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    雑入籍ノイチャの設定でチャ誕SS(大遅刻)

    今日はチャンドラの誕生日でもある1月11日。
    偶然にも元AA下士官四人の休日が揃って取れそうだからチャンドラの誕生祝いを兼ねて飲みにでも行くかと計画していたのがひと月前。
    しかし諸々の事情で年末年始を忙しなく過ごすことになり、ニューイヤーというには少し遅れたが毎年恒例のラミアスとフラガ主催のAAクルーを中心とした新年会を開こうと決まった日も1月11日で。
    偶然なのか必然なのか、果てさて被ってしまった日程にどうするかとなったところで、「みんなで飲めばよくね?」という主役であるチャンドラのひと言で四人の飲み会が大人数の宴会に変わったのはいいのだが。

    あちこちから酒が呑み交わされては楽しげな笑い声が響く心地よい喧騒の中、ノイマンは一人黙々と酒を飲み続けていた。

    チャンドラも会場についてすぐの頃はノイマンの隣に座っていたのだが、乾杯が始まると同時に今日の主役でもあるからとあちこちのグループに連れて行かれては楽しそうに酒を飲んでいるようだった。
    今も少し遠くから聞こえるチャンドラの笑い声を耳に入れながら、ノイマンはまたひと口酒を流し込む。
    普段のノイマンであればすぐ隣で久しぶりに再会したからと会話に花を咲かせているトノムラやパル、ミリアリアやサイ達との会話に混じるのだが、何故だか今はその気分にならず、酒を飲む手が止まらない。

    そのひたすら酒を飲むノイマンが周囲からどう見えているのかは分からないが、決して、決してチャンドラが隣に居なくて物足りなさを感じているからでは無いとノイマンは自分に言い聞かせながらまた新しいグラスを積み上げていると、小一時間ほどぶりにチャンドラがノイマンの隣へ戻ってきて。

    「あ、やっと戻ってきた」
    「また随分と長く掴まってたね」
    「いやぁ、人気者は困っちゃうよなぁ」
    「ふふっ、でもチャンドラさん、今日お誕生日なんですよね?おめでとうございます!」
    「おめでとうございます」
    「お、二人ともありがとな~!」

    チャンドラはアルコールで染まった赤い顔と平素より少しばかり高いテンションそのままに、気にかけている妹弟分であるミリアリアとサイからの祝いの言葉に機嫌がよくなる一方だ。
    それに対してノイマンの心の中ではどこが面白くないと少しばかり負の感情が募って行くのを感じながら、それを飲み込むようにまたひと口と酒を煽る。

    「んで、なんでお前はそんなに飲んでんの?」

    ようやくノイマンに向き合ったチャンドラはノイマンの前に積み上げられた沢山のグラスを見て首を傾げた。
    明らかに普段より多い酒量にチャンドラは少しばかりノイマンに身を寄せて、ノイマンの顔を覗き込む。
    その拍子に互いの膝が触れることになったのだが、今更この二人にとってこの程度のスキンシップなど当たり前なことで、本人達も特に気にした様子はなくそのままにする。

    ノイマンの視界に飛び込んだチャンドラの顔はアルコールで赤く染まっていたが、カラーレンズ越しの薄水色の瞳にはしっかりと意識が宿っていた。
    ノイマンは一瞬だけサングラスの隙間から見えたその薄水色に無意識とゴクリと喉を鳴らしたのだが、なにも喋らないノイマンにチャンドラは頭に疑問符を浮かべるばかりで。

    「なぁーに無視してんだよ、つれねぇなぁ。なになに? 俺が居なくて寂しかったとかぁ?」

    そういいながらチャンドラは自身の肘でノイマンの身体をつつく。
    アルコールが入っていつも以上に間延びした声で揶揄うチャンドラにされるがままになっていたノイマンは静かにグラスを置いた。
    そしてその手で己に触れてくるチャンドラの腕をゆるりと掴むと、もう片方の手でチャンドラの後頭部へ手を伸ばして。
    チャンドラの項を捉えた手に力を込めたノイマンは、そのまま引き寄せたチャンドラの唇を無理やり奪った。

    「はっ?! ちょ、んッ~?!?!」

    がぶりと噛み付いたと言っても過言ではないノイマンからの唐突な口付けにチャンドラは反射的に声を出そうと唇を開いたのだが、ノイマンにとってはそれはただの好機でしかなかった。
    平素より熱を持ったノイマンの舌はチャンドラの咥内に滑り込み、チャンドラの弱点を的確に狙う。
    咥内で暴れるノイマンの舌使いにチャンドラの悲鳴は甘い声に変わるが、それらも全て互いの咥内に飲み込まれて。

