大切なあなたへ「これで全部か?」
「はい。シノ、ありがとうございます。殆ど持ってもらっちゃって……」
「ふふん。これくらいどうってことはない」
中央の街での買い物を終え、私とシノは魔法舎へ戻ろうとしていた。
箒で帰ったほうが早いが、そこまで距離もない。
街の景観を眺めるのもいいだろうと、ゆっくり歩いて帰ることになった。
シノは突然立ち止まり鼻をヒクヒクさせる。
「うまそうな匂いがする」
「本当だ。……あのお店みたいですね」
食欲をそそる香りに誘われ辺りを見わたすと、小さなレストランが佇んていた。
店頭に置かれた看板を見るに、ハンバーグが売りの店らしい。
目をキラキラさせるシノのお腹から物欲しげな音が鳴る。
「もうお昼前ですね。せっかくだし、あそこで食べて帰りますか?」
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