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    waka_TOV

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    ノイ誕SS(多分今後ハイノイになると思うハイ+ノイ+チャ)

    『アーノルドー!』
    「ハロ?」

    ノイマンとチャンドラはその日非番だった。晴れやかな日差しで、風が吹けば心地よさを感じる初夏の晴れの日。いい買い物日和だと二人で市街に繰り出そうとしていた時、何処からか己の名前を呼ぶ声にノイマンは顔を上げた。
    そして少し離れた物陰から軽やかな動きで飛び跳ねて現れたのはノイマン所有のネイビー色のハロで。難なくノイマンの手のひらに収まったハロは、どこか嬉しそうに身体を揺らしながら耳をパタパタとさせる。

    「昨日見失ったって言ってなかった?」
    「ああ。いくら探しても見つからなくて、でもまあ誰かが拾ってくれるだろうと思って諦めたんだが…。昨日からどこに行ってたんだ?」
    『アルノトコロー!』
    「アル? ハインライン大尉の所か? あの人は今プラントに居るはずだが」
    『アーノルド! チャクシン! チャクシン!』
    「…ハロって通信機能あったっけ?」
    『私が新しい機能として追加しました』
    「まだ出るって言ってないだろ…」

    チャンドラの疑問にノーと返事をする前に、つい先程まではどことなくラミアスの声に似たプログラムの音声を発していたハロから、最近妙に付き合いが出来てしまったテノールが利いた男の声が流暢に流れた。ノイマンは怪訝な顔のまま、見たことの無い青色の点滅を繰り返すハロの目を覗き込む。

    「人のハロに勝手に何してるんですか。ハインライン大尉」
    『お疲れ様ですノイマン大尉。そして誕生日おめでとうございます。どうやら今日が誕生日とお伺いしたのでささやかながらプレゼントを用意致しました。ズバリ…』

    ノイマンの小言を聞いているのかいないのか、ハインラインがいつも通りの早口でつらつらと自分がハロを改造しただとか、いろんな機能をつけただとか、この通信もそのひとつだとかを述べ連ねた。
    先のアコード戦でハインラインのなにかの琴線に触れたらしいノイマンは何故か頻繁に声をかけられるようになり、隙があればやれ貴方の操舵技術は素晴らしいやら自作のシュミレーターに座って欲しいやら、挙句の果てには自分にノイマン専用の艦を造らせて欲しいだとか、簡単に言うと猛アピールを受けていた。
    おかげで知り合ってからの日は短いというのに濃い日々を過ごすことになったノイマンは、ハインラインのコミュニケーション能力はまるで子供のような一方的に押し付けるものであると気づいていたのだが、まさか人のものを勝手に拝借し改造してしまう程とは思っていなかった。
    ハインラインと付き合いが長いというコノエにも「アルバートも悪気はないんだ。ただ少し、いや、だいぶ自分の好きなことに没頭して生きてきたから対人能力があまり培われて来なかっただけで」と目を逸らしながら言われたことも記憶に新しいが、そういうレベルを超えていないか?
    人のものを勝手に拝借するな。改造もするな。せめて許可を取ってからやれ。というか色々人としてどうなんだ。
    などなど、ノイマンの脳裏にはハインラインに対して様々な単語の羅列が並ぶのだが、好き勝手に行動しているように見えるハインラインからひとつだけ分かることがあり、それがノイマンを困惑させている原因になっていた。

    「…誕生日を祝われて悪い気はしないが、これは怒るべきところなのか…?」
    「祝う気持ちはあるみたいだから、素直に喜べばいいんじゃね…?」

    そう。ハインラインによるハロの無断改造は、ただただ純粋に善意からの行動であることだけが伝わってくることがノイマンを困惑させているのだ。
    あのハインラインが、プライベートに関しては分からないが仕事に対しては自分にも他人にも厳しく、容赦や無駄なことは一切しない男がわざわざノイマンの為に時間を費やし誕生日プレゼントを用意したことが驚きでならない。

    『ノイマン大尉、先程から応答がありませんがもしや聞こえていないのですか? いや私のプログラムは完璧なはず。そんなことは』
    「あー、えーと、聞こえています。困惑もしていますが」
    『困惑? 何故』
    「何故って、アンタな…」

    自分の行動がなにがダメだったのか、というかなにがノイマンを困惑させているのかすら微塵も分からないと言わんばかりのハインラインの声色にノイマンは大きく溜息を吐いた。
    我が道をゆくハインラインに遠回しに言ってもあまり効果がないということを思い出したノイマンは隣で肩を震わせているチャンドラを一瞥するとハロに向かい合った。

    「色々言いたいことはありますが、誕生日プレゼントということですので、一応受け取っておきます」
    『ありがとうございます。来週の合同演習の際に直接追加機能の説明をしたいと思っているのでご都合が良い時間を連絡してください』
    「いや別に、そこまでしていただかなくとも」
    『私にとって貴方との時間はなによりも優先すべき事項であるというだけです』
    「…おいチャンドラ、笑うな」
    「くくっ…、いや、どうぞお構いなく…いってぇ!!」

    ハインラインの言葉に深い意味はないと分かっている。
    しかしどこかコミュニケーション能力が欠けているが故のハインラインの純粋で真っ直ぐな好意に不意をつかれたノイマンは、少しばかり赤くなった顔を隠すように声を上げて笑っているチャンドラを小突いた。

