春の歌 おい危ないぞ。と言っても紬はまるで聞いていないようだった。
「見て!こっちも咲いてる!」
紬は嬉々としてそう言いながら丞の方を振り返る。
店を出たすぐそばの街路樹は桜が植わっていて、今まさに見頃を迎えていたのであった。
今夜の宴会の目的は花見だったが、集まった先は安定してガイのバーだった。
大きな窓からちょうど見える桜がとてもいい具合だという報告を朝食の席で受けるや否や、花見をするならば今だ!と誉が主宰を務めたのである。
二十時ごろから始まった緩やかな宴会は、春の新メニューとすっきりとした味わいのアルコール、そして話に聞いていた通り窓の外に見える見事な桜がこれでもかというほどに花見気分を演出してくれた。
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