「午前四時の胸懐」.
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貴方に会う為に私は目を開く
貴方に会う為に今日は文字を習った
貴方に会う為に今日も言葉を知る
貴方に会う為に私は自分に想いを廻らせた
貴方に会う為に自分がしたい事をみつけた
『いまはなにをしていますか? わたしは大きくなったら――』
小さな手で、可能な限り思いつく言葉で。
綴られていく文字の列を眺めた今の私は、幼い頃の自分に語られている。かさりと音を鳴らしながら折り目に沿って再び折りこむと、文字が連なるそれを茶けた封筒へと再び寝かせた。
『はやくあなたに会いたいです』
「早く貴方に会いたい」
様々な事があった中で、頑張って今日まで生き抜いた私に早く会いたい。
〝その時〟にはきっと、「色々あったけど、悪くなかったね」って言いたい。経験が刻まれたしわと笑みによるしわを眺めて「がんばったね」と言いたい。
だから私は今日も歩く。いつかの自分に会う為に。
自分という者を守り、自分という者を疎かにせず、自分という者を学ばせて成長させている。そんな自分にふと言いたくなったのだ。
「ありがとう自分。これからもよろしくね!」
今日届くように定められていたその手紙。再び眠るその子が寂しくないまま「またいつか」へ届ける為に、今の私も新しく綴る事にした。
- 了 -
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エブリスタ「三行から参加できる」用に新しく書いたもの。お題は「あなたに会いたい」。
小学校の頃、未来の自分に宛てて手紙を書く授業があったのを思いだした。書いたものが短かったので、手元にはないけれど今でも内容を覚えている。この話の人物の元に届いた言葉とは違うけれど、「自分らしいな」と思う言葉だった。
※ポイピクの仕様上で、拡大するとなぜか題と本文が詰まって読みづらいので、出だしに点をうっています。特に本文とは関係が無いので気にしないでください。