    『申し訳ありません。こちらから掛けたというのに無能な部下達から呼び出しが掛かりましたのでこれにて失礼いたします。それでは、ノイマン大尉。よい誕生日を』
    「あ、ハインライン大尉、」
    『ツウシンオワリ! ツウシンオワリ!』

    ノイマンの声は届くことなく、ハロの音声はいつものプログラムの声に変わり、青く光っていた目も見慣れた色に戻った。
    受け取るとは言ったが礼を言い忘れたと肩を落とすノイマンに、なんだかんだそういう所は律儀だよなお前、とチャンドラはノイマンの肩を叩く。

    「ま、あとでメッセージでも送っとけって。とりあえず飯行こうぜ」
    『ゴハン! ゴハン!』
    「それもそうだな…」

    その後二人は官舎に置きに戻るのも面倒だとハロを連れ立ったまま行きつけの店で昼食を取り、今日の予定はノイマンの誕生日プレゼントを買うことも兼ねていたので大きなショッピングモールへ向かった。
    いつからかどちらかの誕生日が近くなると二人で出掛け、その日の食事代と自己申告制の欲しいものをプレゼントするというのが恒例となっていたのだが、ぴったりと非番と誕生日当日が被ることが久々でノイマンはどこかむず痒い気持ちを覚えながら食事代とノイマンが欲しいと言った書籍代を払うチャンドラを見ていた。
    そのままその他諸々の買い物とついでに夕食も軽く済ませてから官舎の自室へ戻ったあと、ノイマンは端末を取り出してハインラインへメッセージを送った。

    『ハインライン大尉。昼間は言いそびれてしまいましたが、改めて誕生日プレゼント、ありがとうございました。(ただ、人の物になにかする時は事前に断りを入れてください。困惑しました)来週の演習については○時以降なら都合がつくと思います。それでは、おやすみなさい』

    「これでよし…。ハロ、今日は楽しかったか?」
    『タノシカッター!』
    「出掛けるのに連れていくことはなかったからな。ったく、どうやって改造したかは知らんがハインライン大尉も物好きだよな」
    『アーノルド! コレ!』
    「ケーブル…? 端末に繋げればいいのか?」
    『ハヤクハヤクー!』

    突然口を開き自身からケーブルを伸ばしたハロを怪訝に思いながらも、ノイマンは備え付けの端末にコードを接続すると、ピピッと音を立てフォルダが表示された。
    【picture】と名前が振られたそれを開くと、中には数十枚の画像データが入っているようだった。
    どこか見覚えがある気がするサムネイルに首を傾げながら画像を拡大表示すると、それは今日一日チャンドラと訪れた行きつけの店とショッピングモールの中の画像だった。
    まさか、と別の画像を表示すると、ノイマンとチャンドラがそれぞれが写っているものや、下から見上げるようなアングルで二人が写っているもの、たまに真っ黒でなにも見えないものなど、どう見てもハロ自身が撮影したと思われる写真ばかり入っていた。

    「まさか、カメラ機能もつけたってことか…?」
    『テヤンデーイ!』
    「…はぁぁぁ~~~」

    自慢げに両手を上げるハロにノイマンは頭を抱えた。
    どこかピントがボヤけた写真ばかりなのが少しの可愛げを感じさせる気もするが、とはいえこうも勝手にあちこちで写真を撮られるのは困るもので。
    今確認できたものは市街地の写真しか無かったから良かったものの、自分は軍属の身で、軍施設内では外部に漏らしてはいけない機密情報などもそこら中にあるわけで。
    ハロを部屋から連れ出すことはあまりないが、それでもやはり少しばかり、いやだいぶ問題である。
    本当になんなんだあの技術大尉は。
    素直に感謝のメール送った後にこのカメラ機能気づいたのが余計居た堪れないじゃないか。

    「来週、覚悟してろよ…」

    ノイマンは地を這うような声で来週の合同演習で諸々問いつめてこんな機能外させてやると決意を固めて、そして立ち上がって部屋を出た。
    思うことは多々あるが、ハインラインも『よき誕生日を』とも言っていたし、まだ少しばかり時間が残っている自分の誕生日の話のネタには丁度いい。
    折角だからとことん楽しんでやろうと隣室のチャンドラの部屋の呼び鈴を鳴らしたノイマンだった。


    ---------------------

    補足
    ・ハロの魔改造方法
    →ハイは本当にプラントにいるので、ハロには端末越しにリモートで色々追加した(実は協力者がチャでもいいな~と思ったけど、冒頭のセリフと合わなかったので有耶無耶にした。先に絵描いちゃったから仕方ないね。好きに解釈してください)

    ・カメラ機能
    →新しくカメラを搭載したのではなく、元々ハロに搭載されてる空間把握機能?モニター?をちょちょいと弄ってデータを保存=写真を撮れるようにしただけ。この後ノイに外すように言われるけど『貴方の声紋認証でしかシャッターを切れないようにします』とか言われて丸め込まれて結局そのままになる。ハロでたまに写真撮るようになるノイ可愛いね。ピンボケしがちなのはちゃんとハイに修正される。


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