キスはチョコ味。「九井の下駄箱エグ…」
朝校門で会ったクラスメイトと談笑しながら上履きを履き替えようと、靴を脱いだ所でクラスメイトが引き攣った顔をしている。
顔を上げて自らの下駄箱を見てみれば、上靴入れの扉は開け放たれ正方形の中にはみっちりと色とりどりの包みが詰め込まれていた。
「上履きどこ行ったんだ」
その惨状に驚いた様子も無く、そこに入っていた筈の上履きは何処かとそれを気にしている。
今日はバレンタインという、普通の年頃の男女達に取っては一大イベントとも呼べる日だ。
去年は高校生になってから初めてのバレンタインであったが、九井は朝からチョコ攻めにあっていた。
それを律儀に貰えない、と謝りながら断る姿に一瞬嫉妬で苛ついていた男子達も九井偉いぞ!と色めきだったものだった。
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