食べちゃいたいほど好きなのだもの
オペラオーさんが怪我をした。石で左瞼を切ったらしい。
その晩、彼女のことを夢に見た。夢の中で、私はオペラオーさんの喉笛に噛みつき、甘いにおいのする血の味に舌鼓を打っていた。そこに美しい花が咲いていたから、立ち寄って蜜を舐めてみたくなったのだ。夢の中で、私は綾模様の蝶だった。私は無心で唇と喉を動かした。花は美しく、よい香りがし、極上の蜜をその身に隠し持っていた。私は蜜をすべて掘り尽くし、陶然とした気分を味わった。そうして突然恐ろしくなった。オペラオーさんは精巧な人形細工のように、物言わず床に身を横たえていた。いきおい身を引いてしりもちをつくと、たあん…と音が高くに響いた。そこは劇場だった。私たちは舞台の上で、いつものように三文芝居を演じているのだった。
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