    「ぷは…! っ、おい…! こら…ンーッ…!」

    チャンドラはノイマンから逃れようと肩を押したり身体を捩ったりと抵抗を示し続けているのだが、ノイマンはそれらを全て聞き入れないし、むしろ逃さないと言わんばかりにチャンドラに体重をかける。
    唇を奪われたまま押し倒すように体重をかけてくるノイマンにチャンドラはなけなしの腹筋でなんとか堪えようとするも、元より不利な体勢であったチャンドラには勝ち目もすらなく、ついぞ座敷に押し倒されてしまって。
    それでもノイマンの猛追が止まることはなかった。ノイマンが両耳を塞ぐ形で頭を抑えているためあれだけ騒々しかった周囲の音も耳に入らず、今のチャンドラに聞こえるのは口内を蹂躙する互いの舌が立てるぺちゃぺちゃと卑猥な水音だけだ。
    頭に響く音と呼吸さえも奪われる荒々しい口付けにチャンドラの思考は段々と霞みがかり始めた。

    「ンぅ……っ、……!」

    チャンドラの目尻からひとしずくの涙が零れた。
    それは少しの息苦しさと少しの性感によって自然と浮かんだ涙だったのだが、ノイマンを制止するには十分効果があったようで、ノイマンは自身の手に伝わった濡れた感触にようやっとチャンドラの唇と両耳を解放することにした。
    チャンドラの咥内を蹂躙し尽くしたノイマンが距離をとると、二人の間には名残惜しそうに銀糸が伝った。
    ノイマンは自身の親指でチャンドラの濡れた唇を拭ってその糸を断ち切ったのだが、それでもどこか離れ難いとチャンドラの頬に手を添えたままにする。
    チャンドラは無意識にそのノイマンの手に顔を預けながら足りなかった酸素を補うように荒々しく息を整えると、自分の上に乗ったままのノイマンを見上げる。
    涙でぼやける視界では部屋の明かりを背負ったノイマンの表情を捉えることはできなかったが、それでもどこかむくれている雰囲気だけは察したチャンドラは小さく首を傾げた。

    「おま…急にどうしちゃったわけ……?」
    「……いないから」
    「はあ…?」
    「…せっかく誕生日祝ってやる気でいたのに、色んなところで捉まって帰ってこないから、ヤケ酒した」
    「ほ、本当に寂しかったんかい……」

    ノイマンの突然の暴露に涙も引っ込んだチャンドラは自分に跨っているノイマンの太ももを優しくタップするとノイマンは素直にチャンドラの上から退いて、元いた場所に腰を下ろした。
    よっこいせと声を上げながら腹筋を使い上半身を起き上がったチャンドラはひとつ大きな溜息を零しながら押し倒された際に乱れた髪の毛と衣服を正すと、そのままノイマンの髪の毛をぐちゃぐちゃにするようにかき混ぜた。

    「おりゃ!」
    「?! ちょ、なにするんだ」
    「無理やり襲われた仕返しだよばーか!」
    「はぁ…?!」

    チャンドラはノイマンの髪を思う存分にぐしゃぐしゃにしては普段は見ることの無いあちこちに飛び跳ねた髪型のノイマンにケラケラと笑い声をあげる。
    ノイマンはチャンドラの手から逃れようと身体を動かそうとしたものの、多量に摂取したアルコールが身体の動きを鈍くさせ、チャンドラがわざと上からガシリと頭部を掴むように抑えつけているため、振りほどくことは出来なかった。

    「あっはっはっ!ぐっちゃぐちゃ!」
    「おいこらチャンドラ、いい加減に…!」
    「へいへい、わーってるよ。元に戻してやるからちょいまちなー」

    ノイマンの髪の毛を思う存分にぐちゃぐちゃにして満足したチャンドラは本気の怒りを買う前に潔く撤退した。
    所々に跳ねたノイマンの髪に優しく指を通しながら、チャンドラは再びノイマンの顔を覗き込みながら小首を傾げた。

    「つーか、心配しなくても俺が帰るのはお前の隣だって約束したじゃん?なに急に不安になってんの?」
    「……なってない」
    「なってないといきなりキスなんてしてこねぇだろ。ほら、いい子だから機嫌直せ?な?」
    「うるさい。子供扱いするな」
    「寂しがり屋なアーノルドくんにはこれくらいがちょうどいいんだよ。照れちゃってか~わいい~!」
    「お前…!」

    自分でぐしゃぐしゃにしたノイマンの髪の毛を元通りにしたチャンドラはにやにやと緩んだ表情を隠さずにノイマンを揶揄い続ける。
    そんなチャンドラにノイマンが照れ隠しで再び向き合った瞬間、後方から静止の声がかかった。

