「あ」
花だ。
横を歩いていた相沢が立ち止まり、そう呟いて横道に逸れる。勝手にどこかに行くな、と心の中で言いつつ屈んだ相沢に近づく。
「花って、小さい頃はそのへんに咲いてた気がするのに、今はそんなに咲いてないですよね」
その言葉に、普段の景色を振り返る。まあ言われてみればそうかもしれないけど、という程度であまり減った印象はないように思えた。「視線が高くなって見えなくなっただけじゃない?」と返せば「にゃはは、そうかもです」と返ってきた。
「綺麗に咲いてるなあ」
「これはマーガレットだね」
まーがれっと、そう呟いて目を瞬かせるのを見るに、知らなかったのだろうか。
「マーガレットって言葉は聞いたことあるんですけど、この花のことを言うんですね」
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