私の両親は「親」としての義務は果たしてくれたように思う。
食事を与えて、寝る所を与えて、勉強する環境を整えてくれて、服もいつも清潔なものを準備し、体が成長すれば体に合うサイズの服を購入してはくれた。
だが彼らに可愛がられたという記憶は正直、ない。
母は、自分の目に見えないものを追う息子を気味悪がっていたし、父は、そんな姿を見たくないと、仕事にかまけて、家にはほとんど帰って来なかった。
疎まれてはいなかったが、愛されてはいない、が子供心に感じたことだった。
そんな私に無償の愛を与えてくれたのは、母方の祖母だった。
幼稚園や小学校の長期の休みには、私は母に連れられて田舎の祖母の家に泊りがけで遊びに行くことが多かった。
祖母は「年々お爺ちゃんに似て来るわね」と皺の多い顔を更にくしゃくしゃにして私を見る。
その顔に気恥ずかしさを感じつつも、愛情を注いでくれる祖母の側では安らぐことができた。
ただ一つ母と約束をしていた。
『お化けが見えるフリをしちゃダメよ』
祖母にまで嫌われたくないと思った私は、母の言いつけを守った。
幸い田舎では『お化け』、これは後に『呪霊』と呼ぶとわかったが、自宅付近程、数も頻度も少なかった為、私は見ないフリをして過ごしていた。
だが。
ある夏の日。
その日は朝からいい天気で私は毎年恒例となっている、近所の山中にある公園へ祖母とお弁当を持ってピクニックに行っていた。
この地域に唯一ある、外から客を呼ぶスポットだったように思える。
公園には小さな神社が鎮座していており、祖母は必ずその神社でお参りをしていた。
小さな祠の中、小さな掌サイズの狐がいるのを見ながら、私も祖母を真似て、手を合わせた。
『傑、遊んどいで』
大きな公園には遊具がたくさんある。
外から客を呼ぶスポットとは言え、既にその公園は世間から存在が忘れられているのか訪れる人の数も疎らだった。
私は空いているブランコや滑り台で遊びながら時折祖母に目を向けると、祖母はやはりくしゃくしゃの笑顔を見せて微笑んでくれて手を振った。
夏の生い立ちを妄想しつつ、夏目線のシリアス展開の原作補完話。
アニメを見たというのもあるけど、やはり夏の行動を私なりに噛み砕いたものを一度書いてみたくて。
カプ要素は、一応傑硝、五歌前提で考えてはいるけど、ラブラブ要素はないかも。
需要はないとは思うけど自己補完の意味合いが強いと思う。