ごちそうさま。学校、屋上で。
咲希ちゃん愛莉ちゃんのエリア会話ネタ。たくさん食べるツ可愛いねっていう話
付き合ってない類→(←)司 雰囲気小説。
後半(続き)もしかしたら年齢操作あるかもしれない
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四限目の授業終了を知らせるチャイムが鳴って、ふっと意識を作業から戻すとちょうど授業が終わったようだ。教室がガヤガヤと賑やかになる。昼休みだ。
作業で凝り固まった体をぐっと伸ばす。いろいろな演出案を出すことができて有意義な時間になった。(先生は最初、毎度毎度授業態度の悪い僕のことを気にして何か言っていたけれど、いつも通り途中で諦めたらしい。)司くんのことを考えると彼で試したい演出がぽんぽん思い浮かんで、毎日が楽しくて楽しくて仕方がない。
そろそろ彼が来る頃かな、なんて思いながら演出案を書いた紙をまとめていると、よく通る元気に満ち溢れた声が教室に響き渡る。
「類!!!神代類はいるか!!!いつもの場所でランチタイムにしようじゃないか!!!」
鼓膜を震わせる彼の大きな声に、クラスメイトの中にはびくりと肩を跳ねさせた人もいたが、ほとんどの人は慣れたように「また天馬か〜」「今日も元気だなぁ」と苦笑している。
教室の出入口の方へ視線を向けると、キラキラ輝く笑顔を振りまきながら、ぶんぶんとこちらに手を振る司くんが視界に映る。それを見て自然と僕の口元はゆるりと笑みを浮かべた。
「司くん!うん、今行くよ。」
そう返事をして、今日も僕はウキウキとしながら席を立って彼の元へ向かうのだった。
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いつもの屋上。ハンカチを地面に敷いて隣に座る司くんは、行儀よく綺麗な食べ方で彼の好物である生姜焼きを口に運んでいる。彼の母親が毎朝作ってくれているそのお弁当は、生姜焼きのほかにも卵焼きやプチトマト、金平ごぼうなどいつも様々な色で彩られていて愛情が詰まっているのを感じる。まあ、僕にとって野菜は食べ物として容認しがたい存在なのだが。
購買で勝ち取った(今日は野菜サンドイッチを買っても交換できなさそうだったので久々に頑張った。)菓子パンを食べながら司くんを観察してみる。もぐもぐもぐ、と琥珀色の瞳を幸せの色に輝かせながら生姜焼きを頬張るその姿は、餌を口に一生懸命詰める小動物を彷彿とさせるような可愛らしさがある。早過ぎず、かつ遅すぎないペースで箸を運び、しっかり咀嚼して、味わい、飲み込む。幼稚園や小学校で「よく噛んでご飯を食べましょう」なんてことをよく言われていたなぁ、とふと思い出した。
そんなことを取り留めもなくぼんやりと考えながら、もぐもぐと口を動かす彼を無意識にじっと見つめ続けてしまっていたようで、彼は困ったように眉を下げて 口の中に入っていたものをごくりと飲み込んでから口をひらく。
「…どうした類?そんなにじっと見つめられていると食べにくいのだが…」
「ああ!ごめんね。なんでもないよ、気にしないでくれたまえ。」
「そうか?」
不思議そうに少し首をかしげてから、またもぐもぐと口を動かすのを再開した彼の様子を、今度は食事の邪魔をしないようにちらりと盗み見る。
好物の生姜焼きを食べてじわりと喜色が滲む彼の表情をみていると、僕の胸も日に照らされたようにほんわりぽかぽかと暖かくなる。
そしてこれは一緒に食事をとるようになってから気づいたことだが、思いのほかよく食べる司くんは一口が大きめだ。あ、とぱかりと大きく口を開いて白米を口に運ぶ様子をみていると、なんだか胸のどこかがざわざわしてさっと目を逸らした。
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「フッフッフ、未来のスターであるオレのために母さんが作った手間暇かけて弁当なのだから美味しそうに見えて当然だな!──そんなに欲しいなら、一口分けてやろう。……ほら」
そう言って手を添えながら箸で掴み、僕の口元へ生姜焼きを持っていく。所謂あーんの姿勢だ。
ドキリと音をたてて暴れ出す僕の心臓を押さえつけながら、平静を装ってありがたくその生姜焼きを司くんの手ずから頂く。
「…うん、すごく美味しいね。ご馳走様でした。」
「そうだろうそうだろう!」
少し照れた様子で耳を赤くしながら、満足気に笑う。