獣の魔法「ちょっ……だから、今日は駄目ですってば!」
私は必死に、オーエンがベッドへ押し倒そうとしてくるのに抵抗していた。
彼は鬱陶しそうに溜息をつく。
「昨日はあんなに素直だったのに、もう忘れちゃったの?」
「なっ……!」
ボッと顔が熱くなる。
十日ほど前に晴れて初夜を迎えて以降、私とオーエンは毎晩のようにまぐわい続けていた。
彼の精力、体力、欲望は凄まじく、流石北の魔法使いと言ったところだろうか。
驚いたのは、私もオーエンに負けず劣らずだったことだ。
「だらしなく喘ぎながら、おねだりしたんだよ。覚えてる?」
「いいいいい言わないでください!」
オーエンがクスクスと妖艶に笑うのを見ると、否が応でも昨夜の情事を思い出してしまった。
『オーエン……きてっ…………!』
『やぁっ…………まだ、ぬいちゃっ……やだぁっ…………!』
昨夜の私は確かそんなことを口走っていた。
彼はわざと私を焦らしてくるから仕方ないのだと自分自身に言い訳する。
けど、本当はわかっていた。
恥ずかしさや理性が快楽で溶け、我慢できず懇願する。
そうすると彼の目がケモノのようにギラリと光るのが、たまらない。そう思ってしまっている自分のせいでもあるのだと。
ズシリとお腹の奥が重くなる。
オーエンはそれを見透かしたのか、スリッと猫のように顔を近づけた。
「賢者様……いいよね?」
「だ、だめですっ……明日は朝から任務が…………!」
「へぇ。そんな顔して、まだそんなこと言うんだ。賢者様も大変だね。僕が助けてあげようか?」
オーエンは憐れむように目を細める。
嫌な予感がした。