疲れ切っていた。いい加減にあのブラック企業からはおさらばしなければいけない。
そう思いつつ、なかなかに辞められない。次の就職先を探すのも面倒だからだ。いつもの終電で帰宅する。しかし、その日に限って、うたた寝してしまった。ハッと気づいたときは、まだ電車は走っていた。次の停車はどの駅なのか?もしかして寝過ごしてしまったか?と、佐々木は落ち着くためにも眼鏡の位置を直す。そこに車掌の声が聞こえる。
「次はーきさらぎーきさらぎー」
佐々木はその言葉にドキっとした。聞いたことのない駅名だ。寝過ごしてしまったのか。はぁ、とため息を吐く。仕方ない。その駅で降りて、タクシーを呼んで帰るしかない。なんて今日はついてないのだろうか。疲れた。早く帰りたい。