New Record かさかさとビニールの擦れる音。白い手袋の指先が小さなクッキーの袋をつまみ上げ、うず高く積まれたお菓子の山が少しずつその標高を増していく。いつになく真剣な様子のドクターに見つめられ、俺は完全に身動きが取れなくなっていた。
「入るぞ、先生。……ああ、新人もいたのか」
「おっ、お疲れ……さまです……! 隊長……!」
オフィスの扉を開けたレベッカ隊長は暫し沈黙した。なんで黙るんですか隊長。すぐにでもそう聞きたかったが、何かいえばすぐにでも頭の上のチョコレートがこぼれ落ちてくるような気がして
言葉を飲み込んだ。
「いや、なんとも芸術的な積み方だと思ってな。食べ物で遊ぶのは良くないと言いたいところだが、確かにこれはすごいと思うよ」
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