半生の反省自己暗示だけは得意だった。
昔からそうだ。
優しいあの子の醜悪な素顔も、明るいあの子のどろどろした内情も、全部全部見てしまっては見ないふりをした。
そんなものは彼らを構成するほんの一部に過ぎないと思って。
浴びせられる罵詈雑言に、心を的確に抉る躊躇無き嫌味に、僕はいつだって目を瞑ってきた。
そうだね。僕が全部悪いよ。
君はただ疲れているだけなんだ。
頑張りすぎちゃって休むに休めないんでしょう。
そんなだから心の余裕を失くしてしまっているだけだよね。
それなのに僕は、無神経にも君を傷付けてしまった。
配慮が足りなかった。
積極性に欠けていた。
ああそうだ、僕が全部悪い。
君のそれは口を衝いて出た単なる溜息に過ぎないでしょう。
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