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    ドラグルージュのセッションをしてテンション上がって書いた2次創作小説です

    碧玉卿よ「貴卿は、強者であることに指して興味はないようだ」
    それほどでもないさ・・・・・・・・・
     
     ドラク家直下ガミオ領城には常に強い風が吹き荒ぶ。
     曰く、太陽の呪いを最も受ける、定めなき神の手から溢れた塵どもが、眩しき物の殻から我ら血族ヴァンパイアを滅ぼさんと言うのだ、だからガミオの領には常に黒鉄くろがねで鍛えられた鉄柵が欠かせず、領地の都市部全体を覆っている。願い纏う騎士の血による守りの祈りを至高とする者、この血の匂いの強い土地を無骨だと好まぬ者は“鳥籠とりかご”とそしる。
     だが、実際に訪れたことのある者なら誰もがわかることがある。
     この領地で生きる人々の目は常に希望と喜びが溢れている……。それは、まるで潤うほどに・・・・・、砂煙を纏い威厳を比較しにした鉄柵も、往来を歩む人の足並みがあるのも闘争を悦び、痛みを受けた騎士たちが太陽から奪い取った神の土地である事に、皆が敬意と誇りを抱いているからだ。
     太陽領土奪還戦線に幾日、不眠不夜の闘争を続け、見事土地を奪還し勝利に導いた功績で領主の地位を賜った生きた英雄蛮討ばんとうガミオ・フォン・ドラクーー彼を称えて領民は鳥籠を王冠に例え、東方に見える太陽の永遠に放つ輝きを背にすることから白夜城びゃくやじょうと言う。
     そんな英雄・ガミオは今は刃を下ろし、領主として椅子に座っている。机に置かれた貴族用のティーカップが子供のように見える恵まれた体躯に、鍛え上げられ黒鉄のような・・・・・・雰囲気を持ち、不老故戦場を離れても尚逞しい男である。いずれかの闘争を忘れないため、あえて眼帯の奥の傷を残し、切り揃え身なりを領主として整えられてはいるが未だ獅子を思わせるような眼差しで、黒い外套を纏ったまま、執務室に腰を落としている。
     花の蔓の意匠の机や椅子は、彼の荒々しい雰囲気に似つかわしくないとも言えるが、高級な家具のいくつかは領主のためにあるからか馴染んでいったのだろう。
     
