俺と恋仲の方は自分の上官で、年下で、そして人間ではなかった。街から離れた森の中、澄んで池底まで見えそうな綺麗な水の池がある。雪の山道を踏みしめながら二人で辿り着いたいつもの場所に、少尉はなんの躊躇いもなく軽々と地面を蹴って飛び上がると、軍服のまま冷たい池へと飛び込んでいった。バシャリと大きな水音がして、ざわざわと広がる波紋と驚いて逃げていく小魚達。ちゃぷちゃぷ。水面が揺れる。そして暫くするとしん、と池の表面は静かになって、そろそろか、と自分が思うと同時に水底からきらきらとした眩しい光の塊が飛び出してきた。
まばゆい程の金色。
黄金と同じ色をした艶やかな下半身は魚の尾であるが、上半身は健康的な褐色の肌に前を寛げた軍服が水を吸って色を変えている。
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