12本の赤い薔薇ぎしりときしむベッドから起き上がって、隣を見た時に実感する。
―――――ああ、私はこの人と結婚したんだって。
4歳も年下の元軍人、とても優しい人で私には勿体ないくらい。
最初はからかわれてるのかな~とか遊びかもとか色々考えたけど
あの日、顔を林檎みたいに真っ赤にして告白してくれた叶くんを見てそんな気持ちは吹き飛んでしまった。
感動で静かに涙を流すのは昔からの癖みたいなものなんだろう、私が返事を返した時も泣いていたのを覚えてる。
すやすやと眠る彼の頬にそっと口づけを落としてベッドを抜け出す、叶くんはいつ私がそうしていることに気付くかしら。
「あ…ちょっとしおれてきちゃったな」
いつも通りの広場で待ち合わせをするのが恒例になって、その日だって元々一緒に出掛ける約束をしていて、変わらずにショッピングをして食事を共にして夜になったら分かれて。そんな一日になると思ってた。
叶くんが、薔薇の花束を持ってこなければ。
「い、穂美サン!!!!!!!」
「世界一愛してます!!!!!」
「俺と…俺と結婚してください!!!!!!!!」
周りの人が見てるとか、ドラマでしか見たことないようなプロポーズの仕方だとか。いつか想像したプロポーズとだいぶ違っていたけど、もうどうでもよかった。
きっと花屋さんにたくさん質問して決めたんだろうなとか、プロポーズの仕方を調べたりして勉強したんだろうな~とか…どうしようもなく愛おしい、とか。
「……はい」
「もちろん…!」
「よろしく、お願いします!」
少し間を置いた後、私たちより周りの方が盛り上がっちゃって。二人で照れながら場所を移したっけ。
今でもあの時の嬉しそうな彼の顔が目に浮かぶ。
睫毛が揺れて、伏せていた瞳をそっと開く。
「もう、鴛鴦穂美…なのよね」
思わず笑みがこぼれる、彼は気付いているだろうか?私がこんなにもその響きに喜びを感じていることを。
早く朝食の準備をしなければ、寝ぐせもそのままに急いで起きてくる彼に一番におはようと言うために。