     そんな執務席からの視線の先、多少開けた場所には来客用の長椅子に、白い髪の青年が寝転んでいる。名はヒスイ・フォン・ローゼンブルク。字のまま碧玉へきぎょく卿と言う名乗りを持ち、ローゼンブルク家に叙勲された後、領地を離れ流れついた騎士だった。青年と言ってはいるが、彼が自分を女だと言ったことも男だと言ったこともない容姿は中世的で、誰も寝床に上がったことはない。・・・・・・・・・・・・・・・だから若々しい外見を汲み取ってヒスイを他の騎士たちは青年と一括りにする。
     長らく国中を巡り、その日暮らしをしていたと言うが、その叙勲歴は100年を優に超える。だが、騎士になる前の経歴は誰も知らない・・・・・・。醜聞の恐れを抱いたものが調べさせても、ヒスイ・・・と言う名の人物にたどり着かぬ、謎深き騎士だった。細い手足に色白い身体はガミオ領に集まる丈夫ますらおの如き騎士たちの軍団の中では異彩を放つが、彼の実力と逸話が醜聞の一切をかき消していた。
     そんな謎多き騎士もここ数年ガミオ領に身を寄せている。ヒスイ自身は背負う紋章エスカッションの太陽が地の果てに光輪を輝かせるから憧れてしまう。と謳うが、真偽は定かではなく確かめようもない。だから領主のガミオ自身も彼に忠義を求めたことはなかった。
     こうして領主の執務室で勝手に微睡むヒスイにガミオは声をかけたのだ、戯れに、強くあることに執着しないヒスイと強さこそ彼の立場を支えにするガミオには、時々相容れないことがあり あえてガミオは言葉の勝負をかけるきらいがあった。
    「何故 騎士として叙勲されても尚、強さを求めない?」
    「んー……」
    気分屋のヒスイがその問いや勝負に乗るか乗らないかはその時の気分で、おおよそ半々くらいの確率である。ガミオの遊びが始まったのを感じてヒスイはボンヤリと考え、彼の誘いに乗ることにした。
    「挫折したことがある。
    ……腕っ節ではなくて、別の実力が私の強さであったときに、認められずに挫折した。
    認めなかった者たちは、僕が騎士でないから、俺がただの人間だから認められないと言ったんだ そうして立場を思い知らされる日々が続いた」
    ガミオはそれが、彼が騎士になる前の話であることに気づいた。滅多にない話である。ヒスイの視線もガミオから外れ、代わり映えのない天井を見つめながらその実視線の意味は望郷のように感じられる。
    「それで? 貴卿は騎士を目指したのか」
    「目指さなかった……、騎士にならねば伝わらない言葉に意味はないと思ったから……それでも、成績が良かったから叙勲されてしまった」
    まるで、騎士になどなりたくなかったという口振りは、長い年月でヒスイが見て来た、感じてきたものの根幹にある寂しさのようなものだった。不老不滅の騎士となり100年余りの営みで、ヒスイの実力や人格を否定するようなことは生前・・と比べて全くと言っていいほどなく、人であった頃の言葉は人々に届くようになったのが力や立場のせいであることが歯痒かった。
    ガミオは心底理解ができない。力を追い求める男であるから、力を求めない理由が十分な力を手に入れてることに起因することを慢心だと感じる。だが、本来ここからいくらでも責めようのあるヒスイの言葉より、首を傾けもう一度ガミオを見遣る新芽の森の様な複雑な色合いの碧眼が、自分自身を太陽を見るかのように目を細め微笑んでみせたことに驚いた。
    「わたしが……君のことを気に入っているのは、君が騎士だから認められたわけじゃなくって、戦い続けたから領主になったところだよ」
    「お前がそう言おうとも、闘争が好きだった。それだけに過ぎないのだがな」
    「鍛錬は常に辛く苦しいものだから、それを手放さずに楽しめるのは……多分いいことだね……」
    いよいよヒスイも意識を手放しそうな微睡まどろみの気配に不穏を感じ、体を起こす。全力で細い体を伸ばし、頭をブンブンと振ると白髪が大げさに揺れる。
    「もう行くのか?」
    「寝てくる……肌を見られたくない。お茶ありがとうー」
    ガミオは軽やかに言うヒスイ感謝の言葉に心地よい返しなどしない。だから視線を交えるのみでヒスイもそのまま執務室を出て行った。
    ガミオはその遠ざかる軽い足音を聞きながら、もう一度書類に目を通す。根深い傷を持つものが、この死地に最も近い領地で羽根を休めることは多い。イングリットだったか……ガミオは考える。今ガミオ領では燃え上がり消え失せたジャルジ領の騎士達の幾人かは領内で預かることになっていた。野党に襲われ領主が拷問の上渇いてしまい、処分されたことにより領地が解散になった場所……そう言う、不幸によって失い、住処を移しても尚悪夢を傷を顔に出すものもいる、そう言う手合いの中でのヒスイはどうだろうか? と少し考えるのだ。立場を思い知らされる日々・・・・・・・・・・・・と言った。肌を見られたくないとも、騎士である前の心の傷に見当がついて、首を横に振る。
    ヒスイ・フォン・ローゼンブルク。彼の経歴を知るものはいない、そうあるべきと彼が望むのなら領主として叶えるべきなのだ……
    (領主として……? )
    ガミオは、そんな立派・・な自分な考えを自嘲的に笑った。本当は、あの美しい獣を本気にするための材料を探して、怒らせたいと言う願望があったのにアレは自身の心を穏やかにするから収まりが悪い。

    時折、ヒスイを見かけると地平線に見える太陽のかけらの光輪を眺めているのを見かける。紋章がそうさせるとあの子は言うが、ガミオにはそんな風には見えなかったのだ。遠いからこそ穏やかに空を照らす白夜のつぶはドラクルの騎士において死地である。栄光と、名誉ある騎士が最後に訪れる、ちりの場所そんなものに100年騎士の人生で焦がれ続け、いつもの笑みの絶えないやり取りの、些細な隙間の時に光を見つめる視線。諦めてしまったものが手に入ったこと、100年誰とも床を共にしたことがないこと、それが……その全てが自信を愛せていない証明に繋がるならば……
    ずっとあの獣は死ぬ理由を探しているのだ。

    (ヒスイは、潤す伴侶を見つければいい、お前を見つけて寄り添ってくれるものがいればいい。)
    友の茶を飲み、昔の話をして、感謝を言い合うといい。お前は、その相手を奪って殺してやれば、ようやく生き汚く、朽ちたくないと願いながら自分にその剣を向けることができるだろう。だから、早くヒスイには誰でもいいから愛して欲しいと思っている。
    そんな薄ら笑いを、お前は知ることはないだろう





    「私がいくら軽薄で、僕がどれだけ気が多いとしても、それは 貴方を深く愛していないと言う証明にはならなかったはずだ!」

    ヒスイの鋭い剣先が憎しみと強い愛情と、悲しみを纏って震えている。

    奪われたから怒るのか、愛したから涙するのか、そんなことはどうでもいい。

    ガミオははただ、久しく味わっていない潤いを味わうのみだけだった。
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