ちかくてとおい任務の帰途。
俺は外の景色を眺めるフリをしながら、車窓に映る笑顔を見ていた。
電話の相手は、俺の同期。
今から帰るという連絡と他愛ないおしゃべり。
声だけでわかる機嫌に頬が緩む。
俺相手にはこんな笑顔、見せてくれやしない。
眉を吊り上げ、声を荒げ、先輩ぶる。
俺より弱いくせに。
今日の任務だってそうだ。
一丁前に俺を先導するように前に立ちやがって。
ちょっとした物音にもビクビクするビビリの癖に。
それに。
初めて見た。
ってかかけられた。
歌姫の術式。
戦闘向きじゃないことは見えてたしわかっていたが、実際に経験すると、凄かった。
いや、俺の力だけでだって祓えるとは思ってた。
だが、いかんせん、不安定な部分はある。
それを補う為の歌姫の術式だった。
漲る呪力。
漲り過ぎてちょっとハイになって、建物が全壊したのは愛嬌。
まぁ、建物の持ち主に詫びをいれたり、関係各所に連絡していたせいで帰りが遅くなっちゃったんだけど。
遅くなったからか、硝子から歌姫の携帯に連絡が入り、今に至る。
会話を聞いてると今日は来月にある、文化祭の打ち合わせを冥さん含めて女子でするらしかった。