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    全世界を統べる大天才梔子さん

    大天才の作品にも、人を選ぶものはある。
    ここはそういうものを置いておく場所です。

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    POIPOI 12

    キスの日なので突発的に書いた
    解釈違いとかあっても許して

    キスの日💛💜「魅朕〜!!今日はね、キスの日」
    「嫌よ」
    「まだ何も言ってないのに!?」

    「……というわけで、どうにかして魅朕とキス出来ないかな〜?」
    「なんで僕に訊くの」
    無情にも魅朕に突き放されショックを受けたあたしは、リビングのソファーでゲームをしていたヒョウガに声を掛けた。
    今日は待ちに待っ……たわけではなくあたしも偶然知っただけだけどキスの日だというのに、ヒョウガと来たらまるで興味なさそうにゲーム機のボタンをポチポチして、あたしの方には目もくれないんだもん。
    これだからお子ちゃまなんて言われるんだよ。
    まぁあたしも言われるけど。
    ヒョウガよりも頻繁に。
    主に魅朕に。
    「いやー、ヒョウガならそういう……悪知恵?働くかなと思って」
    「悪知恵って……ザイカ、どんな風にキスするつもりなの……」
    明らかにドン引きしてます、みたいな声色でヒョウガが言う。
    傷付くな〜、別に襲おうとかそういうんじゃないのに。
    「っていうか、悪知恵なら僕よりパボメスにでも訊いた方が良いんじゃないの」
    言いつつヒョウガが視線を向けると、パボちゃんはいつものように不機嫌そうな顔でこっちを見た。
    「何だ?言っておくが、くだらぬ遊びにタダで貸してやる知恵など持ち合わせてはおらんぞ」
    「悪知恵が働くのは否定しないんだ」
    「悪魔だからな」
    タダでダメならお金とか払えば貸してくれるのかな?悪魔の悪知恵。
    でもなんか、パボちゃんってこういうとき洒落にならない方法とか出してきそうで怖いんだよね。
    それこそ酷いやり方で無理やり〜、みたいな。
    怖いね〜悪魔って。
    「……お前、何か無礼なことを考えていないか?」
    「いいえ全く」
    「こっちを見ろ……目を合わせて同じことが言えるか?」
    「いいえ全く」
    「ほらなぁ!!」
    今日もまたパボちゃんを怒らせてしまった。
    怒るパボちゃんはうちの風物詩とも言える古き良き文化であるからして、一日に一度は見ないと気が済まないのだ!
    ま、嘘だけどね。
    でも今のはあたし、そこまで悪くないんじゃないの。
    「とにかくー、どうすれば魅朕とキス出来るかなって話なの!ね、ね、良い案出してよ。一番良いのを出してくれた人には賞品として、今日のおやつのドーナツ!……の空箱をプレゼントします!」
    「ゴミじゃん」
    ヒョウガが冷めた目でツッコミを入れる。
    パボちゃんは露骨に呆れた様子で溜息を吐いた。
    もう、二人ともやる気ないんだから!
    もっと真面目に取り組んでよね!
    「で?何の話をしてるって?」
    「だからぁ、魅朕とキスする良い方法、を……」
    背後から降ってきた声に、答えながら振り返る。
    ……と、そこにはなんと、当の魅朕さんが立っているではありませんか!
    いやぁ〜こんなことホントにあるんですね!
    冷や汗止まんないよどうしよう!
    「……あのねぇ、」
    「いやあのこれはね!ご、誤解!誤解です!決して邪な想いがあるわけではなくて!そう!純粋に!純粋にね、こう、キスしたいなぁ〜と……」
    脳味噌と舌をぐるんぐるん回して言い訳する。
    いや言い訳じゃなくて!事実なんですけど……
    だって嫌じゃん、純然たる気持ちで、こう、ね?
    淡い恋心と言いますか、そういう気持ちで言ってたのに、タチの悪い悪戯みたいに思われるのは。
    だってみんなには軽く見られるかもしれないけどあたしにとっては真剣なんだよ!
    本当だよ……!
    「あぁ〜だからその……ちょ、ちょっと、落ち着いて聴いてほしいというか……」
    「落ち着くのはあんたよ、ザイカ」
    冷静な声に諭されて、大回転していた舌がようやく動きを止める。
    あ、待って舌噛んだ!いった!
    「……ほ、本当に誤解です……」
    「分かったから勝手にしょげないの。まだ何も言ってないでしょう?話は最後まで聞きなさいな」
    「魅朕がそれ言うの……」
    「とにかく」
    スルーされた。
    腑に落ちない。
    「今日が何の日とか、そういうので言い訳して迫るのはやめなさいよ。みっともないわよ」
    「はへぇ……?」
    魅朕の鋭い目があたしを射貫く。
    芯の強さが表れた、凜とした瞳。
    ……ずるいよ。そんな顔されたら。
    何も言えなくなっちゃうでしょう。
    ああ、でも、ずるいのはあたしの方か……
    だってあたし──
    「建前なんか用意しなくても、本音で向き合えば良いでしょう。……ほら」
    「え?わ、〜〜〜っ!?」
    押さえつけるように引き寄せられて、そのまま口と口が触れる。
    いきなり息が出来なくなって、胸が痛いくらい高鳴って、熱くて、あったかくて……
    それが徐に離される。
    ほんの数秒。
    でも確かに。
    ……願いが叶ったんだ。
    「ね。あんたが本気なら、拒んだりしないわよ、あたし。解った?」
    「…………わ……解った……」
    「よろしい」
    それだけ言うと魅朕は何事もなかったかのように去って行く。
    あたしはその背中を、すっかり放心しながら見つめていた。
    …………え?キスしたの、今?
    え?どうして?解った?解らないよ!!!
    解ったけど解らないよ!!
    どうして…………
    どうして魅朕はあんなに強いの。
    どうしてあたしのこと見透かしてるの。
    どうして魅朕が……あたしのこと見てくれるの。
    何も解らないよ。
    だってあたし──真面目に向き合うのなんて、怖くて……だからずっと逃げてただけなのに。
    冗談めかして逃げ場を作って、でも本心を解ってほしいだなんて、都合の良い夢見てただけなのに。
    だからこんなの……もう……もう……
    「……ねぇ、ちょっと……ザイカ?その……大丈夫?キス出来たんでしょ?嬉しいんじゃないの?」
    「はぁ……おい、ザイカ!とっとと元の調子に戻れ!気味が悪い」
    「…………う、」
    「う?」
    「うわぁあぁあ〜〜〜っ!!!!!嬉しい嬉しい!!嬉しすぎるよ〜〜っ!!!」
    「ぉわっ!?急に叫ぶな馬鹿め!」
    「耳キーンてなった……」
    ヒョウガとパボちゃんが耳を塞いで愚痴を言う。
    でもでも!だって、ねぇ!嬉しくって!
    キスだよ!?嬉しいでしょ!
    今日くらい目いっぱい騒がせてもらわないと気が済まない!
    「ふぉお〜!!今から宴だ〜!!」
    冷蔵庫の扉を勢いよく開けて、ドーナツの箱とコーラを取り出す。
    こんなときはやっぱりドーナツ!
    それ以外無いでしょ!
    「……彼奴、いつにも増して喧しくなったな……」
    「ま、しょうがないよ……じゃあ僕は絡まれないように避難するから……」
    「おい!卑怯だぞ!」
    後ろでなんか言われてるけどそんなこと気にもならない。
    だってね、あたし、あたし……今すっごく幸せだから!
    「わーいわーい!今日は最高の日だ〜!」
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