    「あ、あのー、二人とも?」
    「「はい?」」

    いくら酒に酔っていても直属の上司であり、自分たちがこれまでを生き延び、これからも着いてゆくと決めたラミアスの声にはほぼ条件反射のようにノイマンとチャンドラはラミアスの声に顔を上げた。
    そこには困り顔のラミアスと苦笑いのフラガがを筆頭に、ぽかんとしているミリアリア、サイ、カズイ、ヒメコ、キリシマ、微笑ましそうにしているキラ、ラクス、あちゃあと頭を抱えているトノムラやパル、やれやれと肩を竦めているマードック、その他大勢のAAクルーがいて。

    「えーと、貴方たちの関係性についてはその、私たちは知っているしそれについて何も言うことは無いのだけれど…。その、事情も知らない人達もいるでしょうし、一応人目もあることは気にしましょうね…?」
    「まぁ俺たちが言えた義理じゃないけどな?」
    「ちょっとムウ、今は黙って!」

    そんなラミアスとフラガの声を耳に入れながら、ようやくここが飲み会の場であることとを思い出したチャンドラとノイマンは二人揃ってアルコールとは違う意味で顔を真っ赤にして。

    「ッ~!! こっ…の、馬鹿!!!場所考えろ!!!」

    ぷるぷると震えながら堰を切るように叫んだチャンドラによって炸裂された平手打ちがノイマンの綺麗な後頭部にヒットした。
    珍しく容赦のないチャンドラの本気の平手にノイマンは頭を抱えて痛みに悶え苦しみ、チャンドラは顔だけでなく首まで真っ赤にして今にも泣きそうになっているのだが、そんな二人の首にはいつ何時も外されることの無いリングが通ったネックレスが静かに揺れていて。
    涙目になりながらも自分の後頭部を擦りながら「場所を考えたらいいのか?」と言ってきたノイマンにチャンドラは「もうお前ほんとやだ!!!」と叫びながら机に突っ伏した。

    この後は拗ねたチャンドラにご機嫌取りをするノイマンの姿や、ラミアスから実は二人が籍も入れている正式なパートナーであることを知ったラクスを筆頭とした恋バナに興味津々な女性陣に質問攻めにあう二人が見れたりもするのだが、如何せん人に話せるほどのまともな経緯でもないことを自覚している二人はたじたじになることしか出来なくて。
    それでも例年とは少しばかり毛色の違った盛り上がりを見せた新年会兼チャンドラの誕生日会を二人は心ゆくまで楽しんだ。
    新年会を終えてトノムラとパルと四人だけで少しだけ飲み直した後、無事に二人で住んでいる部屋に帰宅したノイマンは、密やかに用意していたプレゼントをチャンドラに渡した。

    「誕生日おめでとう」
    「あ、これ欲しかったやつじゃん! ありがとなぁ」

    例えば食事を共にすることだったり、誕生日を祝うことは友人関係としても可能な事だ。
    しかしノイマンは、チャンドラと友人関係で留まって終わることが嫌だった。
    チャンドラはそのノイマンの気持ちを知って、自らの意思でノイマンに応えた。
    入りこそは歪であったが、そんな所も自分達らしくていいと笑いあった愛おしく想う人が、自分の贈ったプレゼントを手にしながら嬉しそうににひひと笑っていて。
    これ以上幸せなことがあるものかとノイマンは胸に愛おしさが溢れるのを感じながらチャンドラに手を伸ばして優しく抱き締める。

    「んだよー、まだ甘えん坊か?」
    「ああ、沢山甘やかしてくれ」
    「今日はお前の誕生日じゃなくて俺の誕生日だっつーの。ったく、仕方ねぇなぁ~」

    ノイマンの腕に素直に収まったチャンドラはいつになく素直なノイマンに頬を緩めながら自身のサングラスを外すと、ノイマンの唇にちゅ、と優しい口付けをおくった。
    ほんの一秒にも満たない口付けでもそれは紛れもなくチャンドラからの愛情の現れであり、その事実がノイマンの心を満たして、もっともっとと際限なくチャンドラを求めてしまう。

    ノイマンとチャンドラは抱擁の姿勢をそのままに息が触れ合うほどの至近距離で見つめ合うと、互いの瞳の奥に揺れる情愛の熱に誘われるがままに再び唇を重ねる。
    数刻前の一方的なものではない、互いの熱を分け与えるように重なった唇はどちらとともなく開かれて、舌を絡めあっては溢れる唾液を奪い合って。
    二人の境界線さえも溶かしてしまいそうな深い口付けを終えた頃には、もう互いしか見えなくなっていて。

    「…もっとプレゼント貰えるって思っていいんだよな?」
    「ああ、沢山くれてやる」

    既に互いの熱で浮かされきっているというのに、それでも煽るように挑発的な笑みを浮かべあうノイマンとチャンドラはそのままベッドへと縺れ込んだ。

    これより後のやり取りを知るものはノイマンとチャンドラと、二人の首元で揺れる二つのリングのみである。

    愛しき者達に幸多からんことを。


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