2月14日が何を意味するかなんて、わざわざ言うまでもないだろう。そう、恋人達が愛を祝う日、バレンタインデーだ。
起源は諸説あるが、2月14日は家庭と結婚の神ユーノーの誕生日であり、ローマ皇帝の命令に逆らい、秘密裏に若い兵士達の為に結婚式を挙げていた聖ヴァレンチヌスがその罪を問われ処刑された日だというのが一般的だ。どうだ?為になったか?
オレの星じゃあ家族や恋人にプレゼントを贈る日って認識だったが、ヴァルキリーこと今原カイリによると、チョコレートを贈って愛を告白するって習慣があるそうだ。ヒヨン達の…まぁ、大元を辿ればクリプトの出身地でも。
聞けば製菓会社の戦略が発端で広まったらしいが、由来はもうこの際どうでも良い。ヒヨンとデビルがその習慣を知っている以上、オレは恋人として何某かのアクションを起こすべきだろうと考えているんだが、問題はここからだ。
情報元のカイリには「そりゃ好きな相手から貰えれば板チョコ一枚でも嬉しいけど、手作りだったら最高だよ」なんてアドバイスを賜った訳だが、いかんせんオレは包丁はおろか電子レンジに触れる事さえヒヨンに固く禁じられている。玉子を爆発させちまった咎によるもので、オレには激甘なデビルでさえこの件に関しては味方してくれなかったくらいだからどうしようもねぇ。
となれば既製品を買ってプレゼントするしかない。今まで気にした事なんか無かったが、言われてみれば確かにあちらこちらでチョコレートの売り場を見かける。そこに集うのは楽しげな女ばかりだ。
「通販すれば?」
流石のオレ様もあの中に混ざってチョコレートを選ぶ度胸は無くて、アネキに相談してみたらアッサリ解決策が見つかった。
「ウチらの実家が御用達にするようなブランドも、この時期は色々売り出してるみたいよ」
前半に皮肉を交えて、後半はきちんと役立つ情報を教えてくれた。つか、なんだよ、チョコレートの話知ってたんならもっと早く教えてくれよな。
「でもさ、アンタの彼氏甘いもの食べないんじゃなかった?」
「ヒヨンは食わねーけど…」
デビルは…あれ?デビルは?そういやアイツが物食ってんの見た事無くねぇ?酒かコーヒー飲んでる姿しか知らないぞ。
「…酒が入ってるチョコレートってあったよな」
「あるわね」
「多分あんま甘くないよな?」
「ビターなやつが多いんじゃない」
既にこの話題に飽きたらしいシェは端末を弄りながら生返事…かと思いきや、検索してくれていた。流石アネキだぜ。
「逆にチョコレート風味のお酒って手もあるわよ」
「へぇ、そんなんあるんだ」
「あ〜駄目だわ、結構甘いみたい」
チョコレートリキュール…ミルクで割ったり、アイスクリームにかけたり、か。オレは好きそうだがアイツら好みじゃ無いな。
「オレにかけて、舐めて貰うのはアリか…?」
「は?何か言った?」
「いやいや、何も?」
結局無難そうなトリュフの詰め合わせをポチッて、アネキと一緒にビールの缶を開けた。
「アタシか、エリオットあたりに一緒に作ってくれ!なんて言い出すんじゃなくて良かったわ」
「まじかよ、その手があったか」
「やめてよ!?ゲーム以外で怪我なんかしたくない」
え?失敗前提?チョコレートもレンジで爆発すんのか???