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    admih_48b

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    admih_48b

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    さにばじ。リボンを買ってみたバジル。

    キミに似合うボクになりたい「どうかな?」
     一目でわかる。似合わなかった。
     リボンそのものは、可憐な彼に合っている。頭に巻いて、結び目を側頭部に持ってきて、リボン結び。彼が微笑むと、リボンも揺れた。
    「良いと思う。ただ——黒は、やめたほうが良いかも」
     異質。明らかに浮いていた。いや、沈んでいると言ったほうが良いのか。
    「そっか……」
     バジルは残念そうに呟いた。もっとほかの言い方の方が良かったかもしれない。
    「でも、今日はこのリボンつけていようかな」
    「どうして?」
    「最近は黒がブームなんだ」
     花が咲くような笑顔を見せた。最近、最近。彼に何かあっただろうか、と思い返した。最近の、黒に関する出来事と言えば……。
    「……僕の色?」
    「うん。黒いものを見てると、サニー君を思い出すんだ」
     リボンの端を指でいじりながら、頬を赤く染めている。そうだ、僕達は少し前まで親友で、つい先日、恋人になった。
    「でも、確かに黒リボンは今日で見納めにしたほうが良いかも。今日だって、サニー君に手伝ってもらえなきゃ、ここまで結べなかったし……」
     告白してきたのはバジルだった。あとから聞いた話によると、もうずいぶん前、マリがいた頃から僕のことが好きだったらしい。僕が、オーブリーに恋をしていたあの頃から。
    「他に何か黒いもの……あっ、黒百合は育て始めてるんだよ。まだ芽も出てないけどね」
     似合っていない、と言ってしまった。わずかとはいえ、彼を落ち込ませてしまった。
     バジルの話に頷きながら、ずっとそのことを考えていた。


     その日、サニーはバジルの家に泊まる予定だった。ポリーも祖母も病院に行っていて、家には二人だけだった。久しぶりにピザを食べよう、とバジルは上機嫌でピザ屋に向かっていった。サニーはその間、バジルから離れてスーパーに消えていった。
     焼き立てのピザを受け取ったバジルは、先に家に帰っていた。夕飯の準備をして、いつ彼が帰ってきてもディナーを始められるようにしておく(と言っても、ソファーの前に簡易テーブルとピザ、そして飲み物を置くだけなのだが)。ふと、窓に反射した自分の顔が見えた。
    「……黒」
     ああ、彼の言った通り、色が似合っていない。リボンは合っているけれど、色が、悪い。
     ——君に黒は似合わない。
    「……どうしようかな」
     夜空よりも暗いこの色を、美しいと思った。彼のように穏やかで静かな黒を、どうしても身に着けたいと思った。
     ため息をついていると、ふとサニーが窓の前を横切った。あ、と呟いて玄関を開ける。ノックをしようとしていた驚き顔のサニーと目が合った。
    「おかえり。もう準備できてるよ」
    「ありがとう」
     サニーはまっすぐにソファへ向かっていく。バジルもそれにスキップしてついていくが、ふと気が付いた。サニーは手ぶらだ。
    「あれ、何も買ってないの?」
    「ああ、うん。いいのがなくて」
     二人でソファに座った。
    「何を買おうとしてたの?」
    「……えっとね」
     サニーは手を伸ばし、バジルのリボンに触れる。
    「ずっと考えていたんだけど」
    「うん」
    「このリボンは、もっと似合うところがあるような気がする」
    「そうなの? どこ?」
     サニーはリボンを優しく解き、バジルの左手を取る。
    「多分、黒に一番似合う色は」
     リボンの端を取り、左手の——薬指に、結んでいく。
    「白だと思う」
     しゅる、と音を立てて、リボンの指輪が完成した。
     黒は、彼の白い指に良く映える。
    「……わ、わわ……何か、その、おしゃれだね……」
    「似合ってるよ」
    「えへへ、ありがとう……でも、これ……」
     端の方で結んだからか、リボンの紐が片方かなり余っていた。
    「こっち側、どうしよう」
    「あのね」
     サニーは自分の左手を差し出した。
    「僕にも、結んでほしい」
     左手の、薬指に。
    「……出来る、かな」
    「やってみて」
     バジルは緊張しながらも、黒いリボンをサニーの薬指に結んでいく。彼の色はバジルよりももっと白かった。
    「……出来た。ちょっと君より不格好だけど」
    「ありがとう」
     二人を結ぶ黒いリボン。お互いの肌に良く似合っている。
    「……」
     左手越しに見るサニーは、自分を愛しそうに見つめている。心臓が高鳴って、愛しくなって、隙が溢れて、思わず胸に飛び込んだ。わ、とサニーは押し倒される。
    「こういうの、どこで覚えてきたの?」
     サニーの心臓の音が聞こえる。
    「昔、小説か何かで読んだんだよ。ずっと覚えてて……」
    「……」
     きっと今日のことは忘れない。忘れようと思っても忘れられない。ずっと覚えてる。
    「サニー君」
     顔を上げて、彼の左手に自分の左手を重ねる。
    「えへへ、大好きだよ」
     甘えるように指を絡めると、サニーはそれを受け入れた。そして、「僕も」と呟いた。


     
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