入れる。軽く開かされた太腿の内側に付けられた赤い痕に、ぎゅっ、と唇を引き結んだ。バッ、と腕を振り上げて、体を軽く捻じる。そのまま勢いよく腕を振り下ろせば、ばちんっ! と大きな音が室内に響き渡った。

    ―――

    「………で、何その顔」
    「いやぁ、照れ屋なお嫁さんをからかったら、照れ隠しに、ね」
    「…今日も撮影があるって言うのに、そのかっこ悪い顔でするわけ?」
    「その時は、メイクでどうにかしてもらえるかな…?」
    「善処するけど…」

    うわぁ、という引いたような顔を向ける寧々が盛大に溜息を吐く。
    頬にはっきりと付いてしまった紅葉の痕は、せっかくなら消したくは無い。可愛らしいお嫁さんはお弁当と朝ごはんを作ったあとお部屋にこもってしまったので、帰ってきたらご機嫌取りでもしないとね。帰る頃にはきっと、彼は僕を叩いてしまった罪悪感で落ち込んでいるだろうから。

    (僕としては、遠慮なく叩ける程彼との距離が縮まった事の方が嬉しくて、怒る気にもならないのにね)

    ひりひりとしたこの痛みすら可愛らしくて愛おしい。
    なんとなく形に残しておきたくて、スマホのカメラで自分の顔を取れば、寧々が更にその顔を顰めた。

    この後スタジオで僕の顔を見たスタッフさんがSNSで【神代さんの頬に打たれた痕が】と投稿してしまい、痴話喧嘩や不倫を疑われてちょっとした騒ぎになったのは、また別の話。
    数日後、たまたま頬の痕の写真が司くんに見つかり、即刻消されてしまったのも、別の話。
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